悲しくも滑稽な映画『軍艦島』にみた韓国人の心の奥


(山岡鉄秀AJCN代表IRONNA記事)


歴史プロパガンダ戦で韓国が慰安婦問題の次の弾に選んだ徴用工問題の具体的な展開である映画「軍艦島」について、AJCNの山岡代表が言論空間「IRONNA」で発表した記事を転載します。徴用工問題は、豪州における中国のスパイ網の元締めであった陳用林氏〈2005年豪州に政治亡命〉も中国のプロパガンダ戦のツールの一つであることを認めています。

8月23日、ニューヨークに降り立つや否や、件(くだん)の韓流プロパガンダ映画『軍艦島』を見ることになった。7月にはブロードウェーのビルボードで派手なプロモーションを打ち、8月4日には米国とカナダの約40カ所で封切られたので、マンハッタン界隈(かいわい)の映画館で見られるだろうという思い付きだった。ところが、ホテルのコンシェルジュに聞くと、隣のクイーンズ地区まで行かなくてはならないという。クイーンズといえば「フラッシング」という韓国人街がある。そこでも午後と夕方の2回しか上映していない。

映画『軍艦島』のパンフレット


 要するに、封切り後3週間未満でニューヨークの中心部から消えて、韓国人が多い郊外で細々と上映されている、ということだ。興業的には失敗したことがはっきりわかる。約220億ウォン(約22億円)という巨額の製作費をかけ、韓流スターを動員したトンデモ映画『軍艦島』は、本国での封切り初日こそ97万人を超える史上最多の動員を記録したが、翌週からまさかの失速をし、いまや損益分岐点に届くかも怪しいという。何が韓国人をしらけさせたのだろうか。タクシーに30分も乗ってまで見る価値があるかという思いを振り払って、これも調査と自分に言い聞かせてクイーンズ地区へ向かった。

 本稿の目的は、この映画がいかに荒唐無稽かを詳述することではなく、日本人としてこの映画から何を読み取るべきかを解説することである。『軍艦島』は徴用工がテーマであるが、慰安婦も登場し、慰安婦問題を含む全ての歴史問題に通底する韓国人の被害者ファンタジーである「恨(ハン)タジー」と、悲しいまでの自己肯定願望があふれている。その現代韓国人のメンタリティこそ日本人がしっかりと理解しなくてはならない要諦であり、それを理解せずに彼の国と外交を行えば必ず失敗する。この映画はそういう観点からこそ見るべきものである。

 それにしても、ここまで荒唐無稽になるとほとんどギャグの世界だが、史実を極端に歪曲(わいきょく)すると、エンターテインメント映画にならざるを得なかったのだろう。映画評論家のジャスティン・チャンは、米紙ロサンゼルス・タイムズの映画批評欄で「この手の歴史修正主義は映画の世界では珍しくない。歴史をばかげた復讐(ふくしゅう)ファンタジーに仕立てあげる特権はクエンティン・タランティーノだけに許されるべきではない」(筆者訳)と書いている。つまり、歴史を知らない人間の目にさえ、「歴史捏造(ねつぞう)復讐ファンタジー」であることが明らかな出来栄えだということだ。

 映画館に入る前、チケット売りが「この映画にはコメディーの要素もあるんだ」と前の客に言っていたのが聞こえたが、人気俳優のファン・ジョンミンとキム・スアンが親子役で登場してその意味がわかった。娘を愛するジャズ楽団団長の父親と、楽団の歌手で小学生の娘がコミカルな人情劇を演じる。ふたりが連絡船で端島(軍艦島)に着くなり、軍人らが乗り込んできて、警棒で乗客を殴りつけて連行していく。ファン演じるイ・カンオクは「やめてください、やめてください」と日本語で懇願する。ばかげたシーンである。労働者を痛めつけてどうするのか。要は、端島の炭鉱で働く朝鮮人は全員が強制連行の被害者だったという印象操作がなされているわけだ。
実際には、国家総動員法に基づく国民徴用令が朝鮮半島で適用されたのが1944年9月だが、制海権を失ったことから、45年3月までの7カ月間しか朝鮮人を移送できなかった。それ以前は一般公募による出稼ぎと官斡旋だった。戦争で日本国内は極度の労働力不足に陥っていたので、朝鮮半島で支度金を払って、家族単位での出稼ぎが募集された。だから端島には女性も子供もいた。

かつて三菱の私有地だった長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)。建物の劣化が進む


 映画のクライマックスでは、敗戦が近いことを悟った日本人経営者が、奴隷労働の証拠隠滅のために、朝鮮人全員を坑道に閉じ込めて殺害することを画策。察知した朝鮮人が武装蜂起し、激しい銃撃戦の果てに船を強奪して逃亡する。船上で、被弾して負傷したイ・カンオクが、武装蜂起をリードした工作員のパク・ムヨン(ソン・ジュンギ)に「俺の娘に好物のそばを食べさせてくれ」と頼んで息を引き取る。お涙頂戴のシーンだが、実際には終戦後、炭鉱を所有していた三菱が船を用意してみんな平和に帰国したのである。

 さすがにここまでの捏造は、いくら韓国人でも見ていて恥ずかしいだろう。しかし、もうひとつ韓国人がエンタメと割り切れない要素がこの映画にはある。悪役の朝鮮人がたくさん登場するのである。朝鮮人の悪人とは、日本人に協力する裏切り者で「親日派」と呼ばれる。日本人経営者にへつらって朝鮮人を弾圧する朝鮮人労務係が登場し、朝鮮人慰安婦を虐待する朝鮮人の女衒(ぜげん)が言及され、そして極め付きは、端島の朝鮮人に「先生」と崇拝される独立運動家のイ・ハクチュンの裏切りだ。尹は朝鮮人を代表して会社と交渉するふりをしながら、ひそかに会社側と通じており、朝鮮人労働者の給与や死亡補償金をピンハネしていた。揚げ句の果てには、朝鮮人全員を証拠隠滅のために坑道に生き埋めにして抹殺する会社の計画に加担し、朝鮮人を坑道に誘導しようとする。それを見破った工作員の朴に朝鮮人群衆の面前でのどをかっ切られて絶命する。

 なんという後味の悪さであろうか。朝鮮人の敵は朝鮮人だったのだ。これでは韓国人が単純にエンタメと割り切れないのも無理はない。日本人だけを悪役にしないのは、韓国人の自己反省の表れであろうか。いや、そうではない。韓国人の強引な自己肯定のためには、悪役は日本人だけでは足りないのだ。実はこれは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領をはじめとする現在の韓国人が信奉する歴史観の表れなのだ。それはこういうことだ。


・韓国は平和で健全な独立国だった
・それを、大日本帝国が強引に合併し、独立を奪った
・親日派の裏切り者朝鮮人が虎の威を借る狐のように同胞を搾取した
・日本による併合がなければ、韓国は自力で近代化を成し遂げ、もっと発展していた
・親日派は戦後、親米派となって搾取を続けた売国奴だ
・だから韓国が真っ先にすべきことは親日派の排除だ
・韓国は無実の被害者であり、日本の悪事を世界に知らしめて、民族の栄光を取り戻す必要がある
・韓国の独立は、自ら日本を追い出して勝ち取った
 
どうしてもこのように信じたいのである。そのためには、史実を歪曲せざるを得ない。
事実とかけ離れているからだ。
周知のとおり、朝鮮半島は極めて長きにわたって中国歴代王朝の属国だったが、日清戦争に勝利した日本が下関条約により朝鮮を独立させた。しかし、財政的に自立できず、結局日本に併合された。日本国内では併合反対論も強かった。日本は朝鮮半島を内地化し、膨大な投資をして近代化した。非常に多くの朝鮮人男性が大日本帝国陸軍に志願した。日本が敗戦しても、朝鮮総督府は機能を続けて米軍に引き継がれた。独立運動は存在し、上海に「大韓民国臨時政府」なるものが設立され、「光復軍」なる軍事組織も作られたが、内紛が絶えず、いかなる国からも承認されなかった。

 したがって、韓国人は自らの手で独立を勝ち取ったことは一度もない。独立させてもらったが、自力で維持すらできなかったのが現実だ。彼らが「親日派」「親米派」として敵視する世代の人々は、その時代の官僚や軍人など、社会を支えた功労者である。彼らを憎んだところで意味がない。これは韓国人の知人の言葉だが、採用試験に受かったら売国奴で、落ちたら愛国者だとでもいうのだろうか。それとは別に、朝鮮人の女衒たちが朝鮮人婦女子を売り飛ばして稼いでいた。それは今も同じだ。その現実を直視することなく、前述のように強引に自己肯定しようと国を挙げて必死にもがいている。

 その「恨タジー・歴史修正主義」の象徴が「慰安婦」であり、「徴用工」であり、そのメンタリティの結晶がプロパガンダ映画『軍艦島』なのだ。韓国人の妄想を凝縮した『軍艦島』は大ヒットするはずだったが、図らずもそのいびつさゆえに失速した。『軍艦島』とはそのように悲しくも滑稽な映画なのである。「本当にあのように戦えたらどんなによかっただろう!」と多くの韓国人が心の奥で思っているのだ。

 もっとも、このトンデモプロパガンダ映画にも、たったひとつ真実が含まれていることを追記しておくべきだろう。朝鮮人は実際のところ、いざとなったら映画のラストシーンのように、死を賭して戦う覚悟はあった。

 終戦間際の1945年4月、捕虜になった朝鮮人のうち、信頼に足るとみなされた3人が米軍によって尋問された。尋問内容は慰安婦に関してだった。
(Composite report on three Korean navy civilians, List no.78)

「朝鮮人は一般的に、日本軍による朝鮮人女性の売春業への採用を知っていたか? 平均的な朝鮮人のこの制度に対する態度はどのようなものであったか? この制度を原因とする混乱や摩擦を知っているか?」(筆者訳)という質問に対し、朝鮮人捕虜は以下のように答えた。

「太平洋地域で会った朝鮮人娼婦は、みんな自発的な売春婦か、両親に売られて売春婦になっていた。これは朝鮮の考え方ではまともなことだった。もし、日本人が女たちを直接徴用したら、老いも若きも絶対に許容しなかっただろう。男たちは怒りに燃え、いかなる報復を受けようとも日本人を殺していただろう」(筆者訳)
2017年8月16日、ソウルの日本大使館前で慰安婦像を囲みながら開かれた抗議集会


 このことからわかるように、徴用工であれ、慰安婦であれ、日本人によって強引で悪辣(あくらつ)なことがなされれば、朝鮮人は『軍艦島』のラストシーンのように戦う意思があったのだろう。それだけは真実といってもよいのだろう。そして、そのような暴動は起きなかった。その必要がなかったからである。炭鉱労働は日本人にとっても朝鮮人にとっても過酷であった。しかし、朝鮮人は平和裏に故郷へ帰り、戦後補償問題は政府間で解決された。

 韓国人はいい加減に「恨タジー」に逃げ込むのをやめて、歴史を直視しなくてはならない。さもなければ、痩せこけた徴用工像も、幼年慰安婦像も、欺瞞(ぎまん)の象徴であり続けることになるだろう。映画『軍艦島』の失敗がそのことを示唆している。