中国企業ランドブリッジへのダーウィン港 売却によって生じる不安


-豪The Australasian紙2015年11月7日12:00配信記事の概要-


オーストラリアで反日の兆しが数か所で出てきています。そのうちの一つがストラスフィールド市の慰安婦像設置運動そして次にダーウィンでのいくつかの動きがあります。ストラスフィールド市の慰安婦像問題は、AJCNの反対運動で阻止できましたが、ダーウインでの動きについてその一つの問題である、中国企業によるダーウイン港のリース問題を豪The Australasian紙が取り上げた記事をもとにご紹介します。


”Disquiet over sale of Darwin Harbour to Chinese Landbridge Group”

記事の原文をご請求の方はjcnaus@googlegroups.com まで。


ダーウィン港は歴史的にも大きな意味を持つ連邦政府が造った港であったが、北部準州政府が5億 6百万ドルで中国の私企業 Landbridge に99年間 リース。




ダーウィンはアジアへの玄関口であり、この租借権の売却劇は中国、アメリカ、日本という超大国の地位的関係に影響をもたらす。この契約については北部準州政府は積極的な周知をせず、連邦政府は深い検討をしていなかった。

運輸大臣Andrew Robbは、「中国企業による投資は、北部開発を促進する」、豪州北部開発担当大臣Josh Frydenbergは「豪州北部へのビジネスチャンスを外国投資家が確信しているという良い兆候だ」と述べた。

軍事専門家は、南シナ海における中国と周辺諸国との領土問題を指摘し、悲観的である。

Peter Jennings, Executive Director of the Australian Strategic Policy Instituteは、リース期間を99年としたのは必須となる監査を避けるためであり、Foreign Investment Review Board 外国投資監査委員会からの勧告を無視した、と述べた。

北部準州政府の役人は、買主は厳密に言えば国有企業ではない、と反論する。また、豪防衛庁には事前情報を提供したと主張するが、軍関係者は懸念を表明。
ダーウィンは東南アジアに派兵する場合、米豪の軍事作戦の要である。ダーウィン港の租借権売却が発表された日に、米豪の外務及び防衛大臣はボストンでダーウィン港で海軍の協調会議を開始していた。

年間100隻の豪および同盟国の軍艦がダーウィンを使用している。アメリカは2,500人をさらに派遣予定。これらの船は中国企業によって管理される”不適切”な港を使用することとなる。

この”大失態”は、連邦内閣府がこのような取引を監視する必要性がある事を示す。しかし中央政府による自治権侵害の恐れもあるので配慮が必要。

野党労働党によれば、豪軍の中にはリース契約に関し調査が必要だという声もある。

しかしもっとも心配なのはダーウィン港の今後の経済的重要性に対する懸念である。

ダーウィン港の対岸ではINPEXによる南半球最大となる540億ドルの液化ガスプラ ントが建設されていて、日本への安定したエネルギー供給源となる。ダーウィン港は南シナ海での紛争の縮図となるだろう。
(INPEX Corporation :国際石油開発帝石株式会社は、08年10月1日に設立された世界20数カ国で70以上のプロジェクトを展開する日本最大の石油・天然ガス開発企業)

19世紀には白人がアボリジニを使用人としていた。1886年の中国人の人口は6,200人で、白人の3倍いた。かれらは金鉱で働き、北部の経済を支えていた。結婚、経済などでアボリジニと中国人の交流は深かった。日本人の真珠貝潜水夫は白豪主義によりいなくなった。

第二次世界大戦が勃発し、日本がインドネシアを占領、ダーウィンは軍港となった。

1942年2月19日、242機の日本の戦闘機が真珠湾よりも多い681発の爆撃をおこない、25隻の船が被害を受け、250名 以上の命が失われた。これより60回以上18か月にわたり攻撃は続く。

1950年代に日本の会社藤田サルベージがダーウィン港の爆撃による残骸の回収を行った。120名の従業員が2年間にわたり作業に従事する。

1990年代にはアメリカの会社Conoco Phillipsがガスターミナルを建設。日本主導のインペックスグループが西オーストラリア沖で液化ガス事業イクシスプロジェクトを開始。しかし環境への影響が問題視され、西オーストラリア州政府及びアボリジニとの交渉が決裂。

北部準州首席大臣(当時)クレア・マーチン氏が日本へ異例の直接直談判し、プラントをダーウィンへ誘致。ガスパイプラインが長くなることにより費用が膨らむが、北部準州政府は有利な条件を提示し、2008年契約締結。
INPEX会長黒田直樹氏は「北部準州の人々のサポートに感謝する」と述べる。連邦政府(当時は労働党)も後押し。

この決定には地形だけでなく、経済的な要因がある。日本は西側諸国の一員である、防衛上安全である事からダーウィンを選んだ。このプロジェクトにより、地元の経済は大量の工事受注により潤った。

2012年中道保守のテリー・ミルズ氏が選挙で勝利し、インペックスとの関係は良好であった。ミルズ氏は豪政治家にしては珍しく台湾を強く支持していた。選挙から7か月後、東京でインペックス幹部との会議中に首席大臣の職を失う。黒幕は中国系投資を好むデービッド・トールナー氏とアダム ・ジャイルズ氏(現首席大臣)である。以後、かれらはダーウィンのジャーナリストとともに頻繁に北京へ向かう。

新聞に寄れば99年リースの契約過程は公表されていない。国の財産がシドニーのSutherlandより人口が少ない地方政府によって売り払われた。(北部準州の人口23万人)

海外投資が大事なのか、経済が大事なのか、それとも選挙が大事なのか。取引相手が重要な港を管理するのは、長期的な目で見て安定をもたらすのか?

国会議員Bob Katterが連邦政府議会で問題提起した。
https://www.youtube.com/watch?v=NIVoE1E4yCY
この売却劇により、オーストラリアが防衛と商業を区別していることは明らかである。中国が単なるビジネスパートナーであり、南シナ海での問題は安定しているというオーストラリアの見解に、アメリカは賛成しないであろう。アメリカはダーウィンを海兵隊の派兵基地にする考えがある。

Stokes Hill Whrf(リース対であるEast Arm Warlfの向かい側)は米軍の軍艦だけでなくクルーズ船の港となっている。

ダーウィンへの日本の関心は高い。今後40年間(インペックスのLNG取引契約期間)、インペックスはダーウィン港へ妨げられることなくアクセスできるのだろうか?


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注)
中国の企業は、「工会」という仕組みにより 私企業といえども中国共産党が影響力を保持しおり、Landbridge Groupも例外ではない。この企業は、人民解放軍と緊密な関係を持ち、企業としては珍しく内部に軍隊も保持していることが明らかになっている。
THE AUSTRALIANNOVEMBER 13, 2015 12:00AM 記事より

Military ties to Darwin port’s Chinese owner Landbridge Group

Defence experts believe the new Chinese operator of the Port of Darwin should be placed under renewed scrutiny, amid evidence of its close and extensive links to the People’s Liberation Army and the group’s recent move to set up its own armed internal militia unit.





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