クイーンズランド大学で中華系学生グループ同士が衝突、その裏に何が?

Cheers 2019年9月号記事

                         
AJCN 事務局長 江川純世

7月24日名門クイーンズランド大学の校内で、港出の留学と中国本の留学が、港問題をめぐって衝突したとの報道が流れた。今月号ではこの事件の裏側について解説する。


1.クイーンズランド大学のキャンパスで何が起こったか?
、「逃亡犯条例」改正案の完全撤廃を求める港市への持活動として、留学約50名やウイグル留学と100人以上の地元出⾝の学⽣が、キャンパス内で集会を⾏った。しかし、この集会を妨害するため、約200⼈の中国⼈留学⽣が、スピーカーで中国国歌を⻫唱し、中国共産党⽀持のスローガンを叫んだ。⼀部の中国⼈留学⽣は、集会に⼊り込み、⾹港⼈留学⽣が掲げるプラカードを破壊した。大学側は「大学の役割の1つは、オープンで、敬意を払った、法に従った言論の自由を確保することで、これには、全員が支持または同意できないアイデアについての議論も含まれる」との声明を出した。大学は、「スタッフと学生が合法的かつ敬意を払った方法で彼らの見解を表明することを期待しているが、今日の早い時期に、大学はキャンパスでの抗議行動から生じる安全上の懸念に応えて、警察の支援を求めた。」と述べ、通報を受けた地元警察が現場に駆け付け、反対派に移動するよう指示をした。警察当局が留学⽣らを逮捕したかは不明だ。

Pro-China and pro-Hong Kong students clash at University of Queensland

Protesters clash at the University of Queensland over Hong Kong’s controversial extradition law.


2.中国共産党の傭兵として、母国からコントロールされる中華系住民
今回のクイーンズランド大学での中華系グループの衝突に似た騒動は過去にも経験されている。中国の豪州侵略の実態を暴いたSilent Invasionの著者、Clive Hamilton博士はこの本を書いた動機をこう語っている。2008年首都キャンベラで行われた北京オリンピック聖火リレーに、何千人という中国人、主に留学生が集合し、暴力的で異様な攻撃的高揚感に包まれながら、チベットの開放を訴えるグループに襲いかかり、暴力的に蹴散らしたところに居合わせたが、現地の警察は無力だった。この光景に衝撃を受けたことがきっかけであったと前書きで書いている。ハミルトン教授は、民主主義国家オーストラリアの首都で、言論の自由が特定の集団の暴力的な示威行動によってあっさり否定された現実に大きな衝撃を受けた。そしてこの時、同じことが日本でも起こっていたのだ。長野聖火リレー事件である。4月26日、聖火リレーが行われる沿道を4,000人以上とされる中国人が埋め尽くした。警備担当の警察は在日中国人留学生組織「学友会」が約2,000人の留学生を長野市に動員するとの情報を得て警備計画を練っていたが、想定を超えた人数が大型、マイクロバスを使って組織的に動員された。彼らは巨大な五星紅旗を振りながら、チベットを支援するグループ、東トルキスタン(新疆ウィグル)支援グループなどに暴力行為を加えた。「聖火を守る」ことを任務としていた警察官は中国人留学生の行為を黙認し、独立希望地域支援者が警察官に抗議する事態も発生した。その異様な光景に日本人は大きなショックを受けた。

長野オリンピック聖火リレーの時の写真、ここは長野県内である。
チベット支援の活動家は中国人からリンチに合う。

中国共産党の海外に住む中国人を操る武器は2つの法律である。

一つは「国防動員法」(2010年7月1日施行)
本法令は中国国内有事に全国人民代表大会常務委員会の決定のもと動員令を発動するもので内実は対外戦争用の法律である。対象者は18歳~60歳の男性、18歳~55歳の女性で、中国国外に住む中国人も対象となる。国務院、中央軍事委員会が動員工作を指導。この法律によって在外中国人のうち成人中国人はすべて軍属、戦闘員という位置づけとなる。

もう一は国家情報法」
国家の安全強化のため、国内外の「情報工作活動」に法的根拠を与えるこの法律は
2017年6月28日施行された。国家主権の維持や領土保全などのため、国内外の組織や個人などを対象に情報収集を強いるのが狙いとされている。習近平指導部は反スパイ法やインターネット安全法などを次々に制定し、「法治」の名の下で統制を強めている。国家情報法は工作員に条件付きで「立ち入り制限区域や場所」に入ることなどを認めたほか、組織や市民にも「必要な協力」を義務付けている。そのため海外で働いたり学んでいる中国人に対し、現地の法よりもこの国家情報法を優先させ、外国での非合法な情報収集と中国政府に対する情報提供を義務付ける根拠を与えている。海外在住の中華系住民は、母国に親や親族を持つケースがほとんどなので、「国防動員法」「国家情報法」に従わない場合、人質ともいえる縁者に害が及ぶことを恐れて中国政府に協力することになる。中国人留学生は、大学ごとに組織化され、中国にとって都合の悪い発言や行動をする人を中国総領事館に密告し、監視するスパイ網が構築されていることが豪州保安当局によって指摘されている。
この中国の海外侵略に移住した自国民を使う手法は「Kyte戦略」と呼ばれている。中国人をKyte(凧)に見立てて、彼らを操る糸がこの二つの法律である。
ASIO warns vice chancellors over Chinese spies on campus



3.中国のプロパガンダ機関孔子学院とは?

騒擾が起こった24日の翌日25日、クイーンズランド⼤学が、在ブリスベン中国総領事を、同校の語学・⽂化学部の客員教授に招聘したことに世論の注⽬が集まった。
AFPによれば、豪州メディア「シドニー・モーニング・ヘラルド」は、孔⼦学院の設⽴や中国語教育をめぐって、中国の政府機関 Hanban( Office of Chinese Language Council International、Confucius Institute Headquarters):「国家漢語国際推広領導小組弁公室(「漢弁」)」と業務提携した11校の⼤学から、その契約書を⼊⼿した。契約書の内容を⾒ると、各⼤学はそれぞれ中国側の要求に譲歩したことが浮き彫りになった。中国側は⾒返りに、各⼤学に資⾦援助や 3,000冊の中国語教材の提供などを約束した。 11校のうち、クイーンズランド⼤学、ラ・トローブ⼤学、グリフィス⼤学、チャールズ・ダーウィン⼤学の4校が⾏った譲歩が最も⼤きいという。この4校が合意した契約の中には、各校が「Hanbanによる『教育の質』に関する審査を受けなければならない」との規定が記されている。豪政府は、中国当局が運営する中国語教育機関「孔⼦学院」をキャンパス内に設置している同国の⼤学13校を調査していることが明らかにした。
孔⼦学院は中国当局の統⼀戦線戦略部⾨の出先機関とみられ、中国当局が孔⼦学院を通じて、共産党のイデオロギーを世界各国の教育現場に輸出しているとされている。 
関連記事:Confucius Institute Chinese language and culture teachers must 'love the motherland' to apply
26⽇付AFPによると、クリスチャン・ポーター司法⻑官は、豪政府は現在、13校の⼤学が孔⼦学院と結んだ契約内容が「外国⼲渉防⽌法」に違反していないかを調査していることを明らかにした。同⻑官は「外国代理⼈に関わる法令順守の透明化を図るために、私は各部⾨に対して、各⼤学と孔⼦学院との間で交わしたすべての契約書を精査するよう指⽰した」と述べた。 豪州では昨年、中国当局による政治・経済への影響⼒拡⼤に対する危機感から、外国⼲渉防⽌法と外国の代理⼈に登録を義務付ける法案が可決された。豪州にある孔⼦学院は外国代理⼈としての登録を拒否している。
米国ではトランプ政権が成立させた2019会計年度(18年10月~19年9月)の国防権限法(NDAA)に、教育機関に設置された中国政府の対外宣伝機構・孔子学院へ資金が流れるのを食い止める条項が盛り込まれている。孔子学院の活動を制限する初めての措置だ。テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)は2018年8月、国防権限法改正案を追加し、孔子学院を設置する大学への資金援助を制限し、指導内容や契約情報などの記録を提供するよう求めた。トランプ大統領は13日、この改正案に署名した。これにより、米国の教育機関がもつ外国語教育プログラムの予算が、孔子学院に流れることを国防総省が阻止できることになった。孔子学院はスパイ活動などの違法行為が疑われるとして、連邦捜査局(FBI)の捜査対象となっている。米国ではその後、孔子学院の閉鎖が相次いでいる。上院議員の調査委員会Committee on Homeland Security and Governmental Affairsは米国の教育に対する中国の脅威をまとめた詳細レポートCHINA’S IMPACT ON THE U.S. EDUCATION SYSTEMを2019年2月27日に発表した。
一方、豪州には下記13の大学に孔子学院が設置されているがこの他、Confucius Institute at New South Wales Department of Education があり、NSW州への中国政府の食い込みが特筆される。
Queensland University of Technology、Griffith University、University of Queensland、University of New South Wales、University of Newcastle、University of Sydney、Charles Darwin University、University of Adelaide、La Trobe University、RMIT、University of Melbourne、Victoria University、University of Western Australia

このほかAspendale Gardens Primary School(Melbourn)Penleigh and Essendon Grammar School(Melbourn)、Bendigo Senior Secondary College(Bendigo)、Mount Clear College(Ballarat)、Sydney Jacaranda Confucius Classroom(Sydney)、Scotch Oakburn College(Lounceston)の6つの学校に孔子学級が設けられている。
NSW州の教育省によれば、Chatswood Public and high schools を筆頭に13の孔子学級がある。保護者たちは完全な共産主義の教義で教化をされることはないだろうが、台湾や天安門広場の大虐殺のような物議をかもす話題について触れられることはないだろうと語り、同校のカリキュラムへの懸念を示している。
Parents worried about Confucius Classrooms program in north shore public schools
Dragon dancing at a Confucius Day celebration.
Dragon dancing at a Confucius Day celebration.(The Daily Telegraph)

豪州の保
安当局によれば、中国政府のNSW州教育省への食い込みは時間と金をかけて行われており、米国のような対処をするにはまだ時間がかかると述べている。
昨年引退したChatswood high schoolsの校長、Tim Dotts氏の校長室の写真を見ると中国からのギフトで埋め尽くされており、中国との関係の深さが類推される。
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Chatswood Public School principal Tim Dodds has been named in The Educator's 2016 Hot List of the top 40 most oustanding educators in Australia.(The Daily Telegraph)



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