意見陳述書


平成29年6月2日 江川 純世


私は豪州、ニュー・サウス・ウエールズ州のNGO組織、Australia-Japan Community Network
Incorporated (通称AJCN)の事務局長の江川純世と申します。

朝日新聞の誤報、捏造記事がどのように海外のメディア報道に影響を与えたかは、以下の経過から明らかであります。朝日新聞が組織した第三者委員会、その後の独立検証委員会の分析、報告、それから2016年(平成28年)2月16日の国連女子差別撤廃委員会において、外務省杉山審議官が、「朝日新聞社がこれ(慰安婦強制連行)を事実として大きく報道し、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも大きな影響を与えたことによって生じた誤解だ」と述べるにいたりました。 また、慰安婦20万人という数字も具体的な裏付けがない数字です。

朝日新聞は2014年(平成26年)8月5日付けの記事で、女子挺身隊とは戦時下の日本内地や旧植民地の朝鮮、台湾で女性を労働力として動員するために組織された『女子勤労挺身隊』を指す、目的は、労働力の利用であり、将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別だ、としたうえで、20万人との数字の基になったのは、通常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、慰安婦を誤っての混同にあると自ら認めています。朝日はその前から韓国国内でこの混同がされていたと強弁していますが、流言飛語、噂が横行する韓国の新聞紙面に責任の一端を負わせるのは無責任というものです。自社発刊のアサヒグラフには挺身隊の活動が写真入りで詳細に報道されており、朝日の記者が取り違えていたなどという言い訳は悪質な責任回避です。海外メディアは慰安婦問題が日韓の敏感な問題であるととらえており、日本のクオリティー・ぺーパーの一つとして認知されていた朝日新聞の英語版は海外メディア、および韓国メディア(朝日日本語版も大きな影響力を持つ)に対し絶大な影響力を持っていました。以上から朝日新聞の誤報、捏造記事が世界のメディアに大きな影響を与えたことは、客観的事実として認知されていると考えます。

私の意見陳述では、海外及び豪州内ローカルメディアが、AJCNが活動を始めた2014年4月以降、朝日の虚偽報道の3点セット「1.強制連行/性奴隷、2.20万人、3.主に慰安婦は朝鮮半島の女性」を下敷きにどのように報道したか、それが私とAJCNの活動に具体的にどう影響したか、を論ずることといたします。次に、慰安婦像設置を阻止するため反対運動を展開する中で遭遇した豪州の各種組織、個人の発言に朝日の3点セットがいかに浸透・影響していたかについて述べ、最後にそれが、豪州のコミュニティや日系人に対するいじめ、差別、いやがらせ、脅迫、監視、バンダリズム(暴力事件)に繋がった具体例を示し述べます。

1.2014年(平成26年)以降の慰安婦問題関連のイベントと海外メディアの報道分析
を添付資料1、2および3にまとめました。
日韓合意後、グローバルに海外メディアに最も注目されたイベントは釜山総領事館前に慰安婦像が設置されたことに対する日本政府の対抗措置で、AJCNで17の記事を分析した結果、朝日の誤報3点セットの浸透、定着が確認されました。1、2、3のすべてが含まれていたのが10記事、1、2が含まれていたのが1記事、1、3が含まれていたのが 2記事、1だけが4記事でした。
朝日の英語版記事で定型化され、拡散されている1の強制連行/性奴隷はすべての記事に記載されています。3点セット以外の要素の報道がほとんどされていないことは朝日の記事の影響力の大きさを示しています。
                                     
2.朝日英語版記事の記述方式についての分析と手法の変遷
1)記事共通の骨格となる表現について
豪州に住む英語話者(Native English Speaker)307名にアンケートを取り、英語の骨格となる表記 “Women, many of them from the Korean Peninsula, who were forced to provide sex to Japanese soldiers before and during World War II.” を彼らがどう解釈するかを調査しました。その結果を添付資料4に、アンケート用紙を添付資料5として提出します。結果は「女性は強制連行され、性奴隷として扱われたと解釈する」が301名(98%)、狭義の強制性、広義の強制性どちらともとれるが6名(2%)、広義の強制性と解釈できるはゼロでした。つまり朝日が今、慰安婦を説明するとして必ず挿入している文章を英語話者が読むと、女性が強制連行され、性奴隷の扱いを受けたと解釈するということであり、朝日が主張する広義の強制性などとはだれも受け取りません。朝日は国内では撤回、捨て去った狭義の強制性を英語版の記事では、印象操作どころか声高に繰り返し主張しているのです。

2)朝日新聞英語版の慰安婦説明手法の変遷と狙い
 2016年から2017年にかけての朝日新聞英語版の主な記事のリストを添付資料6として提出します。添付資料4には 添付資料6の記事をもとに、慰安婦の説明手法の変遷と狙いを分析した考察を含めてあります。朝日新聞は2016年12月まで、主に独立した慰安婦説明文を定義の形で記事中に繰り返し挿入する手法を取ってきました。(PhaseⅠ) 
これが十分浸透したと判断してか、英語の表記方法についての批判をかわすためか、12月から新しくQuotation markをComfort womenから外し関係代名詞でつないで1センテンスの中に組み込んだり、Comfort womenを使わずに単なるWomenが強制的に性奴隷にされたと表記する手法を加え始めています。さらに他社の記事を転載するに際し、キーワードは朝日の常套句provide sexに入れ替え、同時に朝日に都合の悪い部分(売春宿で働いていた、20万人など)を削除する手法も併せて使い始めています。(PhaseⅡ)
新たな手法の狙いは明確で、職業売春婦の印象を消し、日本軍が一般の女性をかどわかして性奴隷として扱った、人権に対する罪を犯したとの認識に誘導し、それはホロコーストと同様に人類の汚点として記憶すべきであり、日本および日本人は永久に非難される存在であるとの主張に導くことです。

3. 豪州での慰安婦像設置反対運動の展開中に確認された朝日の虚偽報道の影響
 豪州の各種組織、個人の発言・行動への3点セットの浸透・影響について述べます。

1)ストラスフィールド市議会2回の公聴会、韓人会館での慰安婦像披露セレモニー、AJCNによる人権委員会への苦情提出時に流れた報道には朝日の3点セットのすべてまたは一部が必ず含まれていました、特に1の強制連行/性奴隷はすべての報道の基本でした。2015年のCRC(Community Relations Commission, Multicultural NSW) のHistorical Eventsに関するガイドラインについてのメディア報道にも、慰安婦問題が含まれ、その中に3点セットが記載されました。
2)2014年(平成26年)4月1日と2015年8月11日のストラスフィールド市議会での反日グループによる設置賛成の意見にも3点セットの要素が含まれていました。
3)2015年(平成27年)6月末ストラスフィールド市の依頼によるサーベイ会社の電話サーベイが行われました。(世論調査)このサーベイにおいて、サーベイ会社は、慰安婦の説明として3点セットを使い、更に慰安婦の数を20万人~36万人に変えて回答者に話しました。
4)反日団体KACA(The Korean Committee of United Austral Korean-Chinese Alliance against Japanese War Crimes)は、ストラスフィールド駅前広場(慰安婦像設置希望場所)で行った署名活動を含めたキャンペーン活動用にパンフレットを作成し、配布を行いました。これにも3点セットが入っています。
5)2015年7月10日から韓国人会会長兼KACA会長のLuke Song氏が韓国人会のサイトで安倍首相と慰安婦像設置に反対する日本人を攻撃するヘイト・スピーチ(Public Comments)を連載しました。もちろん3点セットをベースに、日本人という特定民族・人種を一方的に攻撃するものでした。
6)2016年8月6日 韓人会館で行われた慰安婦像披露式で配布されたパンフレットにも3点セットが入っています。

4.朝日の虚偽報道3点セットがもたらしたものは何か
朝日が拡散した3点セットは反日団体による日本及び日本人攻撃の根拠とされ、また攻撃の常套句とされました。その結果、豪州での慰安婦像設置反対運動を開始した2014年4月から私とAJCNメンバーは多くの差別、脅迫、監視、バンダリズム(暴力事件)を経験しました。具体的に述べます。

1)個人の家庭の分断
豪州は典型的な多文化社会であり、日本人と韓国人のカップルも多く、典型例は夫が韓国人、妻が日本人のケースです。多くの日本人女性から、家庭内の不和が激化して、慰安婦問題を家庭内で話すことはタブーになったとAJCNに報告されています、最も激烈な例として、ストラスフィールド市在住のAJCNの副代表(オーストラリア人)の息子(妻が日本人なのでハーフ)A君が、同じ学校の親友の韓国人と「大人が仲が悪くとも自分たちは友達でいよう」と誓い合ったと謂う話があります。また、別の同市在住の家庭では韓国人の父親が慰安婦問題で日本に対する憎しみを爆発させ、韓国に戻って軍隊に入り日本と戦うと宣言、日本人の母親と子供は家庭内で父親と対立しおびえました。
2)差別・いじめ
2014年以来、一部の韓国人の日本人に対する態度が変わり、日本人に対する嫌がらせ、差別、いじめが複数AJCNに報告されています。日本政府や人権委員会へも報告済みです。典型例は子供同士のいじめや差別、学生間/教師も加わっての差別、韓国人経営のレストランでの嫌がらせなどです。シドニーでもこれらの問題が発生し始めているため、邦人保護の観点から安倍首相と岸外務副大臣が2回に渡りNSW州首相と面談時に懸念を表明、対処を要請しました。
3)脅迫
2016年12月14日AJCNが人権委員会へ提訴した直後にAJCNへ脅迫メールが送られてきました。地域警察から連邦警察に移管され調査中です。AJCNの調査によれば送信者は韓国在住の人間であり、同様の文面の脅迫状が米国の慰安婦像設置反対活動の活動家の日系人女性にも過去3回送られていることがわかっています。 
4)監視
2015年8月11日のストラスフィールド市の特別市議会の直前に私の自宅が中国人の男に監視されていました。私の留守中であったため妻と娘は極度におびえました。
5)バンダリズム(破壊行為)
2015年4月、慰安婦像問題に関心があり、ストラスフィールド市議会にも足を運んでくれたAJCNの協力者が下記の被害を受けました。警察に届け済みです。
1)自宅のブロックの周りをアジア系の男達が徘徊し、彼の妻と目が合うと急いで立ち去った。妻は恐れて夫に報告した。
2)その数日後、彼の自宅近くのショッピング・センター駐車場に駐車していた自家用車の前輪タイヤ2本が切り裂かれた。この事件後、この家族は勤務している会社と相談して他国の事業所に転勤した。
このほかAJCNの副代表の自宅駐車場がブレーク・インの被害にあいました。駐車場奥の物置が壊され、更に車へ侵入しようとしたらしく車の鍵の部分が損壊。タイミングとしては8月11日の特別市議会の直前でした。家族が怖がるため警察へは届出せず。副代表は市議会へも頻繁に出入り、市議とも面談を多数行っているため、一部市議に報告しました。

最後に
現在行われている慰安婦報道に関する朝日新聞の日本を貶める英語版報道は、すでにジャーナリズムの枠を逸脱しており政治的プロパガンダそのものです。朝日のターゲットはすでに自社の捏造体質が広く知られた日本から海外へと移っています。日本と日本人の名誉を回復し、日本と日本人を貶める虚偽報道を止めるためにも、日本国内に対して行ったように英語版でも同様の撤回、謝罪をするよう要求しなければなりません。私は朝日新聞はすでに海外で起こっているコミュニティの分断や日系人に対する迫害に対する責任を取るためにもこの要求に応える義務があると考えます。それが現在海外に住む日系人の子供や孫を守ることにもつながります。