クライブ・ハミルトン著 『サイレント・インベージョン』 日本語版発売記念



クライブ・ハミルトン著
『サイレント・インベージョン』
日本語版発売記念
同著日本語版を15名様にプレゼント!

―日本語版発売の5月29日から驚異の12日で5刷(45,000部)達成ー



中国によるオーストラリアの政治、教育を含むあらゆる分野への組織的な内政干渉工作とプロパガンダ活動を実名告発し、オーストラリアへの浸透を実名オーストラリアの対中姿勢を劇的に変えたと言われる、クライブ・ハミルトン氏の著書『サイレント・インベージョン』(英語のオリジナル版)はオーストラリアばかりでなくアメリカを含め世界的なベストセラーになりました。
このサイレント・インベージョンの日本語版『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)が
5 月29日にいよいよ日本で発売となりました。発売当日から増刷が決定、6 月 9 日現在で 5 刷(45,000 部)とこの分野では驚異的なヒットとなっています。2 段組 で本文380 ページ超えの読み応えのある内容です。

これを記念して、翻訳プロジェクトに初期段階から関わったAJCN(在豪日本人保護者主体のグループ)より、アンケートに答えていただいたNSW州にお住まいの方から抽選で15名様にクライブ・ハミルトン著書『サイレント・インベージョン』の日本語版『目に見えぬ侵略』をプレゼントいたします。

応募方法

以下のQRコードまたはショートURLから、受付ページへアクセスしてご応募ください。
締め切り:2020年7月31日(金)

https://rebrand.ly/SilentInvasion_AJCN




ついに発刊!ベストセラーSilent Invasionの日本語版 「目に見えぬ侵略―中国のオーストラリア支配計画」

Cheers 2020年7月号記事

AJCN代表兼事務局長 江川純世


近年のオーストラリアの対中姿勢を劇的に変えたオーストラリアの現代ジャーナリズム史上最もセンセーショナルで影響力のある本として有名なあの「サイレント・インベージョン」の邦訳版となる「目に見えぬ侵略」が5月末いよいよ日本で発売となった。
C:\Users\Owner\Documents\慰安婦像問題\2020慰安婦像問題\Silent Invasion 邦訳版\Silent Invasion 邦訳版 写真.jpeg

発売当日から増刷が決定、6月9日現在で5刷(45,000部)とこの分野では驚異的なヒットとなっている。日本語版は2段組の本文380ページ超えの分厚い装丁となっているが、6月9日キンドル版も発売されているので、分厚い本(といっても軽いが)を持ち運びたくない、電子図書に慣れている方はこちらを購入されるといいだろう。キンドル版には、写真がカラー、引用文献のURLリンクが加えられているので1クリックで文献にアクセスができる特典がついている。
原著のSilent InvasionについてはAJCNがCheers2018年11月号で紹介しているので参照されたい。
https://issuu.com/cheers.com.au/docs/cheers_10_2018/8
 
NHKも同じようなタイトルのドキュメンタリーを作ったほど、世界的に有名になったこの本の邦訳版、現地オーストラリアに住む日本人、日系人の方々に読んでいただきたい。


1. 原著Silent Invasionと日本語版刊行の意義


原著は2017年11月に発刊される予定であった。中国共産党の報復を恐れた出版社は刊行を断念したが、ハーディー・グラント社より2018年2月末にやっと発刊された。オーストラリアで発売されてからオーストラリアばかりでなく、アメリカでも大ベストセラーとなり、これによってオーストラリア政治の対中政策の姿勢に変化を与えた。著者のハミルトン教授自身も世界中で講演を頼まれるようになり、オーストラリアはもちろんであるが、アメリカでも連邦議会の委員会で証言などを行っている。
https://youtu.be/fIb0laof-x8
AJCNはこの本の邦訳版の早期刊行を翻訳プロジェクトの奧山真司氏(翻訳者)とオンザボード社の和田憲治氏(プロデューサー)にプッシュしてきた。それはこの本が中国の間接侵略の手口を余すところなく、具体例で解説していて、警鐘を鳴らす意味でオーストラリアよりも早い時期から侵略されているはずの日本に住む方々に読んでもらいたいと思ったからである。結果的に翻訳に2年かかり、AJCNの運動論的には原著とのセットでのプロモ―ションという観点からは時期を失した感もあるが、米中激突、武漢ウイルス禍により世界の中国を見る目が厳しくなっているこのタイミングに、この邦訳本が発刊されたことは、中国に対する日本人の認識をさらに深める良いチャンスとも言える。
ASIO (Australian Security Intelligence Organization、米国のFBI相当)のエージェントによればSilent InvasionはASIOともう一つの情報機関ASIS(Australian Secret Intelligence Service、米国CIA相当)のエージェントにとって必読書になっているそうで、日本の政府関係者、政治家、公安のエージェントすべてにもこの邦訳本を読んでもらいたいと思う。


2. AJCNと本邦訳本との関わり

2017年よりAJCNは奥山氏と原著について情報交換を行っていた。
2018年2月Silent Invasion発刊後すぐにシドニーで私が購入し、前書きと目次を奥山氏に送り、奥山氏と和田氏はこの本の重要性を確認した後、オンザボード社の動画「アメリカ通信」でこの本の解説、PRを開始した。(動画21本)
https://www.youtube.com/playlist?list=PLiOVjCMLiDzm0fhAeolt5lAxuGEFuz0-p&fbclid=IwAR0DMLuHOXj54j-2VgRvOiBqPNMFCTUZBHwoVRleMQquenoOSDskoPzHUoc

同時に和田氏が飛鳥新社と交渉し日本語版を刊行することの了解を取り、奥山氏翻訳でプロジェクトがスタートした。次のハミルトン氏の著作(Silent Invasionの国際版、日本を含む)の翻訳も奥山氏が担当(監訳)することが決まっている。

奧山氏を含めた和田氏とYoutuberのKazuya氏のチームのオーストラリアでの受け入れはAJCNが行っているが、2018年10月に奥山氏達はキャンベラでハミルトン氏に会って翻訳プロジェクトについて確認、インタビューを行った。帰路AJCNメンバーとの情報交換会で、その結果の報告を受けている。私個人も2018年AJCN責任者としてハミルトン氏に会って翻訳プロジェクトの進行について会話を交わしている。

奧山氏の最新ブログ(https://geopoli.exblog.jp/30086519/)からオーストラリアの外交官が実際に体験した興味深いエピソードを本の中から紹介する。(日本語版219ページの部分から引用)

トニー・アボットは、2014年に首相として中国を初訪問した際に、首相補佐官のペタ・クレドリンを連れていった。
彼ら一行は中国で「最も盗聴されている」と評判の、世界の高官たちが集まるボアオ・フォーラム に参加した。
オーストラリアの政府高官やジャーナリストたちは、中国入りする前に、豪政府の防諜機関である「オーストラリア保安情報機構」(ASIO:エイジオ)からセキュリティーに関するブリーフィングを受けている。
そこで提案されたのは、いつもとは別の携帯電話を持っていくことや、ホテルの部屋に備え付けの充電器で携帯電話の充電をしないこと、土産の中に入っているUSBメモリーは捨てること、セイフティーボックスの中も含めて部屋にラップトップのコンピューターを置いていかないこと、などだ。
補佐官のクレドリンは、最初に自分の部屋に入ったときに、まず中を注意深く見てみた。彼女は試しに、まず時計ラジオとテレビの電源プラグを抜いた
するとその後すぐに「ルームサービスです」といってドアがノックされ、ホテルの従業員が部屋に入ってきて時計ラジオとテレビの電源プラグを入れ直してから出ていった
クレドリンがまたそれを抜くと、再びルームサービスがやってきてドアをノックした。再び電源を入れ直して出ていったので、彼女はその代わりに時計ラジオを外の廊下にある電源プラグにつないだ。それからテレビセットはタオルで覆った。

ところがフォーラムでは、首相が後にメディアに対して、オーストラリアは中国の「本物の友人だ」と答えている。


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AJCNでは日本語版発刊を記念してハミルトン博士のサイン会とこの日本語版のプレゼントを企画中です。後日広報します。





国連へ意見書「韓国の詐欺的な 市民団体によって提起された慰安婦問題」


なでしこアクションのサイトから山本代表の許可をもらって転載しました。英語版も英語のブログに掲載しています。

AJCN代表兼事務局長 江川純世

http://nadesiko-action.org/wp-content/uploads/2018/06/DSC02807-300x199.jpg

新しい歴史教科書をつくる会国際歴史論戦研究所が国連人権理事会(44会期/2020年6-7月)に共同意見書「韓国の詐欺的な 市民団体(NGO)によって提起された慰安婦問題」(原題「A Deceitful Korean Citizens’ Group (NGO) and the Comfort Women Issue」)を5月27日付けで提出しました。
その意見書の全文をご紹介します。

国連 人権理事会 44 会期 (2020 年6月-7月)
議題4  理事会の注意を要する人権状況
経済社会理事会(ECOSOC)協議資格 NGO 新しい歴史教科書をつくる会
共同提出NGO 国際歴史論戦研究所

2020 年 5 月 27 日 

韓国の詐欺的な市民団体(NGO)によって提起された慰安婦問題

国連人権委員会において慰安婦問題を提起し、「女性を強制連行して『性奴隷』にした」と日本を非難してきた 韓国の挺身隊問題対策協議会(略称は挺対協。現在の名称、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯、略 称は正義連)が金儲けのための詐欺団体であったことが明らかになった。挺対協は 2014 年から国連経済社会理 事会(ECOSOC)協議資格 NGO である。

このことを告発したのは、同団体の幹部として長年活動してきた元慰安婦と自称する李容洙(イ・ヨンス)氏 である。

彼女は 2007 年米国下院で慰安婦問題の対日謝罪要求決議審議の席上で米議員の前で泣き叫びながら証言を行い、2017 年 11 月にトランプ大統領の韓国訪問時に行われた晩餐会において、元慰安婦としてトランプ大 統領にハグを求めたことで世界的に有名な人物である。 李容洙氏は、2020 年 5 月 7 日、韓国の大邱市で行われた記者会見で、次の事実を告白した。

  1. 同団体が集めた寄付金が元慰安婦の為に使われたことがない。ほとんどは私的目的に使用されており、その責任は今年の 3 月まで同団体の代表を務めてきた尹美香(ユン・ミヒャン)氏にある。 
  2. 自分の慰安婦時代の経験についての証言は、同団体から言われたとおりに証言したものである。
  3. 自分は「性奴隷」ではない。尹美香氏に対して、「私はなぜ性奴隷なのか、その言葉はやめなさい」と要求したが、尹美香氏は「こう表現してこそ米国が怖がる」と言って敢えて「性奴隷」という言葉を国連で使った。

以上の三点から、同団体の尹美香前代表が、李容洙氏など元慰安婦を名乗る人々に嘘の証言をさせ、慰安婦を「性奴隷」と偽り、国連を利用して慰安婦問題を女性の人権問題として世界的に拡大し、多額の寄付金を国内外から集めて私的に利用していたことが明らかである。

現在、尹美香前代表は寄付金の私的利用疑惑や不透明な会計をめぐり、李容洙氏のみならず、複数の市民団体からも告発されており、検察による捜査が開始された。具体的には、2020 年 5 月 20 日と 21 日の両日、検察による正義連に対する家宅捜査が行われた。


詐欺的な団体に騙された国連人権理事会

慰安婦とは戦場近くで合法的に売春行為を行った人々であり、それはビルマで米軍の捕虜になった慰安婦及びその雇人に対する尋問結果をまとめた1944年10月1日付米国戦時情報局(US Office of War Information, OWI) の「心理戦報告書第 49 号」(米軍の公的資料)に「慰安婦とは、日本陸軍に随行した売春婦あるいは軍隊随伴業者に他ならない。“a comfort girl is nothing more than a prostitute or professional camp follower”」と記されていることからも明らかである。

挺対協は「日本の官憲が慰安婦にするために20 万人の韓国女性を強制連行し、『性奴隷』として虐待した」と主張してきた。だがそれは事実ではない。慰安婦の多くは経済的理由からやむを得ずそのような仕事に就いたのである。そのような中で1930 年代から第二次大戦中にかけて、多くの女性が朝鮮人の犯罪組織によって誘拐されあるいは騙されて満州や中国に売られた事件が多発した。「強制連行された」と主張する元慰安婦のほぼすべてがこのような犯罪組織の被害者であり、日本の官憲が救出に向かっていたのが当時の実態である。そのことは当時朝鮮で発行されていた東亜日報などの新聞記事に数多く報道されている。

挺対協はその事実を180 度捻じ曲げ「日本の官憲が強制連行した」と国連で訴えて世界の同情を買い、善意の人々から厖大な寄付金を集め、それを私物化してきた。

 人権条約体委員会の中では、自由権規約委員会(CCPR),社会権規約委員会(CESCR)、人種差別撤廃委員会 (CERD),女子差別撤廃員会(CEDAW)、拷問禁止委員会(CAT)、強制失踪委員会(CED)の 6 つの委員会が同 団体からの意見書を踏まえて、「性奴隷に関する犯罪に対する法的な責任を公的に認め、犯罪者を訴追し処罰せよ」と日本政府に勧告している。


我々は次のことを人権理事会に要望する

  • 韓国政府は、正義連(旧・挺対協)によって傷つけられた韓国と日本の名誉を回復するために、その責任において慰安婦問題を再調査し、その実態を明らかすべきである。
    国連人権理事会は、韓国政府にそのように勧告してもらいたい。
  • 本文に挙げた 6つの人権条約体委員会は、虚偽に満ちた正義連の言うことを鵜呑みにして、慰安婦問題に関して、日本政府に対する見当違いの勧告を出し続けてきた。各人権条約体委員会は、被害者の証言を鵜呑みにすることなく、事実をしっかり調査した上で、報告書を作成するよう強く要望する。事実をベースとした科学的 な調査が何よりも大切である。





ポスト・コロナ時代に向けて走り出した世界


Cheers 2020年6月号記事

                       
                        AJCN事務局長兼代表 江川純世


今月号では、新型コロナウイルス禍が収まった後のポスト・コロナ時代に向けて準備を始めた中国と米国の動きを中心に、それがどんな世界になるかについて考察してみる。


1. 民主主義国から批判される中国共産党(CCP)の情報隠蔽、感染拡散放置
2019年12月にSARSに似た新型肺炎が武漢で発生し、12月末に医者グループのSNSサイトで李文亮氏がこれを発信したが、武漢市公安当局はこのホイッスルブロワー、李氏を処罰した。李氏がこの病気で死亡したことはよく知られ、中国国民の怒りを買った。12月31日、台湾は、独自の調査により、SARSを疑わせる症状があることや患者が隔離治療を受けていることを明記したメールをWHOに送ったが無視された。WHOは現在中国の影響下にあり、中国の指示で動いていることに対し特に米国から強い非難を浴びている。(米国はWHO への拠出金の停止を決定し、インターネット署名サイト「Change Org.」によるWHOテドロス事務局長の辞任要求は5月1日で署名102万人を超えた)
中国の隠蔽の証拠は今アメリカによってまとめられている最中だが、1月3日時点で国家衛生健康員会が「新感染症に関する情報管理の強化」と「サンプル類の破棄」を指示した文書を発行している。CCPの理論誌「求是」のウェブサイトは1月15日、1月3日に行われた党最高指導部の会議で、習近平総書記が「1月7日に対応を要求した」と発言したと報道、その時点で中国政府が情報を得ていたことを認めた。中央政府専門家チームのトップ医師、鍾南山氏は1月19日、武漢の感染症専門病院や海鮮市場を視察し、「人から人への感染」を確認した。その報告を受け1月20日習近総書記は「感染蔓延の阻止」と「迅速な情報開示」を命じる「重要指示」を出した。情報は約2週間隠蔽されたことになる。1月23日に武漢の封鎖開始、その前に500万人の武漢市民が脱出し、中国国内外に散った。中国は春節25日の前後の休暇(1月10日~2月18日までの40日間)の約30億人の移動を黙認、多くの武漢人が日本、欧州、米国他に移動し、感染をスタートさせた。この出国放置は「未必の故意」といえる。鐘南山医師の調査チーム自身が2月28日付で、中国当局が新型ウイルスへの対策を5日早く始めていれば、感染者は3分の1に抑えられていたという論文を発表しているのだ。


2. 中国は大国の自閉症:マスク外交と金のバラマキによる懐柔策と経済報復の脅し
周辺国のリアクションに鈍感な中国の言動は「大国の自閉症」と言われている。(戦略家エドワード・ルトワック氏)前月号で豪州でのすさまじいマスクや医療品の買占めについて書いたが、世界各国で現在まで中国が買い集めたマスクは22億枚と言われている。この買占めによって各国のマスク不足が顕著になり、中国に対する反感が増した。1月中旬から中国は感染が他国に及ぶと考え買い占めを指示、自国での感染が収束すると今度は感染に苦しむ他国にマスク外交を仕掛け、「対価」と「感謝」を要求している。しかし提供されたマスクや人工呼吸器、検査キットの多くが不良品であることが発覚、各国の不信は更に大きくなった。豪ピーター・ダットン内務大臣が米国や欧州諸国と同様、新型コロナウイルスの起源について中国に透明性を要求し、独立的調査を呼びかけたが、中国の反応は、これはアメリカのプロパガンダ戦争の主張のオウム返しであり、無知と偏見の露呈という非難であった。
https://www.abc.net.au/news/2020-04-22/coronavirus-china-peter-dutton-covid-19-ransparency/12171050

A Chinese embassy spokesperson said Peter Dutton must have been told to work "with the US in its propaganda war".(ABC News: Jed Cooper)

中国 成競業大使は4月23日に豪経済誌オーストラリアン・フィナンシャル・レビューのインタビューに対し、感染拡大に関する調査を要求することは豪州産ワインや同国への旅行のボイコットにつながりかねない、留学生の親たちも友好国でないどころか敵対国ですらあるとわかった所へ子供たちを送って良いか自問する可能性もあると脅した。そして極めつけはCCPの海外向け広報メディア環球時報が豪州を"Chewing gum stuck on the sole of China's shoes".(靴底についたチュウインガム)と評し、"Sometimes you have to find a stone to rub it off," (時々石でそぎ落とさないといけない)と書き、豪州人をカンカンに怒らせた。
https://www.abc.net.au/news/2020-04-30/coronavirus-china-diplomatic-backlash/12198674


2. ポスト・コロナ時代の覇権確立に動く中国の火事場泥棒的軍事活動
中国は各国がコロナウイルス禍で苦しむ中、着々と手を打っている。

1) 中国、南シナ海に新行政区を設置
中国政府は4月19日までに、各国が領有権を主張する南シナ海に新たな行政区を設置すると発表した。南シナ海の実効支配を強める中国にベトナムが反発しており、緊張が高まっている。今後は三沙市に、「西沙区」と「南沙区」を新設し行政組織も設ける。南シナ海をめぐっては4月に入り、中国の海警局の船がベトナム漁船に体当たりして沈没させ、米国は「深刻な懸念」を表明している。


2) 中国空⺟「遼寧」など6隻が沖縄・宮古島間通過、台湾付近で軍事演習
4月10日、中国海軍の空母「遼寧」と機動艦隊計6隻が沖縄本島と宮古島間を南下、太平洋へ向けて通過した。

3) 南シナ海をめぐる米国と豪州の反応
米国は中国海軍の動きに反応し、台湾にロナルド・レーガンを中心とする空母機動艦隊とB1爆撃機、空中給油機を派遣した。(5月20日の蔡英文大統領就任式対策)
米国は2018年3月、米空母カール・ビンソンをベトナム(ダナン港)に歴史的寄港をさせた後も空母セオドア―・ルーズベルトをベトナムに派遣している。豪州は海軍のフリゲート艦HMASパラマッタを南シナ海に送り4月22日米軍と合同演習を行った。HMASパラマッタは、この地域の安定と安全の強化目的で、過去2か月間、南アジアおよび東南アジア全域で活動している。
演習中のHMAS パラマッタと米空母(Twitter: Department Of Defence)


3. 中国の覇権拡大の動きに対抗する米国の報復策
武漢ウイルス抑え込みに苦しむ自由主義国を尻目に、中国は発展途上国に対し「債務の罠」を仕掛け、これらの国々を支配する力を強化している。ポスト・コロナ時代における中国の挑戦を察知している米国は中国への報復計画を練っている。4月28日AFPはトランプ大統領が中国に損害賠償請求の可能性を示唆したと報道、4月29日、フランス国際放送局は香港経済日報の報道を引用し、すでに米、英、伊、独、エジプト、インド、ナイジェリア、豪州8か国の政府,民間機関が訴訟を起こしているとした。賠償訴訟の請求金額にミズーリ州の請求額を加えると1京1,000兆円(100兆ドル)を上回る。トランプ大統領の指示で、米政府当局者が報復行動プラン作りに入ったと5月1日ワシントン・ポストが報じた。具体的には中国政府を裁判にかけられるよう国家主権免除を剥奪したり、中国からの輸入品に1兆ドルの関税をかける等である。
ポスト・コロナ時代はアメリカを中心とする自由主義国と中国とそれに同調する少数の独裁主義国のDecoupling: 非干渉化が進むであろう。サプライチェーンを見直し、安全保障上問題となるコアーソースの調達網から中国が排除される。米国ではスタンフォード大学やMITのような有名校が中国人留学生の受け入れを停止し始めた。CCPの先兵として海外で動く留学生や、先端技術を盗んで母国に持ち帰る研究者の動きを阻止する動きは強まるであろう。これと並行し自国企業の中国への投資と中国企業の自国重要企業への投資の制限も進む。世界はブロック化に向けて走り始めた。豪州が中国依存の体質をどう変えていくのか注視したい。




“黒”を“白”と言い、“放火犯”が“消防士”を気取る中国政府のプロパガンダ


Cheers2020年5月号記事

                         AJCN事務局長兼代表 江川純世


昨年11月に武漢で発生した新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら、世界5大陸に蔓延している。まず中国が、新型コロナウイルスの起源問題を米国との情報戦で使える「弾」として使い始め、諸外国を巻き込んだ米中間の非難合戦が激化している。余波はCHQと揶揄されているWHOにも及び(現在米国は中国寄りを理由にWHOへの拠出金停止を検討中)、豪州も巻き込まれている。この情報戦のあらましと豪州での中国共産党指導による企業ぐるみの医療品買い占めと慈善活動を装った“マスク外交”について解説する。


1. 誰も信用していない中国のデータ
一党支配の元、隠蔽、データ操作が常識の中国政府から出された新型コロナウイルスに
関するデータは明らかに過少と見られている。それゆえ中国を含めたデータの相対比較は意味がない。専門家によれば中国の死者数は報告されたデータの3倍~5倍、感染者数は10倍と見積もられている。

1) 無症状の感染者数、統計への不算入
李克強首相は3月30日、無症状の者は感染者の統計に加えていなかったと述べた。

2) 武漢での死者数の隠蔽
武漢市は3月31日、新型コロナウイルス感染による死者が累計で2,548人になったと発表した。この数字は、実際の遺骨の多さに比べて極端に少なく、市民は「全く信用していない」。米政府系放送局ラジオ、フリー・アジアによると、感染拡大ピーク時の1カ月間に2万8,000人の遺体が武漢で火葬されたという。


2. 中国は1月中旬から情報戦を準備
中国共産党は、ポスト新型ウイルスを意識して中国批判をかわすためプロパガンダ戦展開が必要と判断、新型コロナウイルスを何週間も放置し蔓延させた国(放火犯)としてではなく、ウイルスに勝利し他の国々を救おうと善行努力している国(消防士)として自身を描こうと新しい“物語”を紡ぎ始めている。中国政府は、偽情報/数字の操作、陰謀説、WHOに対する影響力行使、さらにコロナウイルスに対する中国の勝利の英雄的な物語を伝える本さえ刊行し歴史の再構成に努めている。その成功物語の一つは治療装備を備えた病院というよりも雨漏りのするプレハブ検疫収容所という事実を隠しながら、わずか10日間で2千床の「コロナウイルス病院」を建設したことである。建設の過程を世界中のウエブやメディアに流し、その驚異的建設速度と規模を強く印象付け、ウイルス抑え込みに成功し4月初めに閉鎖したと発表した。


3. 米国の中国のプロパガンダに対する怒りと非難
米国側では習近平政権が武漢での集団感染が明白になった後もその事実を隠蔽したことが世界中への蔓延を早めたという認識で一致している。その前提で「武漢ウイルス」との呼称が定着している。中国当局は3月4日「ウイルスの発生源がどこであるかについてまだ結論は出ていない」と反発、3月5日にも「このウイルスの発生起源についてはなお調査が進行中である。このウイルスを中国ウイルスとか武漢ウイルスと呼ぶことは証拠もなしに中国に発生の責任を負わせようとする不当な動機に基づいている」と言明した。3月6日ポンペオ国務長官はワシントンでのテレビ・インタビューで、中国側がウイルス感染症の起源をあいまいにし始めたことに対するトランプ政権の公式の反論として「これはまさに武漢コロナウイルス」と述べた。

3月13日中国外務省の趙立堅副報道局長は、ウイルスの発生源が米軍の研究施設だと推測する記事をツイッターで紹介し、拡散を呼び掛けた。趙氏は12日夜には「武漢市にウイルスを持ち込んだのは米軍かもしれない」と主張した。中国外務省の耿爽副報道局長は13日の記者会見で、「ウイルスの発生源は科学的な問題だ」とのみ述べ火消しに努めたが、一連の発言はさらに米国の怒りに油をかけたことになる。


3月25日、ポンペオ長官はG7のテレビ会議後の記者会見で、中国の「意図的な偽情報工作」について議論したことを明らかにし、新型コロナの流行に関して引き続き正確な情報が必要と訴えた。
4月1日、トランプ大統領は中国が発表している統計数字は「やや少ない」ようだとの見解を示した。米ブルームバーグは米情報局が機密報告書で中国の感染者数と死者数を過少報告されていると結論付けたと報じた。
一方共和党議員が外国の公務員が偽情報を流した場合、個々人のビザの取り消し、資産の凍結などの制裁を科すなどの法案を準備中である。そのほか米国の個人、グループが中国政府を相手取り、情報隠蔽のために損害を受けたと賠償を請求する裁判がスタートしている。米国は中国から受けた甚大な被害を回収しようとする動きを示しているので、中国共産党内部では「米国に融和的な対応すべきとする派」と、「一連のプロパガンダ戦を維持・強化すべきという派」の対立も生まれるかもしれない。中国はいかなるプロパガンダを講じようとも「事実」に勝利することはできないであろう。


4. 豪州での中国共産党指導による医療品買い占めと慈善的協力
中国の報道機関によれば、中国は韓国、イラン、フィリピン、スペイン等の国に数百万のマスクを寄付、イタリアにも人工呼吸器と200万枚のマスクを提供した。最近フランスに10億枚のマスクを出荷すると発表したが、Huaweiから5G機器を購入した場合に限るとの条件付きで話題になっている。習国家主席は「中国の物語を伝え、中国の声を広めよ」と繰り返し指示しており、“マスク外交”はこのプロパガンダ戦の基幹戦略となっている。
一方1月24日から2月末にかけて中国系企業が世界的に(ヨーロッパ、豪州、ブラジル等で)医療品を独占する活動をしていたことが明らかになっている。この間中国はマスク20億枚、防護服2,500万着、約12億ドルを輸入した。ここ豪州でも複数の中国系企業が社員を総動員して医療品やその材料を大量購入し、中国に送っていたとシドニー・モーニング・ヘラルドが報じた。一社は中国不動産大手のグリーンランド・ホールディングス(緑地集団)で豪州やその他の国で外科用マスク300万枚、防護服70万着、手袋50万セット、消毒液とウェットティッシュを大量購入していた。グリーンランド・グループは1992年に上海で設立され、董事長の張玉良は共産党員である。

GOGOTSU 2020年4月2日 武漢に送られた医療品

ジ・エイジ紙は3月31日、1月初めに鄺遠平(こう・えんぺい)という人民解放軍の元軍人と組織犯罪に関与している民間組織が豪州で医療物資を買いあさり中国に送ったと報じた。鄺はHuaren グループを経営、さらに複数の豪州民間団体のリーダーである。これらは中国共産党からの支援を受けており、一部は統一戦線部と直接的なつながりを持っている。鄺が豪州で調達した医療用物資は医療用防護服3万5000着、手袋20万セット、消毒液10トンと報じられている。

鄺遠平と大量の医療品 SMH  March 31, 2020

中国共産党がサポートするこれらの組織が豪州で医療物資を大量に調達したことが、豪州の現在の医療物資不足を引き起こした可能性がある。多くの中国資本の企業や海外組織は豪州だけでなく欧米の各国で爆買いを行っている。グリーンランドは日本でも合弁会社を持っており、ここが日本での医療品買い占めに関わったと考えられる。買い占めをした後、今度はソフトパワーによって豪州に医療品を提供する「慈善活動」によって豪州への政治的影響力を強めようとしていると豪州の関係者は警鐘を鳴らしている。




ダイヤモンド・プリンセスの船中は戦場であった


Cheers 2020年4月号記事

― 今の戦いの経験が将来の人類の敵、新しいウイルスとの戦いの武器となるー


世界は中国武漢から発生した新型ウイルスとの戦いの真最中である。「正体不明」が人を種々のパニックに走らせているが、蓄積されている医療関係者の知見、様々な治療薬の効果確認、疫学データ(感染者と感染経路の確認)により、ウイルスの塩基配列、亜種の確認、感染力、死亡率などが明らかになりつつある。
各国の対策の効果は、後日分析され、評価の対象になるであろう。今月号では、閉鎖空間のクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号(以下「クルーズ船」)における日本とウイルスとの戦いを、戦争になぞらえてみる。米国のメディアに「感染の温床」と批判された日本の検疫保留措置は、見えない敵との圧倒的に不利な環境下での局地戦争そのものであった。もともと難易度の高い船舶内ウイルス感染と戦ったのは、船舶知識に乏しい感染症専門家達と「素人集団」厚労省の官僚であった。そして今、サンフランシスコ沖に留まっているクルーズ船、グランド・プリンセス号でのアメリカ政府/CDC(アメリカ疾病管理予防センター)とウイルスの第2ラウンドのゴングが鳴らされた。「クルーズ船」内での戦いの前例もあり、安全保障意識も高い専門家集団であるCDCの戦いに注目したい。

https://www.nhk.or.jp/politics/wp-content/uploads/2020/03/0304bus.jpg
写真:NHK

まず非常時の危機管理、緊急対策を成功させるには強い危機感が必要となるが、日本政府の新型ウイルスに対する危機感は当初驚くほど低かった。それこそ「ギャンブル」と言われるほど「そんなに広がらない」と楽観的に構えていた節がある。今回のクルーズ船対策を戦争に見立てると、この局地戦は下記のように概括できる。


1. 戦争開始の判断 
国際法の「旗国主義」によれば公海上の船舶は所属国(今回のケースではイギリス)が取締まるという考え方がある。「クルーズ船」には3,711人の乗客、乗員が乗っており、その約半数が日本人ということもあり、日本政府が人道的に引き受けたと理解されている。まずこの引き受け判断についての議論がある。日本政府は、2月1日に香港を出港し感染者が乗船している疑いがあったウエステルダム号(日本人5人を含む)の寄港を拒否している。
開戦を覚悟するには勝つための戦略と戦術/オペレーションの実施計画と作業手順の共有が必要である。また検疫のための専門家と検疫機材の確保、ロジクティックスの準備(下船者の移動手段、隔離施設、治療機関など)を並行して行わなければならない。これらの準備なしに戦争に突入するのは場当たり的ギャンブルであり、日本へのウイルス上陸阻止を最優先で考えるなら、イギリスに任せるのも一法であった。受け入れるなら関係各国、機関と談合して、乗船者引き取り含め日本の方針に従うよう段取りを決めておくべきであった。


2. リーダーシップ
戦いの遂行には縦の指揮命令系統を明確にし、関連する組織、機関との横の連携を統制することが必要となる。戦争の現場は錯誤と情報の混乱の連続である。そのため現状認識に影響する情報の訂正と作戦の変更・改善は頻繁に行われるため、その命令は適宜単純明快に伝達されねばならない。「クルーズ船」の事案の統括責任者は誰であったのか?記者会見を行ったのは主に厚労省の加藤大臣であったが、一貫した方針の広報がなされた記憶はない。


3. 戦争目的
本来の目的は(1)国内へウイルスを入れない、(2)船内での感染者を増やさない、死者ゼロ(3)乗客の安全かつ早期の帰宅・帰国を支援するという三つであったはずであるが、これらを完璧に実現するゼロ・リスクの方策は存在しない。日本政府は2月20日、80代の日本人男女2名の死亡報告を受け、アウトブレークによる患者の一極集中の恐ろしさを知り衝撃を受けた。当初の目的はウイルスの日本上陸阻止と乗船者の死亡ゼロであったが、感染拡大を知り、海外からの人道的配慮要請の声が高まるにつれ、船内の感染拡大防止、感染者救助に目的を転換した。


4. 戦略
当初隔離政策が基本であったが、転換後検疫で介入、感染重症者下船、最終的には全員下船させた。(3月1日下船完了)


5. オペレーション、検疫の状況

橋本岳厚生労働副大臣が投稿したクルーズ船内部の写真。左側に黒字で「清潔ルート」、右側に赤字で「不潔ルート」と表示。あちこちに隙間があり、隔離は不完全のように見える。手前(写真撮影者位置)が清潔/不潔のクロス・ゾーンになっている。

「クルーズ船」は、1月20日、横浜港を出発し、2月3日に横浜港に帰港した。この航行中1月25日に香港で下船した乗客が発熱し、2月1日に新型コロナウイルス陽性であることが確認された。そのため、日本政府は「クルーズ船」に対し、横浜港での乗員乗客の下船を許可しなかった。2月3日から2日間、検疫官が全乗員乗客の健康診断を行い、症状のある人およびその濃厚接触者の検査の結果、2月5日に陽性者が確認されたことから、同日から14日間の検疫が開始された。(19日まで)この時点でクルーズ船には、乗客2,666人、乗員1,045人、計3,711人が乗船していた。陽性者は下船し、国内の病院で治療、隔離された。陽性者の同室者は「濃厚接触者」として検査され、陽性であった場合は同様に下船し 病院に入院し、陰性であった場合は、陽性患者との最終接触日から14日間船内での隔離となった。2月18日の時点で、65名の乗員と466名の乗客を含む、531名が陽性確定数であった。データから2月5日に検疫が開始される前にウイルスの実質的な伝播が起こっていたことが分かっている。クルーズ船の船長は感染情報を知っているにも関わらずダンスパーティー他の船内イベントを中止せず、感染拡大を招いた。特記すべきは、クルーズ船の性質上、全ての乗員乗客を個別に隔離することが不可能であったことである。乗員はクルーズ船の機能やサービスを維持するため任務の継続が必要とされたが、濃厚接触している乗務員の役割を生物兵器対策部隊を持つ自衛隊員で肩代わりしたり、民間船を徴用し病院船として隔離施設に使う対策案もあったが具体化しなかった。


6. 戦闘教義
最後に自軍の得意技である戦闘教義について触れる。作戦遂行において自軍が慣れ、相対的に強いことが証明されている必殺技が使われる。今回の戦いにおいて日本の強みとは何であろうか。それは

1) 日本人の政府が決めた方針を受け入れ、実行する精神風土。
2) 手洗いなどを励行する衛生観念と充実した医療体制。

医療体制についてはPCR 検査体制の拡充と簡易検査キットの配備等課題もあるが、批判に応え改善していくことは間違いない。高い市民の民度が日本の風土と底力を形成している。それはジョン・ホプキンスのウイルス拡散状況を示すデータでも示されている。精確な相対比較は意味ないが、各国の感染者数、死者数、回復者数の推移からその国の状況が見て取れる。中国を筆頭に日本の確認感染数は9位502(死亡6)、オーストラリアは21位76(死亡4)となっている。(3月9日、データは時々刻々更新)
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
ウイルスとの戦いは続くが、死者数が戦いの結果を決定づける。1818~19年にかけて猛威を振るったスペイン風邪の犠牲者は日本で45万人/人口5,500万人、オーストラリアで1万5千人/人口500万人であった。この時の休校、イベント中止等の集団隔離策が効果大であったことがデータから実証されている。




世界を震撼させている新型コロナウイルスによる武漢肺炎、豪州の対応は?


Cheers 2020年3月号記事

AJCN 事務局長兼代表 江川純世


新型コロナウイルスによる武漢肺炎の発生・拡大を知り、まず思い出したのが1995年に見たダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレーク」であった。この映画で得たウイルス感染に関する基礎知識が、今回武漢肺炎拡大について調べるモティベーションとなった。私は過去中国大陸を仕事と個人旅行で20回数回訪問した。訪問地は今回の冠状肺炎の発生地である武漢も含まれる。その時得た知見も加え、中国大陸で急速に拡散を続けるこの感染症についてレポートする。


1. 武漢とは
中国全図を四つ折りにすると、真ん中に来るのが内陸の大都市、武漢である。揚子江が東西に横切り、下流には上海、上流には工業都市重慶がある。北方の北京と、南の広東省や香港を結ぶ中間点でもある。 武漢市には東京並みの1100万人が住む。最近は高速鉄道で全国各地と結ばれ、自動車製造などの工業の他、国策で世界最先端の光/半導体産業の中核都市にしようとする動きもあった。春節の休暇前には、4日間で1万7千人近い観光客らが武漢空港から日本に押し寄せた。ちなみに中国人の訪日観光客の数は1月2日から2月1日までで34万人であった。



2. 武漢肺炎発生・拡大の経緯、中国の地方と中央政府の隠蔽、初動の遅れが拡散に拍車
COVID-19と命名されたウイルスの正体はわかっていない。これが人々を恐怖させる最大の理由である。また人→人感染することは同じだが、インフルエンザと違い、無症状感染者にも感染力があることがわかっている。一旦陰性と判断されても後で陽性になる症例もある。潜伏期間は平均5日、14日までと見られており、感染形態は接触、飛沫、エアロゾル感染と言われ、致死率は約2%でインフルエンザの約10倍、SARSより大幅に低いとされている。しかし免疫力の弱い高齢者や既往症を持った人が感染すると重症化する。
時々刻々と変化する拡散の状況は医学界で名の通った米ジョンズ・ホプキンス大学の情報サイトで見ることができる。下はこの記事を書いている2020年2月8日午後1時43分現在のデータである。
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
日本は中国に次いで2位となっている。7日から日本政府はクルーズ船内の感染者数を別枠としてカウントし、汚染国との印象を弱めている。豪州では15人の感染が確認されている。中国では検査を受けられない人も多く、実際の数字は一桁多く見るのが妥当と言われている。


発生源は当初武漢市の海鮮市場とされていたが、多くの市場訪問者が感染し、拡散したことは確かだが、感染源かどうかについては疑問視されている。
そして今 陰謀論との批判があるが、武漢にある2か所の国立バイオロジー研究機関からの流出の可能性が論じられている。2018年から運用開始した毒性の強いウイルスの研究機関で、最高レベルの安全管理基準BSL-4に準拠した施設だ。この研究所についてウイルス漏洩の警告が2017年に学者からなされている。最近では1月28日、アメリカ司法省広報室WEBサイトがハーバード大学(武漢理工大学でも勤務)の教授が中国スパイとしてウイルスの密輸で逮捕された記事を掲載、また米ブログのゼロ・ヘッジは武漢ウイルス研究所でコロナウイルスに改変を加える研究を行っていた中国人科学者を特定、その論文を公開した。注目されるのは遺伝的に改変されたコロナウイルスには自然免疫の経路に耐性がないため、世界中の誰にでも感染するというもので、今回の強い感染力を持つ新型ウイルスの姿そのものである。

SNSやメディア上にこの肺炎の情報が上がり始めたのは12月からである。中国国内で何が起こっていたのか、その経緯をここでは書かないが、初期は武漢市と湖北省による隠蔽と、新型コロナウイルス発見の情報を無視し、20日ほど北京政府が事態を放置、初動対策せずこれが蔓延につながったと言われている。ターニングポイントとなった1月20日、習近平主席が「重要指示」をやっと発布、それを境に中国内はパニックに突入した。


3. 中国からの訪問者を入国拒否する国続々、感染症対策の原則は「隔離」
1) 中国に遠慮したWHOの動きにとらわれることなくこの原則に従い素早く対応したのは北朝鮮と米国であった。隔離対象は中国そのものである。
アメリカは早いタイミングで「非常事態宣言」を出し、厳格な予防策をとった。昨年10月にニューヨークで行われたコロナウイルスのパンデミック想定シュミレーション(イベント201)の結果に基づき政府が対策マニュアルをまとめ、それに従って米国独自の隔離政策を取っていると言われている。このマニュアルは安全保障に関する情報共有グループ、Five Eyesにも回覧され、豪州含む4か国の対策は米国とほぼ同一レベルになっている。
 
2) 豪州の取り組み
モリソン首相は、2月1日最高警報レベル4を宣言した。
中国への旅行をしないよう勧告。この制限は、中国のあらゆる場所に適用される。
豪州市民または永住者の場合、彼らの身近な家族(配偶者、扶養されている子供、または法的保護者)を含め、豪州に到着した後すぐに出発地に戻らない場合、クリスマス島の検疫センターで2週間滞在させ強制検疫を受けさせる。現在希望者(湖北省には600人以上の豪州人が居住)をチャーター便で順次帰国させている。中国在外国人については中国を出国してから14日間は豪州への入国を拒否。
これらの制限は中国本土にのみ適用される。(香港とマカオは規制の対象地域から除外)
The detention centre on Christmas Island.
The detention centre on Christmas Island. AAP

3) 日本の対応 
アジアの国々が次々と厳格な予防策へと移行する中、日本は「湖北省に日本到着前14日以内に滞在した外国人と、湖北省発行の中国旅券所持者の入国を2月1日から当面禁止する」に踏み留まっている。中国の個人旅行客は続々と日本に入国しており隔離政策の大穴になっているためもっと厳格な措置を講じるべきとの批判が多い。


4. 豪州、シドニーで何が起こっているか
豪メディアを読むと都市のDeserted(砂漠化)という言葉がよく出てくる。
それは筆者が撮った写真を見れば一目瞭然である。これは2月1日のランチタイムのタウンホール付近である。普通であれば観光客や市民で混雑しているが、閑散として人影は見えない。
C:\Users\Owner\Documents\慰安婦像問題\Cheers 関連\Cheers2020年3月号記事materials\土曜昼近くのタウンホール 2020年2月1日.jpg

こちらは中華系住民が40%を占めるEastwoodの街並みである。店は閉まり、歩く人もまばら。(2月1日Dairy Telegraph記事)


下は私がよく使うHornsbyの中華系スーパーであるが、客も少なく、客とスタッフがマスクをしている。(筆者撮影)
C:\Users\Owner\Documents\慰安婦像問題\Cheers 関連\Cheers2020年3月号記事materials\EDIT マスクをして作業すルレジ係 Hornsbyの中華系スーパーで2 2020年1月30日.png C:\Users\Owner\Documents\慰安婦像問題\Cheers 関連\Cheers2020年3月号記事materials\客も従業員もマスク Hornsbyの中華系スーパーで 2020年1月30日.jpg

モリソン首相は、ブッシュファイアに続き武漢肺炎のパニックが豪州にもたらす経済的悪影響は甚大になろうが、まだその規模は計り知れないとの声明を出した。すでに観光/旅行業、水産業、小売り業を中心に深刻な打撃が報告されている。
10日過ぎから春節休暇が明け、中国では億単位の人の移動が始まり感染の様子も変わってくる。新型肺炎のピークは3月~5月と見られているが終息宣言が出るまで気を抜けない。


最後に新型ウイルス対策として個人でできる有効な対策をまとめたのでご励行を。

  1. こまめに石けんと流水での手洗いまたはアルコール消毒剤を用いた手・指の消毒。
  2. マスクを持っていない場合、咳やくしゃみをする際は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1m以上離れる。鼻汁や痰の付いたティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手のひらで咳やくしゃみを受け止めた時はすぐに手を洗う。
  3. 外出時は人ごみの多いところは避け、マスク着用を。