宗教家・人道活動家の仮面の下に隠れた優越意識と攻撃性

Cheers 2019年11月号記事

AJCN事務局長 江川純世

今月号ではAJCNの5年半の活動の中で出会った宗教人、人権活動家たちの心の奥底に潜むものが何かを見つめてみたい。

なぜ教会は反日活動グループに占拠されたか。

デモ風景(筆者撮影)
2016年11月の水曜デモ以来、なりを潜めていた反日グループがまた活動を再開した。
2015年ストラスフィールド市の公共用地に慰安婦像を設置することに失敗した反日中韓団体KACA (The Committee of United Austral Korean-Chinese Alliance against Japanese War Crimes) の意思を引き継ぎ、2016年8月6日にシドニー郊外アッシュフィールドにあるユナイティング・チャーチ教会裏の駐車場に慰安婦像を持ち込んだ反日韓国人グループFCWS(Friends of “Comfort Women” in Sydney)またはSYSOCHU(シドニー平和の少女像建設推進委員会)(二つのグループのメンバーは同一)が8月14日、シドニー日本総領事館前でデモを行った。
FCWSは“日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯”(旧挺対協:“韓国挺身隊問題対策協議会”)のユン・ミヒャン代表の影響下にあり、韓国で国定記念日として制定され今年2回目を迎える8月14日「慰安婦の日」(韓国語でキリム日)に、第1400回水曜デモおよび第7回世界日本軍「慰安婦」の日・世界連帯集会と銘打ってデモを実施した。日韓関係は過去最悪という状況にあり、ムン・ジェイン政権官製の不買運動を中心とした反日運動が韓国で展開されているが、ここ豪州でも8月14日のムン・ジェイン大統領の「慰安婦問題を国際社会と共有し拡散していく」というFBのメッセージと同期して反日活動が展開されたことになる。
今回の水曜デモの特徴は、左翼政党「緑の党」の現職NSW州議会議員や社会主義者グループのメンバーをゲストスピーカーに招いたことで、「NO 安倍!」(韓国本土の反日運動に使用されているものと同じ)、「法律的な賠償を」という二つのプラカードを掲げ、「慰安婦に謝れ:Apology to “Comfort Women”」と叫んで気勢を上げた。

デモ風景(筆者撮影)

14日の反日デモと10日の反日映画上映会のイベント情報をFCWSのサイト
http://www.sysochu.com/ を検索しているうち驚くべきことに気がついた。なんとFCWSの連絡先がユナイティング・チャーチ教会になっている。連絡先を知るためにHomeページ右上の3本のバーをクリックすると教会の住所が出てきた!
Contact: Ashfield Uniting Church
180 Liverpool Road, Ashfield NSW 2131


それならばと今度は教会のFBサイトをチェックするとこれまた驚くべき状況になっていた。アッシュフィールドの教会のFBは慰安婦関連情報であふれかえり、教会は反日韓国人たちに乗っ取られたかのようである。
Facebook site of Ashfield Parish Uniting Church
https://www.facebook.com/pages/Ashfield-Parish-Uniting-Church/166826243703454


FB記事の一部



ビル・クルーズ牧師との遭遇
ビル牧師を初めて見たのは反日韓国人グループが2016年4月に公開したYoutube動画の中でであった。そこで彼は「ストラスフィールド市議会が慰安婦像を却下したことに激高したので、慰安婦像を建てて加害者に謝罪させる」と穏やかながら宗教家とは思えないほど攻撃的な言葉“Perpetrators”(加害者)という言葉を使った。


AJCNが2016年12月人権委員会へ苦情を申し立てたとき、彼はメディアに「さあかかってこい!像の設置場所を変えるとすれば、今より目立つところに置いてやるだけだ」とAJCNを挑発した。ストラスフィールド市民の70%以上が市の調査で慰安婦像に反対した事実に敬意を払わず、コミュニティーの分裂、いじめ、差別、韓国人の違法売春などの目の前にある問題を無視、ユナイティング・チャーチの信者を始め、周りの多くの人々が示す懸念についても聞く耳を持たなかった。ユナイティング・チャーチは2013年に聖職者による性的暴力の被害者に200万ドルの賠償金を払っているが、自分たちの過去はすっかり棚に上げてしまっているようである。
ビル牧師は2018年3月7日から9日までソウルで開かれた「日本軍『慰安婦』問題解決のためのアジア連帯会議」に出席し、席上「日本政府は問題解決を長引かせて恥をかくよりも、今すぐ謝罪したほうがよい」と話した。8日聯合ニュースのインタビューに答えたビル牧師は「日本軍による慰安婦問題は日本人の責任によるものではなく、日本政府の責任問題だ。この件に反対する立場のシドニーの日本人団体にも教会のスペースを提供する。」と述べた。早速AJCNは教会上位者を通じて、スペースをもらいたいと申し入れたが、彼はこれを無視した。
(ABCニュース2016年8月)

彼は2016年8月6日の韓人会館脇での慰安婦像披露イベントに挺対協(当時)代表ユン・ミヒャン氏と参加しスピーチを行った。
              
ユン・ミヒャン氏
(筆者の友人のツイッターから)



豪州、アメリカにおける教会の役割と現状
イギリスの植民地として歴史上に姿を現した豪州は、当初軽犯罪で捕まった犯罪者の流刑地としてスタートした。犯罪者とともにそれを監視・管理する役人、彼らの家族や新天地を求めて移住してきた人々によってコミュニティーが形成されてきた。国家としての仕組みが整うまで、彼らの信仰(主にキリスト教)の教会は物理的にも精神的にもコミュニティーの中心に据えられた。そこは交流の場であり、貧しい人たちが駆け込むシェルターの役割も担っていた。これはアメリカの植民地化のシンボルであるメイフラワー号に乗った人々が開拓したアメリカでも同様であった。行政システムが整えられながら、教会の役割は少しづつ教会の手から離れた。ビル牧師が主宰するアッシュフィールドのユナイティング・チャーチの場合はどうであろうか。彼は同じ敷地内にある慈善団体エグゾダス・ファウンデーション(Exodus Foundation)の代表でもある。ここの売りは食堂での毎日の昼の炊き出しとウールムルーのユーロン・パークウエーでの無料夕食の配布である。夕食はフード・バンで運ばれている。このほかシェルター、医者によるケアーなども提供しているが、ある識者によれば行政の福利厚生システムの整備を阻害しているという意見もある。

教会内Loaves and Fishes Restaurantでの炊き出しランチを待つ行列(筆者撮影)

夕食を届けるバン(筆者撮影)















ビル牧師はもともと電気技術者であったが、宗教界に入り人権活動家として認められるようになった。2006年彼は、ソーシャルプログラムにおける世界クラスのリーダーシップと革新性が認められ、アーンスト&ヤング ソーシャルアントレプレナーオブザイヤー賞を受賞した。会計会社であるアーンスト&ヤングの賞をどうして受章できたのか。このチャリティ団体のオペレーションの仕組みを知ると自然とわかる。
まず資金の調達はすべて寄付、オペレーションにかかわるほとんどの人はボランティアである。寄付、ボランティアー・ワークは免税の対象である。寄付者もかかわる人材派遣会社も、食材を提供する大手スーパーも免税を使える。食堂で出す食事の食材はトラックが回って、大手スーパーから賞味期限の切れかかった食材をピックアップして毎日炊き出しを行っているのであろう。スーパーも損失処理または寄付で会計処理すればよいわけだ。

ここで笑い話を一つ。私は定期的にビル牧師の教会を訪問している。ある日昼時にあたり、ベンチに座って休んでいると、一人の若いバック・パッカーが皿にランチを盛ってやってきた。隣に座ってよいかと聞かれたのでOKというと、彼は話し始めた。「自分は金がなくなり腹がすくとここに来て飯を食う。君は食べないのか?結構いけるよ。」私が「いいよ」というと彼は肉だけを食べた後、野菜が残った皿を近くのごみ箱に捨てた。ゴミ箱には残飯が残った皿が山のように捨てられていた。食堂の入り口の前で並ぶ人たちの服装は身ぎれいで、日本のホームレスとは全く違う。これが私の知人の言った福利・厚生システムを手放さず売名行為を行っているという批判につながっている。行政では貧困層に対する各種の補助を手厚く行っている。
隅田川のほとりで暮らすホームレス。(写真:週刊女性PRIME 2018/10/28)

豪州の教会は白人の信徒が減り、多くの教会が閉鎖される光景は珍しくなくなっている。そこに韓国人のキリスト教徒が入り込み、韓国教会の様相になっていると、豪州の宗教家から聞いたことがある。教会は互助会のような場となり、親睦行事が盛んで金の貸し借りが横行しているとのことであった。韓国のキリスト教界ではプロテスタントが優勢で、慰安婦像を受け入れたユナイティング・チャーチもプロテスタント教会である。ビル牧師は、日本政府の要請で斡旋に乗り出したNSW州マルチ・カルチャラル大臣からのAJCNとの面談要請に対し、大臣秘書に「自分の教会は韓国人の信徒が多いので、彼らの許諾なしには会えない」と昂然と要請を拒否したそうである。

AJCNは2016年8月にユナイティング・チャーチ・オーストラリアの400余のブランチに対し、アンケートを実施した。内容はアッシュフィールド教会に慰安婦像が設置されたが、もしあなたの教会に慰安婦像を置かせてもらいたいとの申し入れがあった場合、それを受け入れるかどうかというもので慰安婦問題に関する説明も添付した。回答の多くはごく常識的な、「断る」というものであったが、韓国系の牧師からは受け入れるとの回答も送られてきた。その典型を紹介する。

「このアンケートを私たちの教会に送ってくれてありがとう。
正直に言うと、このメールは、歴史上の慰安婦像の背景を説明していないし、反日活動家がこれらの行動をとる理由をあなたのグループが理解する努力をしていないので、私は当惑しています。歴史的背景なしでこのメールを送信すると、人々の慰安婦像についての真実についての理解を歪めることになります。
さらに、「反」という用語は単に分裂を誘発するだけであり、彼らは単に日本を嫌っているだけ、日本はそれに無関係というように聞こえますので、彼らを「反日活動」と呼ばないでください。このグループの人たちは、第二次世界大戦中、日本軍を性的に慰めるために戦場に送られた女性の犠牲を思い出そうとしているのです。そして、日本政府は、国民たちの姉妹や母親達が、軍事的抑圧の下で絶望的に無力に送られなければならなかったその国に謝罪しませんでした。像を設置した人々のグループは、人々に歴史を忘れさせたくないと思っているのです。あなたが述べたようにコミュニティーの調和に本当に取り組んでいるのなら、正しい情報と知識が人々に提供されるようにしてください。そうすれば、彼らは活動家を誤解したり歴史を歪めたりしません。歴史から学ばなければ、国には未来はありません。「慰安婦像」を設置する人々のグループを強く支持することに後悔はありません。私の教会が私の意見を支持することも強く信じています。」
J.K 
 Secretary of  “C” Korean Uniting Church.
On behalf of minister of “C” Korean Uniting Church

これは今の韓国政府、韓国人の多くが言っている主張そのものである。


反日運動の広告塔としての牧師、人権活動家 (8月10日のFCWS主催のイベント)
ビル牧師は人権活動家として高名で、2GBというラジオ放送にも枠を持っている。一貫して慰安婦像問題で反日グループを支援、彼らのプロパガンダ・ツールとなっている。
8月14日のデモに先立ちシドニーのシティにあるシドニー韓国文化センターでFCWS主催のプロパガンダ映画上映会が開催され、約130人が参加した。「Apology(謝罪)」と「Daily Bread (日々の糧)」の二本の映画とともに慰安婦者写真展も併設された。
このイベントには初めて韓国政府機関、シドニー韓国総領事が参加した。韓国政府がこのイベントを公式に支援したことは、豪州における慰安婦をめぐる反日運動が今までとは異なるステージに入ったことを意味する。

スピーチする在シドニーの韓国総領事館総領事サンウー・ホン氏。慰安婦問題は日本と韓国のバイ・ラテラルな問題だけではなく女性に対する性暴力の問題であると述べた。この種の集会で総領事が正式なスピーチをしたのは、ムン・ジェイン大統領の慰安婦問題を世界中に拡散していくという意思の表れであろう。
(FCWSのFBサイト)
そしてこのイベントにもビル牧師は参加し慰安婦像を守っていくとのスピーチを行なった。
スピーチするビル牧師 (FCWSのFBサイト)


私の体験したエピソード
エピソード1
私の友人に宗教心が厚く、周りからも教養があり知的で優しいと慕われていた女性がいた。彼女はカウンセリングを勉強し、セラピストとしてたくさんの他人(ひと)の悩み相談を受けてきた。本人によれば、彼女の仕事は中立的な立場で話を聞き、どのようにしたらその人の心が楽になるかを考えてアドバイスすることであった。ある女性が彼女にあることをしたいのだが、どうすべきかと相談した。彼女は、自分の判断・考えを言わずに、別の人間に相談してみてはと振ったが、その女性は相談した別の人間の誤った判断、行動によって周りの人間の信頼を失うことになった。私はセラピストと称する女性に、あの時あなたが、別の人に相談するよう振らなければ、彼女はそんな目に合わなかったのではと話したが、彼女は「私が止めたとしても、相談に来た女性は結果的に同じことをしたと思うわ」と言い訳をした。そこで私は人が間違いを犯さないように善導するのもカウンセラーの役割の一つではないかと返した。その後彼女は周囲に向かって私に対する個人攻撃を猛烈な勢いで始めた。私は見てはいけない彼女の心の底にあるものに触ってしまったのかもしれない。

エピソード2
男女二人の宗教家が、寄付を求めるとともに入信を勧誘するため我が家を訪ねてきたことがある。盛んに自分たちの信仰する宗教が最も良いことを説明した後、「戦争がなぜ起こるのか?私たちの宗教の信者になれば戦争はおきないのだ。」と言った。
そこで私は「あなたが一番、私が二番」と言えば戦争は起きないものを、「私が一番、あなたが二番」と主張するから戦争になるのではと返したところ、二人は黙ってしまった。英国の戦略家リデル・ハートは、「多くの人権活動家、平和主義者の心の中に激しい好戦的要素をしばしば見て驚かされる」と述べている。

以上