世界を震撼させている新型コロナウイルスによる武漢肺炎、豪州の対応は?


Cheers 2020年3月号記事

AJCN 事務局長兼代表 江川純世


新型コロナウイルスによる武漢肺炎の発生・拡大を知り、まず思い出したのが1995年に見たダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレーク」であった。この映画で得たウイルス感染に関する基礎知識が、今回武漢肺炎拡大について調べるモティベーションとなった。私は過去中国大陸を仕事と個人旅行で20回数回訪問した。訪問地は今回の冠状肺炎の発生地である武漢も含まれる。その時得た知見も加え、中国大陸で急速に拡散を続けるこの感染症についてレポートする。


1. 武漢とは
中国全図を四つ折りにすると、真ん中に来るのが内陸の大都市、武漢である。揚子江が東西に横切り、下流には上海、上流には工業都市重慶がある。北方の北京と、南の広東省や香港を結ぶ中間点でもある。 武漢市には東京並みの1100万人が住む。最近は高速鉄道で全国各地と結ばれ、自動車製造などの工業の他、国策で世界最先端の光/半導体産業の中核都市にしようとする動きもあった。春節の休暇前には、4日間で1万7千人近い観光客らが武漢空港から日本に押し寄せた。ちなみに中国人の訪日観光客の数は1月2日から2月1日までで34万人であった。



2. 武漢肺炎発生・拡大の経緯、中国の地方と中央政府の隠蔽、初動の遅れが拡散に拍車
COVID-19と命名されたウイルスの正体はわかっていない。これが人々を恐怖させる最大の理由である。また人→人感染することは同じだが、インフルエンザと違い、無症状感染者にも感染力があることがわかっている。一旦陰性と判断されても後で陽性になる症例もある。潜伏期間は平均5日、14日までと見られており、感染形態は接触、飛沫、エアロゾル感染と言われ、致死率は約2%でインフルエンザの約10倍、SARSより大幅に低いとされている。しかし免疫力の弱い高齢者や既往症を持った人が感染すると重症化する。
時々刻々と変化する拡散の状況は医学界で名の通った米ジョンズ・ホプキンス大学の情報サイトで見ることができる。下はこの記事を書いている2020年2月8日午後1時43分現在のデータである。
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
日本は中国に次いで2位となっている。7日から日本政府はクルーズ船内の感染者数を別枠としてカウントし、汚染国との印象を弱めている。豪州では15人の感染が確認されている。中国では検査を受けられない人も多く、実際の数字は一桁多く見るのが妥当と言われている。


発生源は当初武漢市の海鮮市場とされていたが、多くの市場訪問者が感染し、拡散したことは確かだが、感染源かどうかについては疑問視されている。
そして今 陰謀論との批判があるが、武漢にある2か所の国立バイオロジー研究機関からの流出の可能性が論じられている。2018年から運用開始した毒性の強いウイルスの研究機関で、最高レベルの安全管理基準BSL-4に準拠した施設だ。この研究所についてウイルス漏洩の警告が2017年に学者からなされている。最近では1月28日、アメリカ司法省広報室WEBサイトがハーバード大学(武漢理工大学でも勤務)の教授が中国スパイとしてウイルスの密輸で逮捕された記事を掲載、また米ブログのゼロ・ヘッジは武漢ウイルス研究所でコロナウイルスに改変を加える研究を行っていた中国人科学者を特定、その論文を公開した。注目されるのは遺伝的に改変されたコロナウイルスには自然免疫の経路に耐性がないため、世界中の誰にでも感染するというもので、今回の強い感染力を持つ新型ウイルスの姿そのものである。

SNSやメディア上にこの肺炎の情報が上がり始めたのは12月からである。中国国内で何が起こっていたのか、その経緯をここでは書かないが、初期は武漢市と湖北省による隠蔽と、新型コロナウイルス発見の情報を無視し、20日ほど北京政府が事態を放置、初動対策せずこれが蔓延につながったと言われている。ターニングポイントとなった1月20日、習近平主席が「重要指示」をやっと発布、それを境に中国内はパニックに突入した。


3. 中国からの訪問者を入国拒否する国続々、感染症対策の原則は「隔離」
1) 中国に遠慮したWHOの動きにとらわれることなくこの原則に従い素早く対応したのは北朝鮮と米国であった。隔離対象は中国そのものである。
アメリカは早いタイミングで「非常事態宣言」を出し、厳格な予防策をとった。昨年10月にニューヨークで行われたコロナウイルスのパンデミック想定シュミレーション(イベント201)の結果に基づき政府が対策マニュアルをまとめ、それに従って米国独自の隔離政策を取っていると言われている。このマニュアルは安全保障に関する情報共有グループ、Five Eyesにも回覧され、豪州含む4か国の対策は米国とほぼ同一レベルになっている。
 
2) 豪州の取り組み
モリソン首相は、2月1日最高警報レベル4を宣言した。
中国への旅行をしないよう勧告。この制限は、中国のあらゆる場所に適用される。
豪州市民または永住者の場合、彼らの身近な家族(配偶者、扶養されている子供、または法的保護者)を含め、豪州に到着した後すぐに出発地に戻らない場合、クリスマス島の検疫センターで2週間滞在させ強制検疫を受けさせる。現在希望者(湖北省には600人以上の豪州人が居住)をチャーター便で順次帰国させている。中国在外国人については中国を出国してから14日間は豪州への入国を拒否。
これらの制限は中国本土にのみ適用される。(香港とマカオは規制の対象地域から除外)
The detention centre on Christmas Island.
The detention centre on Christmas Island. AAP

3) 日本の対応 
アジアの国々が次々と厳格な予防策へと移行する中、日本は「湖北省に日本到着前14日以内に滞在した外国人と、湖北省発行の中国旅券所持者の入国を2月1日から当面禁止する」に踏み留まっている。中国の個人旅行客は続々と日本に入国しており隔離政策の大穴になっているためもっと厳格な措置を講じるべきとの批判が多い。


4. 豪州、シドニーで何が起こっているか
豪メディアを読むと都市のDeserted(砂漠化)という言葉がよく出てくる。
それは筆者が撮った写真を見れば一目瞭然である。これは2月1日のランチタイムのタウンホール付近である。普通であれば観光客や市民で混雑しているが、閑散として人影は見えない。
C:\Users\Owner\Documents\慰安婦像問題\Cheers 関連\Cheers2020年3月号記事materials\土曜昼近くのタウンホール 2020年2月1日.jpg

こちらは中華系住民が40%を占めるEastwoodの街並みである。店は閉まり、歩く人もまばら。(2月1日Dairy Telegraph記事)


下は私がよく使うHornsbyの中華系スーパーであるが、客も少なく、客とスタッフがマスクをしている。(筆者撮影)
C:\Users\Owner\Documents\慰安婦像問題\Cheers 関連\Cheers2020年3月号記事materials\EDIT マスクをして作業すルレジ係 Hornsbyの中華系スーパーで2 2020年1月30日.png C:\Users\Owner\Documents\慰安婦像問題\Cheers 関連\Cheers2020年3月号記事materials\客も従業員もマスク Hornsbyの中華系スーパーで 2020年1月30日.jpg

モリソン首相は、ブッシュファイアに続き武漢肺炎のパニックが豪州にもたらす経済的悪影響は甚大になろうが、まだその規模は計り知れないとの声明を出した。すでに観光/旅行業、水産業、小売り業を中心に深刻な打撃が報告されている。
10日過ぎから春節休暇が明け、中国では億単位の人の移動が始まり感染の様子も変わってくる。新型肺炎のピークは3月~5月と見られているが終息宣言が出るまで気を抜けない。


最後に新型ウイルス対策として個人でできる有効な対策をまとめたのでご励行を。

  1. こまめに石けんと流水での手洗いまたはアルコール消毒剤を用いた手・指の消毒。
  2. マスクを持っていない場合、咳やくしゃみをする際は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1m以上離れる。鼻汁や痰の付いたティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手のひらで咳やくしゃみを受け止めた時はすぐに手を洗う。
  3. 外出時は人ごみの多いところは避け、マスク着用を。