驚愕!今も続く朝日新聞慰安婦強制プロパガンダの姑息


2016年5月1日

AJCN Report


AJCN代表 山岡鉄秀


正論2016年5月号(4月1日発売)に6ページにわたり、朝日新聞が現在も行っている慰安婦「強制」プロパガンダについて書いた論稿が掲載されました。この記事はスペース制限の関係でAJCNの主張の一部が割愛されていましたので、このブログではフルのオリジナル論稿をご紹介いたします。多角的な論理展開を読み取ってただければ幸甚です。この論稿で明らかにされた朝日新聞のプロパガンダについては、現在行われている対朝日新聞訴訟の法廷で追求されています。


朝日の誤報は過去の出来事ではない

去る2月16日、国連欧州本部で開かれた女子差別撤廃員会の対日審査で、外務省の杉山晋輔外務審議官が明言したように、今や世界中に流布された「日本軍による慰安婦強制連行説」は朝日新聞の報道による影響が大であることは、国民的合意事項と言っても過言ではない。しかし、この杉山発言にせよ、「朝日の重大な誤報と世界的影響」を過去の出来事と捉えている印象を覚える。朝日の反省を求める裁判も複数起こされているが、「朝日は日本国内では読者向けに謝罪したが、海外向けの謝罪と訂正が不十分」という原告側の立論は、重大なポイントを見落としていると言わざるをえない。それは、朝日の慰安婦強制プロパガンダは、戦略を変えて、現在なお進行中であるという事実である。


論点すり替えはとっくになされていたが

朝日が謝罪し、複数の記事を取り下げたと言っても、吉田清治の証言に代表されるような、暴力的な強制連行が、少なくとも朝鮮半島ではなかったと認めただけで、全体として見れば「広義の強制性」があったと論点をすり替えたことは周知である。朝日による「広義の強制性」とは、1997年3月31日の慰安婦特集によれば、「「強制」を「強制連行」に限定する理由はない。強制性が問われるのは、いかに元慰安婦の「人身の自由」が侵害され、その尊厳が踏みにじられたか、という点からだ。」とし、その例としては、「悪い業者に騙されて慰安所で働かされたり、慰安所にとどまることを物理的、心理的に強いられていた場合」だという。このスタンスは2014年8月の特集記事でも踏襲している。1993年ごろからは、吉田証言の信ぴょう性に疑問を抱き、「強制連行」という言葉を意識的に使わないようにしてきた、とのことだから、朝日は少なくとも、自らが当初主張していた「狭義の強制性である強制連行」と後に作り出した「広義の強制性」の違いを認識していたことになる。


今明らかになる朝日の新戦略

今回改めて、昨年末の慰安婦日韓合意以降の朝日の日本語記事および英語記事の検証をすべく、AJCN事務局長に朝日新聞デジタルの検索を依頼した。やがて送られて来た慰安婦関連十数本の記事の日本語版と英語版を比べてみると、奇妙なことに気が付いた。なんとなく英文の方が長い印象を受けるのである。よく見ると、日本語版には一度も登場しないが、対となる英語版には必ず判で押したように挿入されている文があることがわかった。その部分を時系列で並べてみると、次のようになる。
(1月2日)・comfort women, who were forced to provide sex to Japanese soldiers before and during World War II
     第二次大戦前、および戦時中に、日本兵にセックスの供与を強制された慰安婦

(1月2日)・comfort women, who were forced to provide sex to imperial Japanese military personnel before and during World War II.
     第二次大戦前、および戦時中に、帝国日本軍人にセックスの供与を強制された慰安婦

(1月3日)・comfort women, a euphemism for women who were forced to provide sex to Japanese troops before and during World War II 
                    第二次大戦前、および大戦中に、日本軍部隊にセックスの供与を強制された女性の婉曲表現である慰安婦

(1月6日)・Comfort women is euphemism for women who were forced to provide sex to Imperial Japanese troops before and during the war. Many of the women came from the Korean Peninsula.
     慰安婦とは、戦前および戦中に日本軍部隊にセックスの供与を強制された女性達の婉曲表現である。女性たちの多くは朝鮮半島からであった。

(1月6日)・such women who were forced to provide sex to wartime Japanese soldiers.
     戦時中の日本兵にセックスの供与を強制されたそれらの女性達

(1月6日)・comfort women, who were forced to provide sex to wartime Japanese soldiers
     戦時中の日本兵にセックスの供与を強制された慰安婦

(1月15日)・“Comfort women” is a euphemism for women, including many Koreans, who were forced to provide sex to Japanese soldiers before and during World War II. 
     慰安婦は、第二次大戦前および大戦中に日本兵にセックスの供与を強制された、多くの韓国人を含む女性の婉曲表現である。

(1月27日)・"Comfort women" is a euphemism for women, many of them from the Korean Peninsula, who were forced to provide sex to Japanese troops before and during World War II.
     慰安婦は、第二次大戦前および大戦中に日本軍部隊にセックスの供与を強制された、多くが朝鮮半島からの女性の婉曲表現である。

(1月27日)・“Comfort women,” as they are euphemistically called, were forced to provide sex for Japanese soldiers before and during World War II. Many of them were from the Korean Peninsula, which was under Japanese colonial rule until the end of the war. 
     婉曲的な呼び名である慰安婦は、第二次大戦前および大戦中に日本兵のためにセックスの供与を強制された。その多くは、1910年から1945年まで日本の植民地だった朝鮮半島からだった。

(2月2日)・Comfort women refer to those who were forced to provide sex for Japanese troops before and during World War II. Many of them were from the Korean Peninsula, which was under Japanese colonial rule from 1910 to 1945. 
     慰安婦とは、第二次大戦前および大戦中に日本軍部隊のためにセックスの供与を強制された女性たちを意味する。その多くは、1910年から1945年まで日本の植民地だった朝鮮半島からだった。

(2月5日)・comfort women, a euphemism for women who were forced to provide sex to members of the imperial Japanese military before and during World War II. 
     第二次大戦前および大戦中に日本皇軍の構成員にセックスの供与を強制された女性達への婉曲表現である慰安婦

(2月8日)・Comfort women is a euphemism for women who were forced to provide sex for Japanese troops before and during World War II. Many were from the Korean Peninsula, which was under Japanese colonial rule from 1910 to 1945. 
     慰安婦とは、第二次大戦前および大戦中に日本軍部隊にセックスの供与を強制された女性達の婉曲表現である。その多くは、1910年から1945年まで日本の植民地だった朝鮮半島からだった。


繰り返すが、これらのほとんど同一の文は、日本語版には全く現れず、英語版のみに挿入されている。では具体的に記事を見てみよう。


大統領府が談話、世論沈静化図る 日韓合意受け2度目 (2016年1月1日)
これは、慰安婦日韓合意を受け、韓国大統領府が1月31日に国民に理解を求める2度目のメッセージを発表したという記事である。この日本語版記事は次の一文で終わっている。
「(大使館前の)少女像に関しては、移転を事前に約束したとの「合意は無い」と明確に否定した。」 ところがこの記事の英語版は、この一文を次のように書いている。

「大統領府は、第二次大戦前および大戦中に日本帝国軍人にセックスの供与を強制された慰安婦を象徴するために建てられた像の移転を約束したとの「合意は無い」と語った。」 (英語を日本語に翻訳 以下同)
さらに、この記事は学生や野党がこの合意に強力に反対していることを続けて伝えている。日本語版にはない。やはり、英語版の方がより多くの情報を伝えているのである。


「強制連行は確認できず」政府、国連委に答弁書 慰安婦問題 (2016年2月2日)
この記事は、タイトル通り、日本政府が国連女子差別撤廃委員会に対し、政府の調査では日本軍や政府による慰安婦の強制連行は確認できなかったとする答弁書を提出し、16日の党委員会会合で、杉山晋輔外務審議官が趣旨を説明することを検討していることを伝えるものである。この英語版の記事が、やはりずっと長い。そして奇妙なことに、慰安婦強制連行の虚偽は日本政府がありとあらゆる資料にあたって出した結論であると述べたというパラグラフの後に、突然次の文が挿入されている。

「慰安婦とは、第二次大戦前および大戦中に日本軍部隊のためにセックスの供与を強制された女性たちを意味する。その多くは、1910年から1945年まで日本の植民地だった朝鮮半島からだった。」
つまり、わざわざ日本政府の見解を真っ向から否定する説明文を唐突に挿入しているのだ。もちろん日本語版には現れない。


慰安婦日韓合意の反対者らが集会 (2016年2月8日)
これは、「頑張れ日本!全国行動委員会」が2月7日に永田町で慰安婦日韓合意を批判する立場から開いた集会の内容を伝える記事である。日本語版は、西岡力東京基督教大学教授の発言を次のように報じている
西岡氏は「安全保障や日本の名誉にかかわることは足して二で割るようなことは成り立たない。国連、国際社会で相互批判を控えるとしたことは未来に禍根を残す」。
英語版は、上記の西岡氏の発言の前に、突然次の文を挿入している。

「慰安婦とは、第二次大戦前および大戦中に日本軍部隊にセックスの供与を強制された女性達の婉曲表現である。 その多くは、1910年から1945年まで日本の植民地だった朝鮮半島からだった。」
西岡氏といえば、言うまでもなく、早くから朝日新聞の誤報を指摘し、批判して来た慰安婦問題の第一人者である。その氏の発言を引用する直前に、何の脈絡もなく氏の意見を真っ向から否定するような文を挿入しているのである。これも日本語版にはない。

このように、たった一か月強の間の記事でも、例を挙げれば枚挙にいとまがない。普通は日本語記事が主体で、その中からメインの記事が英語に訳されそうなもので、基本的に日本語記事と英語記事の内容は同一、というのが一般的な理解ではなかろうか。朝日の場合は、慰安婦問題に関しては、あたかも英語記事が先に書かれたかのようにより詳細で、日本語記事は簡略化されてあっさりと書かれている。朝日がほとんどの日本人が読まない英語版を自社の主張発信のメインツールと位置付けていることが読み取れる。そして、以前のように「広義の強制性はあった」と正面切って議論するのではなく、日本語版の記事は無難に簡略化しておいて、英語版に文字通り判で押した様な「強制性を明確にした慰安婦の定義」を毎回記事のコンテクストとは無関係に挿入して行く。これを読む英語話者は、間違いなく慰安婦は日本軍による強制的で組織的な蛮行の被害者という印象を持つだろう。そして、それが海外メディアを通して拡散されていく。これが現在進行中の朝日の戦略だ。


朝日はこの行為をどう説明するのか?

朝日に公開質問状を送るべきと思うが、朝日の回答は想像できる。英語で慰安婦の定義を必ず挿入するのは、「慰安婦という言葉が聞きなれない英語読者の理解を助けるため」と言うだろう。だが考えて欲しい。「日本軍兵士にセックスの供与を強制された主に朝鮮半島の女性たち」という表現を読んで、「ああ、これは広義の強制のことだな、自由に辞められなかったんだろうな」と思う読者が世界中にひとりでも存在するだろうか。これは、誰が読んでも「強制連行」をも想起させる暴力的な「狭義の強制」に他ならない。「広義の強制」などという論理のすり替えをしておきながら、国民が気づかない英語の世界で「狭義の強制」を発信し続ける矛盾した行為をどう肯定するというのか?


強制売春とは言っていない

事務局長がたまりかねて私に言った。「これでは国民に隠れて強制売春を海外キャンペーンしているようなものじゃないですか!」それは早合点というものだ。売春を示唆する言葉はひとつも使っていない。海外メディアの報道ではよく見られるのだが、売春行為を強いられたのなら、娼婦(Prostitute)とか、売春宿(Brothel)といった単語が使われる。これに対して、朝日の記事は、単純に「セックスの供与を強制された」とだけ言っている。つまり、これらの女性たちが、対価を得たかどうか定かではないのである。報酬も得られず、ただ性行為を強制される女性達とは何だろうか?そう、「性奴隷」である。朝日は、「性奴隷」という言葉の使用は避けながら、「慰安婦は強制連行された性奴隷」という印象操作を英語で行っているのだ。
さらに、「多くの慰安婦は日本が植民地支配していた朝鮮半島から(from)だった」という表現にも悪意を感じる。日韓併合が植民地支配であり、その植民地の女性を搾取したという印象を与える。また、「朝鮮人だった」ではなく、「朝鮮半島からだった」という言い方は、彼女たちが朝鮮半島出身だっただけでなく、朝鮮半島から連れてこられた(強制的に連行された)という印象も与える。これらのことから、事前に戦略的に考案されたほとんど同一の文を機械的に挿入していくことが社のポリシーであることが窺える。(ちなみに、日本語記事と英語記事は同一記者の署名記事である)朝日は意図的に曖昧な表現を選んだつもりだろうが、要諦は、普通の英語話者が読んで、全体としてどういう解釈をするかであり、「連行したとは言ってない」というような理屈は通用しない。


結論

このような姑息な行為はもう、イデオロギー闘争でも、国家権力への牽制とも言えない代物ではないだろうか?
朝日新聞木村元社長は2014年8月28日に社員全員宛てに「揺るがぬ決意で」と題したメールを発信している。その中で「私は2年前に社長に就任した折から、若い世代の記者が臆することなく慰安婦問題を報道し続け、読者や販売店ASAの皆さんの間にくすぶる漠然とした不安を取り除くためにも、本社の過去の慰安婦報道にひとつの『けじめ』をつけたうえで、反転攻勢に打って出る態勢を整えるべきだと思っていました」と述べている。 
またその後の9月11日の謝罪記者会見で木村社長と同席し質疑に対応した杉浦取締役は、「強制連行は、そういった事実はないと認めた。しかしいわゆる慰安婦、自らの意志に反した形で、日本軍兵士の性の相手をさせられたという広い意味での強制性はあった」とすり替えを繰り返した。朝日のツートップは誤報を認めた後、反転攻勢の固い意志を宣言していたわけである。
そして朝日の反転攻勢とは、ジャーナリズムとして舌鋒鋭く政府を批判するのではなく、国民の目が届かないところで「日本を貶める工作」を英語で世界に向けて粛々と続けることだったのだ。これは、我々日本国民への攻撃でなくて何であろうか?

最後に、現在進行中の朝日新聞慰安婦誤報訴訟における朝日の主張を引用しておく。
「女子挺身隊が慰安婦として動員されたとの印象を与えたとしても、70年以上も前の事実であり、これによって現在の日本人の社会的評価が低下するとはいえない」
このように述べながら朝日が密かに続けるプロパガンダによって、この瞬間も日本と日本人の名誉は傷つけられている。そのことに日本人は気付いていない。
                                 
以上