オンライン、オフラインの世界に散らばるさまざまな意見、解説などをまとめ、ユーザーに寄稿や議論の場を提供する総合オピニオンサイト「iRONNA」にAJCNレポートが掲載されました。http://ironna.jp/article/2938
記事は写真が入りきれいにまとめられていますが、文章だけお読みになりたい方のために下に貼り付けました。オーストラリアで実際に慰安婦像設置を推進した反日団体と対峙した経験をもとに、歴史に拘泥する韓国人の姿を「ハン(恨)タジー」と言う造語を用いて描写しています。
「ハンタジー」から覚めない韓国人 反日プロパガンダは終わらない
山岡鉄秀
それはコリアンファンタジー
昨年末の慰安婦日韓合意以降、これまで平和だった豪州ブリスベンでも「水曜デモ」が始まった。日本領事館前に十数人の韓国系住民が立ち、「20万人の女性が性奴隷にされた」と訴えるビラを配っている。そこにわれわれAJCN(Australia-Japan Community Network)の現地メンバーが近寄り、慰安婦の実態について英語で解説した小冊子を渡しながら話しかける。
「これを読んでください。事実に基づいた議論をしませんか?」
翌月、再度話しかける。「読んでくれましたか?」
韓国人が答える。「意見が違い過ぎて議論できません」
「では、20万人の根拠を教えてください」
「証言者の人数が少ないのは、恥ずかしくて人前に出られなかったからです」
「それでは答えになっていませんね。少なくとも、事実に基づいた話がしたいのですが」
答えはない。何度繰り返しても同じことだ。彼らは事実の検証など興味ないし、したくもない。事実の検証などすれば、自分たちの目的が果たせなくなってしまうからだ。彼らの真の目的は何だろうか?
ストラスフィールド市における慰安婦像設置を巡る攻防の最中、韓国系反日団体のリーダーは韓人会のホームページに高まる感情を書き綴った。
「韓国の歴史は惨めだった。常に諸外国の侵略を受けたが、我々は抗する力もなく、団結もできなかった。この惨めな歴史ゆえに、我々は敵(日本人)を降伏させ、謝罪させるために戦う。韓国の悲しい歴史は我々の世代で終わる。そして、新しい、力強い、何万年も続く歴史が始まるのだ」
「この土地にも住む、日本人に我々は二度と敗れはしない。日本軍国主義の復活を夢見る安倍晋三に連なる、反省しない日本人を粉砕し、女性の人権侵害の歴史に終止符を打つ。慰安婦として働いた20万人の哀れなうら若き女性たちの涙をぬぐい去るのだ」
お分かりいただけるだろう。韓国人はこう考えていると推察できる。
・韓国の歴史は悲惨で惨めだった
・その責任の一端は、無力で団結できなかった自分たちにもある
・日本に謝罪させることで、惨めな歴史に終止符を打ち、新たな歴史を始めることができる
このリーダーが訴えている文脈からすれば、韓国の惨めな歴史の原因は日本にだけあるわけではないことがわかるし、本人もそのことを認識している。しかし、今、鬱憤をぶつけることができ、まともに謝ってくれるのは日本だけだから、日本にだけ気持ちをぶつけているのだ。彼らの目的は、長い歴史で積もり積もった民族的な鬱憤と屈辱を日本にぶつけて晴らすことだ。慰安婦問題は朝日新聞と左翼活動家が与えてくれた絶好の口実に過ぎない。別の韓国人活動家はメディアの取材に答えて言った。「慰安婦像設置は我々にとってのヒーリングプロセスなのです」。
今年に入って、「鬼郷」という映画の試写会がアメリカで行われ、韓国では上映されて人気を博しているという。20万人の韓国人少女たちが、日本軍に拉致され、凌辱されたあげく、虐殺されたという荒唐無稽な映画だ。朝鮮日報(2月5日)によるとチョ・ジェンレ監督は「少女たちは異郷で寂しく死んでしまった。映画ででも故郷に連れて行ってあげたいという思いが強かった」「ユダヤ人虐殺のような犯罪の話として見て欲しい」と語ったという。
日本人なら、事実の検証もせずに、自国の少女が外国の軍隊に20万人も拉致され、凌辱されたあげくに虐殺された映画をつくって、ホロコーストに見立てて感慨にふけるという行為は思いも付かない。この監督と反日団体リーダー、そしてブリスベンのデモ参加者のメンタリティには明確な共通点がある。
・事実の検証には興味がない
・自国の悲劇の歴史は大げさに言いふらす方がよい
反日団体リーダーが自ら語るように、韓国の歴史は常に外国勢力の支配下に置かれた惨めなものだった。今、「被害者の立場」であるからこそ、彼らは初めて世界の表舞台に立てる。そして、「正義を手にした被害者」として日本に対して圧倒的に優位な立場に立てる。被害者であればこそ、歴史上一度も手にしたことがないパワーが手に入るのだ。だから、被害者の数は多ければ多いほどいいし、極限までに悲惨であることが望ましい。そして、それをナチによるユダヤ人ホロコーストのように、誰も疑義を挟めない歴史的事実にまで昇華させてしまえば、永遠に強い立場を保持できる。それによってやっと民族のプライドが取り戻せると考えるのだ。
これはもう、民族的ファンタジーの世界である。よく、「韓国文化は恨(はん)の文化」というが、まさに、「ハン(恨)タジー」の世界と呼べるだろう。今やこの「ハンタジー」が民族の存立基盤なのだから、異議を唱えるものは何人といえども許されない。その一例が、「帝国の慰安婦」の中で、「自発的な売春婦」「日本軍との同志的関係」と記述した朴裕河(パク・ユハ)世宗大教授の在宅起訴だ。同胞である韓国人学者の実証主義的研究をも弾圧するのである。事実の検証に基づいた議論などするわけがない。事実ではないと知りながらも、「ハンタジー」を死守し、言論弾圧も辞さない。なんと悲しい屈折したメンタリティであろうか。惨めな歴史は続いているのだ。
さて、事実から目を背け、まともな証拠を持たない彼らにとって、今最高の証拠がある。それは元慰安婦達の曖昧な証言ではない。それは日本政府の謝罪だ。日本政府が謝罪したのだから、自分たちが立証する責任はない、というロジックを振りかざせる。反日議員のマイク・ホンダも同じことを言った。諸外国の政府もメディアもそう解釈した。だから、日韓合意直後に海外メディアは「日本政府が性奴隷を認めて謝罪した」と怒涛のように書きなぐったのだ。そして、日本が謝罪すればするほど、韓国人は自信を持つ。自らの反日活動にお墨付がもらえ、絶対的正義の側に立てるからだ。さらに彼らは謝罪を求めながらも、安易に謝る人間を侮蔑する。それゆえ、「自らの過ちを認めた日本人よ、永遠に土下座して謝罪せよ」とますます反日が過激になる。これが、日本が謝れば謝るほど事態が悪化する理由だ。いい加減に学んでほしい。その上、国庫から金まで出せば、どういう解釈をされるかは自明の理というものだ。
朴大統領を応援するために10億円払う?
ところが、日本はさっさと韓国に10億円を払ってしまった方がよいと主張する有識者、特に外務省出身者の方々がおられる。その論旨をまとめればこうなる。
「慰安婦問題をここまでこじらせたのは(北朝鮮との繋がりがある)挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)である。挺対協さえ押さえられれば、韓国国内の反日はある程度抑えることができる。そして今、朴大統領が先頭に立って挺対協と世論を説得しようとしている。これはかつてなかったことである。ここで日本が大使館前に立つ慰安婦像の撤去にこだわって合意が潰れれば、挺対協の思う壺だ。ここは静かに朴大統領を応援すべく、速やかに10億円を払ってしまうのが賢明な判断だ」
僭越ながら異論を申し述べる。
風雲急を告げる朝鮮半島情勢で、米国から「日本との喧嘩をやめて安全保障に協力せよ」と強力な圧力をかけられた韓国政府に逆らうチョイスはないから、朴大統領も米国の意向に沿うポーズを取らざるを得ない。しかし、韓国経済が悪化の一途を辿る中、国内で無為無策と批判されている朴大統領を応援したところで、朴大統領が反日団体や世論を説得しきれる保証は全くない。挺対協さえ抑えればなんとかなるという見立ては甘すぎる。挺対協は明確な政治的意図を持った団体だが、「ハンタジー」は韓国国民に幅広く共有されているものだからだ。高さ6メートルの巨人慰安婦の登場には心底呆れたが、案の定、韓国の学者やメディアから「慰安婦問題がなくなったら困る」と言わんばかりの不満が次々と表明されている。
さらに、韓国外交部は1月20日、一般国民向けに「慰安婦日韓合意Q&A」をウェブサイトで公表している。そこには次のことが明記されている。
・不可逆性とは政府レベルに限ったことで、民間の活動は制約されない
・研究および教育などを通じ未来世代に慰安婦問題の真実を知らせ、再発を防止しようとする努力は最終的、不可逆的とは無関係であり、韓国政府は今後このような努力を継続し、記念館設立も推進していく
・不可逆的という表現は日本が今後、合意を覆したり逆行する言動をしてはならないという意味を内包している。すなわち、日本の反論は許さない
これは要するに、政府として表立って抗議するのは控えても、日本の反論は許さない一方で反日教育は継続し、民間の反日活動には関与しない、と言っているのである。世界中で展開される反日活動の背後に韓国政府がいることは明らかだ。ストラスフィールドで慰安婦像建設を阻止された後、反日団体のスポークスパーソンはメディアの取材に対し「残念な結果だが、次回は韓国政府のさらなる支援を取り付けていく」と答えている。この悪しき構図は今後も変わらないということだ。韓国政府はすでに合意を骨抜きにする布石を打っている。
そして3月1日、釜山の日本領事館前に新しい慰安婦像が建てられ、除幕式が行われた。外務省OBは「(ソウル大使館前の慰安婦像の)撤去は合意が履行され、慰安婦問題が解決したと韓国国民に納得させてから説得してもらう以外ないであろう」と主張していたが、釜山の日本大使館前にこのタイミングで新たな慰安婦像が設置されたことをどう説明するのか?韓国政府は「民間がやることに政府は干渉できない」と繰り返すばかりだが、10億円払えばこの国際法違反の建造物を何とかしてくれるのだろうか?それとも、これも「いたしかたない」のだろうか?
総合的に考えて、たとえ10億円払ったところで、「一時的に韓国政府に(表面的な)自己抑制の理由を与え、米国の歓心を買う」ことぐらいの意味しか持たないだろう。韓国政府は「慰安婦白書」の外国語への翻訳を止めることぐらいはするかもしれないが、大使館前の慰安婦像は残るどころか新設され、民間レベルの反日活動はより過激になるのも野放しのままで、未来の反日活動に繋がる反日教育は継続され、記念館などを利用した反日プロパガンダは続く。そうであれば、合意が反故にされるのは時間の問題だ。その一方で、国際社会においては、「日本軍は組織的にアジアの少女を拉致、強姦、虐殺した犯罪者集団」という認識が決定的に定着してしまった。このことが反日団体をさらに動機付け、中国共産党が戦略的に付け込む隙を与えている。
杉山発言から始まった長い道のり
去る2月16日、国連女子差別撤廃委員会における杉山外務審議官の反論は、一応評価できるものではあった。しかし、一般に報じられていないが、その後のフォローアップ質問で、「もし、慰安婦の問題が無いのであれば、なぜ韓国との間に合意を形成する必要があったのか?」とゾウ委員に問われた時の杉山審議官の回答は、満足のいくものではなかった。日本政府は21世紀に入って15年も経つ今になっても、「謝罪して金を払う」という行為が国際社会でどういう意味を持つか理解できていない。だから相手を納得させる説明ができるわけがない。国際社会ではただの自己矛盾と捉えられる。杉山発言は海外メディアには完全に無視された。
もっとも、外務省は当初、「日韓政府間で不可逆的に解決するという合意がなされました」という簡単な答弁だけ用意していたという。官邸のリーダーシップが無かったら、完全なゲームオーバーになるところだった。外務省は「まともに反論したら、日本側から合意を破棄したと解釈されることを恐れた」そうだが、そもそも本当のことを言ったら破たんするような合意をすべきではない。日本政府はゾウ委員の質問にまっすぐ答えられなくてはならない。それは、日本政府は何について謝罪し、何について謝罪していないか、その上でなぜ合意が必要だったかをより明確に論理的に説明することだ。まずは外務省のホームページで始める。そしてその英語は外務省任せにするのではなく、官邸が責任を持って吟味すべきだ。それができないようでは日本は国家の体をなしていない。
慰安婦問題が解決するとき
自民党の稲田朋美政調会長が2月18日、ラジオ番組で、「ソウル大使館前の慰安婦像が撤去されないかぎり、10億円を払うべきではない」という考えを明言した。多くの日本国民がそう感じているだろう。日本政府は「大使館前の慰安婦像は違法建築物であり、明確なウイーン条約違反なのだから、合意に含まれているかどうかに拘わらず、撤去されるのが当然だ」というメッセージを全世界に向けて発するべきだ。その上で、こちらからは合意を破棄するそぶりは一切みせずに様子を見る。「ハンタジー」の圧力に負けて韓国側から破棄することになれば、国際社会の批判は韓国に向かい、韓国が恥をかく。店晒しのまま有名無実化しても構わない。すでに韓国は安全保障上、日米に協力せざるを得ないのだ。
もう一度言う。彼らは真実の探求になど興味はなく、和解など求めていない。むしろ、慰安婦問題が無くなってしまったら困ると思っている。釜山の日本大使館前に新設された慰安婦像がそれを証明している。したがって、慰安婦問題が解決するとき、それは、韓国が「この問題で日本を叩いても、もう通用しない、逆にブーメランで自分たちがダメージを被る」と悟るときだ。その時になって韓国はやっと「ハンタジー」の夢から覚め始める。そして、朴裕河教授ら、まともな学者の学術的な研究が真っ当な評価を受けるようになったとき、はじめて慰安婦問題が解決する兆しが見えるだろう。
ゆめゆめ謝罪や金で解決できると思ってはいけない。その時が来るまで、日本政府は事実ベースの反論を毅然として続けなくてはならない。杉山発言は20年遅れのはじめの一歩に過ぎない。これは女性の人権という美名に隠れた悪意との情報戦争だ。10億円払っても何も解決しない。この問題を解決するのは我々日本人の確固たる意志に基づく官民一体のブレない努力だけだ。道は果てしなく遠いが、進まなくてはならない。2016年をその第一歩の年にすべきだ。
追記
この記事が書かれた後の3月7日、国連女子差別撤廃委員会は、日本に対して慰安婦問題を含む最終見解を発表した。「強制性」「性奴隷」などの表現こそ使われなかったが、慰安婦問題を「第二次大戦中に締約国(日本)の軍隊により遂行された深刻な人権侵害であり被害者に影響を与え続けている」と表現し、昨年末の日韓合意を「被害者を中心に据えたアプローチを採用していない」と批判した上で、元慰安婦への金銭賠償や公式謝罪を含む「完全かつ効果的な賠償」を行うよう勧告した。
杉山審議官の説明が完全に無視された内容で、日韓合意すら全く評価されない現実を再認識させた。また、過去長期にわたって反論もせず、ひたすら「すでに謝罪した」と逃げ回った不作為が状況を回復不可能なほどに悪化させたことも証明された。これからは方針を180度転換して歩みださなくてはならない。杉山発言ははじめの一歩だ。