これでもあなたは韓国政府の主張を信じますか? レーダー照射事件に見る韓国自壊の予兆


最近の韓国の挑発ぶりは激しさを増していますが、昨年12月に起こった自衛隊機に対する火器管制レーダー調査事件についてまとめ、韓国国内ばかりではなく海外に住む韓国人の方々にも考えてもらう材料として提供しました。(Cheers 2019年2月号に掲載)


AJCN事務局長 江川純世

日韓関係は昨年後半に次々と起こった出来事により底なしに冷え込んでいる。日本政府が2013年に策定した「2018年防衛大綱」は2018年12月に5年ぶりに見直された。その中で安全保障協力の推進対象国を順番に並べ、韓国を米国、オーストラリア、インド、東南アジア諸国の後5番目に記した。韓国が米国の次に挙げられていた2010年と2013年の防衛大綱と比較すると、安全保障協力パートナーとして韓国の重要性を3段階落としたわけだ。10月の済州島における国際観艦式からの日章旗排除/海上自衛隊不参加、同月30日から続く新日鉄住金ほかに対する韓国大法院の国際法違反ともいえるいわゆる“徴用工”裁判の賠償命令、11月の日韓慰安婦合意の実質的破棄(和解・癒し財団の解散手続き開始)、同月に発覚、炎上した「BTS(防弾少年団)」の原爆Tシャツ着用問題、そして年末に起こった韓国軍艦によるP1海上自衛隊哨戒機に対する火器管制レーダーの照射事件と、両国政府間の対立と国民感情のわだかまりは極限にまで達しているように見える。これらの中で、実際に何が起こったかを客観的に観察することで、その本質をつかめるいわゆる「レーダー照射事件」を取り上げる。そこから今の文政権の迷走とも見えるが確固たる方針を見て取ることができる。





1.「レーダー照射事件」の経緯

  • 12月20日 午後能登半島沖において海上自衛隊所属P-1哨戒機が韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」(クァンゲト・デワン)から数分間、複数回に渡り火器管制レーダーを照射された。現場は日本の排他的経済水域(EEZ)内で、竹島からは離れている。防衛省は照射を受けた後、韓国側に無線で意図を問い合わせたが応答はなかった。
  • 12月21日  岩屋毅防衛大臣が記者会見を開き事件の内容を明らかにした。記者団に「韓国側の意図ははっきりと分からない」としつつ、「極めて危険な行為だ」と批判した。
  • 12月22日 防衛省は本事案について、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断し、広範囲の捜索に適するものではなく、このレーダーの照射は不測の事態を招きかねない危険な行為であり、仮に遭難船舶を捜索するためであっても、周囲に位置する船舶や航空機との関係において非常に危険な行為で、韓国も採択しているCUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)において、火器管制レーダーの照射は船舶又は航空機に遭遇した場合には控えるべき動作として挙げられていることをあげ、韓国側に再発防止を強く求めて行くことを発表した。また、韓国海軍は「火器管制用レーダーを作動させたことは事実だが、日本の哨戒機を狙う意図は全くなかった」と話していると報道された。
  • 12月23日 河野太郎外務大臣は直接的な批判を抑制し「日韓関係を前向きに進めるためにも政府一丸となった対応を(韓国側に)お願いしたい」と述べた。
  • 12月24日  金杉憲治外務省アジア大洋州局長がソウルの大韓民国外交部を訪れ(局長級協議)、強い遺憾の意を表するとともに、再発防止を強く求めたが、韓国政府は今までの説明から一転して、「レーダー照射を行った事実はない」として日本が事実と異なる発表を行った事を批判した。22日時点では韓国軍は「火器管制レーダーを作動した」と自ら説明しており、説明に矛盾が発生している。これに対し岩屋防衛大臣は「事実関係の一部に誤認がある」と記者会見で指摘し、防衛省名義の文書で「火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して数回照射された」と反論する声明を発表した。‬
  • 12月27日 日韓防衛局当事者同士のテレビ会議を開催。会議前、映像を公開する方針を日本側からあらかじめ伝えた。日本側が事前に通告して配慮した形だがその際、韓国側は激しく反発したという。
  • 12月28日  17時12分、 意見の食い違いが埋まらないため防衛省はP-1が撮影した当時の映像を公表した。
    https://youtu.be/T9Sy0w3nWeY?t=10(日本語)
    https://youtu.be/s93-l68D3Eo?t=10 (英語)
    「航空法規における船舶と航空機の離隔距離規定」を参考資料として添付。
    危険高度150m未満。

  • 2019年1月3日に韓国国防省は日本側の動画に対する反論動画(ハングル語版)をYoutubeにアップ、公表した。https://www.youtube.com/watch?v=4dpWAWpzWyE 
    また翌日4日英語版を公表した。https://www.youtube.com/watch?v=CGWO4...
    反論動画のほとんどは自衛隊の発表した動画を用いており、これにBGMを流しながらテロップで反論する形に編集している。「日本は人道主義的な救助作戦の妨害行為を謝罪し、事実の歪曲(わいきょく)を即刻中止せよ」と要求している。



2.韓国側の主張の遷移(日本政府の反論)

  • 12月21日夜 通常の作戦活動中だった。日本の哨戒機を追跡する目的ではなかった。(韓国国防省)韓国側は当初、悪天候だったためレーダーを総動員して北朝鮮の遭難船を捜していたとしていた。
    (映像では天候は良好で波も穏やかだ。駆逐艦の近くには捜索していたとみられる漁船、ゴムボートも映っている)
  • 12月24日 海自機が駆逐艦上空を飛ぶ「特異な行動」を取った。カメラを向けたが電波放射はなかった。(韓国軍幹部)
    (動画の前半で海自機は駆逐艦の左側から映像を撮影し、船尾から一定の距離を保ち右側に回り込んでいる。防衛省は字幕で国際法や国内法で定める高度を飛行していたとの指摘も付け加えた。「めちゃくちゃすごい音(電波)だ」と映像にはレーダーが当たった際の乗組員同士の緊迫したやりとりが残されている。)
  • 12月25日 誤解解消への協議が進められる。(韓国国防省)
    (哨戒機からの呼びかけに応答しなかったのは「通信が微弱だった」という反論にも疑問が残る。海自機は3つの周波数を使って英語で「目的は何か」と繰り返し意図を確認している。海自関係者は「距離や天候を考えれば聞こえているはずだ」と話す。)
  • 12月28日 韓国国防省は「実務協議のわずか1日後に、日本が映像を公開したことに深い憂慮と遺憾を表明する」とした報道官談話を出した。「映像は単純に、日本の哨戒機が海上で旋回する場面とパイロットの会話の場面だけを収めたものだ。火器管制レーダーを照射したとの日本側の主張の客観的証拠と見ることは常識的に難しい」と反論(韓国政府)
    韓国軍関係者も記者団に、「日本側はレーダーを照射されたと言いながら、周波数の特性を一つも公開していない」と述べ、証拠は不十分との認識を示した。むしろ海上自衛隊のP1哨戒機が駆逐艦の上空150メートルまで接近するなど、韓国側に「相当な脅威」を与えていたと主張。
    (照射レーダーの周波数など決定的な材料は「自衛隊の持つ能力に関わる」として開示を見送った。(防衛省)日韓関係筋によると、韓国側は当初、レーダー照射問題を公表しないよう日本政府に要請した。)
  • 1月3日と4日に公表された韓国側の反論動画には韓国海軍が撮影した部分は約10秒しかなく、ほとんどが自衛隊機の撮影した動画を編集して自国の反論をドラマティックなBGM付きで主張しているもので、韓国側の主張を裏付ける証拠は何もない。サムネイル写真は下記のように既存の写真2枚をコラージュ加工して自衛隊哨戒機が“低空威嚇飛行”したとの印象操作をしている。Youtubeでは低評価(ハングル語版の高評価に対する低評価率は50対50)が多く、コメントには反証になっていない、論点を自衛隊の危険飛行にずらしている、あきれるばかりとのコメントがあふれた。(自衛隊動画の高評価に対する低評価率は100対7)
    (韓国側の脅威になる低空飛行を証明する証拠がない、映像からは266m(P1全長38m×7)位の高度を飛んでいる、真上は飛んでいない、火器管制レーダーを照射していないという証拠がない、自衛隊の韓国側に対する無線の呼びかけが聞こえている動画の音声に対し、応えていない理由の提示がない、日本の飛行ルールの説明に対する批判をしているが自国が則っているルールの説明がない、交信音声を削ったり、サムネイル写真をコラージュで作成するなど印象操作が顕著という意見が多く、「ひどい。こっちも反論し続けないとだめだ」との防衛省幹部の声があがっている。)
韓国反論動画で発覚したサムネイルのコラージュ加工



3.韓国政党、メディアの反応

問題発覚当初から韓国国内では下のような決め付けた見方が主流。

  • 韓国の与党「共に民主党」は29日付の論評で、「最近支持率が落ちている安倍晋三首相が、反韓感情を刺激して保守層を結集しようとする汚いやり方で映像を公開したと、日本メディアは報じた」と主張。「日本政府は不純な意図で安保を脅かしている」と批判した。(韓国の報道前にこのように報道した日本メディアはない。朝日新聞が12月30日”レーダー映像公開「安倍首相は汚い」 韓国与野党が批判“との記事を掲載しているのみ)
  • 野党「正しい未来党」もこの日付の論評で映像公開について、「安倍首相が韓日の軍事問題を国内政治に利用しようとしている」と非難。「安倍首相は真実の究明より政治攻撃に集中する姿勢を即刻やめるべきだ」と主張した。
  • 「哨戒機が接近した距離だけ見ても、韓国駆逐艦の乗組員に脅威を与えるのに十分だった」と強調。「支持率が落ちている安倍首相が国内世論のためにあおっているとの観測も出ている」とも批判。(12月31日東亜日報)
  • 「哨戒機の低空飛行は米軍艦に自殺攻撃を敢行した『神風』を連想させるという指摘もある」と自衛隊機を強引に神風特攻隊に結びつける報道。(同日ソウル新聞)
  • 「一方的な動画公開は深刻な外交的欠礼」と断じ、「政治指導者が国内政治に利用しようとむしろ葛藤をあおったのは嘆くしかない」と安倍首相を批判。(同日韓国日報)
  • 「いったい安倍首相は韓日関係をどこまで悪化させる考えなのかを問いたい」とし、「国内の政治的利益のために隣接国との外交葛藤を活用する態度を直ちにやめるべきだ」と安倍首相の“悪意”を強調。日韓関係悪化の責任を安倍首相に転嫁した。(同日ハンギョレ新聞)

韓国側の動画公表後は韓国大手メディアは韓国側の動画に盛り込まれた内容を説明するばかりで明確な社としてのコメントを出していない。


4.問題点

1)事実を確認するための残るエビデンス
解決のため日韓から提供できるエビエンスとしては、火器管制レーダーの記録データおよびフライトレコーダーの飛行記録(日本側)と撮影されたと言われている光学カメラの映像データ(韓国側)が考えられるが双方感度、周波数情報など軍事機密満載のため生のデータは出されないであろう。特に韓国駆逐艦が搭載する火器管制レーダー「STIR-180」の周波数データー(X/Kバンド)を公表すれば周波数設定を変えなければジャミングで無力化される。「STIR-180」は16か国で使われており影響が大きい。韓国側は150mの危険飛行と言っているので撮影したという光学カメラの映像データ(距離、高度データ付き)を公表すれば主張の裏付けとなるだろう。(韓国側の反論動画にはこれが含まれていない。レーダー波の波形を日本側が公表することを検討中との情報も流れている)
客観的な事実は、防衛省が公表した動画とこれらのエビデンスをもとに簡単に割り出せるので、韓国が率直に謝罪すれば双方の解決目標であるべき再発防止の合意形成はそれほど難しくないだろう。しかし今回明らかにされた多くの情報からはもっと深刻な問題が見えてくる。

2)囁かれる真相
「なぜ、わが国のEEZ内で韓国の救難警備艦「参峰」(サンボンギョ)が北朝鮮の漁船員の救難?にあたっていたのか」「この救難艦の側に韓国海軍の駆逐艦が遊弋していたのは何故か」「これは一時的なものか恒常的に行われている行為なのか」などの疑問が次々と湧いてくる。

本来この海域で漁船遭難が発生したならば、たとえそれが北朝鮮の違法操業漁船であっても当然海上保安庁の巡視船などが救助にあたる。そもそも北の漁船がSOSを発していたら、日本側も傍受していたはずだがそのような情報はない。しかし今回韓国の警備艦と軍艦旗を掲げていない軍艦までが何らかの情報を得て、この凪いだ海上を漂う北朝鮮の遭難船?の側にいた。これは、当該海域での北朝鮮籍船の操業または何らかの活動を支援しようとしていたのではないかと勘繰られても仕方のない行為であり、現在の南北関係を見ているとその疑いが濃厚でもある。即ち、北朝鮮の漁船を救助する形の警備艦の護衛にあたる韓国海軍の駆逐艦が、「これを発見した(見られたくないところを見られた)海上自衛隊の哨戒機を排除する目的で火器管制レーダーを数回にわたり照射した」のではないかという疑問が浮かぶ。となれば、今回の事案は決して現場の一握りの士官らによる嫌がらせではなく、艦長が承認し、文政権も承認した「軍事的行為」ということになる。

恐らく、この情報を共有する米軍は韓国への今後の対応を検討していることであろう。
このようなトラブルが続発すると、日本にとって韓国も中国同様、「潜在敵国」と位置付けてもおかしくないと言ってよいであろう。実は米国内でも、韓国の文政権は北朝鮮との融和を最優先し、北東アジアをめぐる既存の安全保障体制を危うくしているとの危機感が強まりつつあるようだ。 トランプ政権には、米朝首脳会談で合意した北朝鮮の非核化政策が、文政権の対北融和策によって台なしにされかねないとの危機感が強く、文政権への強い不信や批判が抑えきれなくなっているというのだ。

下は自衛隊によって確認された東シナ海での韓国の瀬取りの写真である。今回最もありうる真相は韓国軍による瀬取りではなかったのかという見方が広がっている。

瀬取りせどり、英: Ship-to-ship cargo transfer)とは、洋上において船から船へ船荷を積み替えることを言う。 一般的には親船から小船へ移動の形で行われる。
東シナ海海上で韓国籍のジェイホプホと北朝鮮国籍の南山8号、互いに付着している様子が自衛隊により捕捉された、南山8号は、制裁対象に上がった船舶であり、両方ともタンカーである。以来、日本はその問題について韓国側外交部に問い合わせし、捜査を依頼したが、韓国政府は事件そのものを否定している。以降、日本では日本防衛相と外相の両方が記者会見を開き、事件の内幕を公開したが、国内のメディアでは、報道自体がなされていない。

いずれにせよ、このように事態が進展している以上、レーダー照射の事実関係というレベルで問題を矮小化してはならない。日米韓が連携して北朝鮮に対する確実な制裁の履行を担保に米朝交渉を再開しようとする中、このような背信行為がどのような意志から生まれ、いかなる結果を生むのか、韓国及び海外に住む韓国人によく考えてもらいたい。文政権は、制裁の網の目をかいくぐりながら北朝鮮を物心両面で助け、韓国の防衛能力を自ら削ぎ、悪手で経済を弱め、社会の分断を増大させながら北の主導下での個人崇拝型全体主義国北朝鮮への統合を、確固たる意志をもって推進、実現しようとしているように見える。
それが実現したとき、日本の安全保障防衛ラインは38度線から対馬海峡まで下がり、韓国では再び暴動や粛清によって多くの国民が命を落とす事態になるだろう。また、朝鮮戦争時のように、難民が大挙して日本に押し寄せる恐れもある。今回の事件も、極左文政権の下で自死に向かって漂流する韓国の現状を象徴している。残された時間はもう長くはない。




最低賃金法違反の雇用者に課される罰則は?日本の緩さが奴隷労働を作る


移民法関係のアゴラへの投稿記事第3弾です。2019年11月28日掲載。日本の最低賃金法違反に対する甘い罰則とオーストラリアの現状を比較しています。日本の緩さが奴隷労働状態を作っているともいえるでしょう。


移民大国豪州に長年住む日系移民として自民党の入管法改正案に反対する理由は過去の2つのアゴラ掲載記事をお読みいただければお分かりになると思うが、さらにもう一つ理由を加える。日豪の雇用者側に対する規則違反、主に最低賃金を下回った賃金を払った場合の罰則の厳しさの違いである。

日本の最低賃金は二つの種類に分けられる。一つは、正社員、パートタイマー、派遣社員、アルバイトなど、雇用形態を問わず、すべての労働者に適用されるそれぞれの都道府県で定められている「地域別最低賃金」。もう一つは特定地域内かつ、特定の産業での労働者を対象とした「特定(産業別)最低賃金」である。
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-19.htm
地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合は、高い方の最低賃金額が適用される。

最低賃金法第4条では、最低賃金以上の賃金を支払わなければいけないことと、もし最低賃金以下の給与で従業員と会社の間で合意があったとしても、それは無効であることが定められている。すなわちいかなる事情があろうとも、定められた最低賃金を支払う必要があるということである。また最低賃金法第40条により、最低賃金を下回る賃金しか支払わず、なおかつ最低賃金額との差額を支払わない場合には罰則として50万円以下の罰金が課せられる。(特定(産業別)最低賃金未満であれば30万円以下の罰金)

最低賃金違反の場合、労働基準監督署などに通報されると、会社に調査が入ったりするので対応に多大のエネルギーを使うことになる。実態調査の結果、行政の裁定と是正勧告などがなされる。是正勧告後、すみやかに改善を行い支払などを行えば多くの場合それ以上の問題にならないが、是正勧告を無視したり虚偽の報告を行うなど行政が悪質と判断した場合には、書類送検、罰金という手続きに進む。最低賃金を下回っていた場合、会社にとってのリスクは金銭的なものばかりではない。最低賃金以下で労働者を働かせているというブラック企業というレッテルが口コミやネットによって拡散され、企業イメージの悪化は避けられない。従業員がネットで最低賃金の情報をチェックして自分の賃金がおかしいと一足飛びに労働基準監督署に通報されたりすると大変なことになる。


さて豪州ではどうか。私の豪州での就業経験と周囲の意見からすると、日本の環境は経営者にとって大甘だから、長時間労働、低賃金がはびこっているという意見がほとんどである。これらは若年層の収入の低さにつながり、それが結婚できない、子供を作れない、日本の少子化へと悪循環を作っている。下に豪州の労働管理局であるフェアワークオーストラリアのサイトの一部を張り付けた。

〇  $516,000 fine for underpaying workers  (賃金未払いに対する罰金約4,231万円
〇  $228,000 fine for not meeting minimal wages (最低賃金未満の賃金に対する罰金約1,870万円)(82円/オーストラリアドル)



https://fairworkhelp.com.au/pay-rates/?keyword_k=fruit%20picking%20australia%20pay%20rates&k_ignore=&kendelid=p.401._k_Cj0KCQiA_s7fBRDrARIsAGEvF8Q21FSCPWnKolQECXDViSINqVTosBhsC_f9RebGQtXnpJzYkkTVdLgaAtm7EALw_wcB_k_.kw392552&gclid=Cj0KCQiA_s7fBRDrARIsAGEvF8Q21FSCPWnKolQECXDViSINqVTosBhsC_f9RebGQtXnpJzYkkTVdLgaAtm7EALw_wcB

日本の罰金がいかに軽いものかわかるだろう。豪州は移民に対しフェアーな政策であろうと努力し、法律を破る者に対してはシンガポール同様非常に厳しい。日本では入管法の改正だけではなく関連法規のすべてを見直さなければ、秩序ある外国人の受け入れの実現など不可能である。

豪州の47% の雇用主が指定賃金を払っていないという記述については次のように説明できる。豪州は外需(輸出)、農業、鉱工業などの資源産業国というイメージがあるが、今の産業構造は内需、サービス業(GDP構成比率70%、雇用者数比率79%)に軸足を移している。
サービス産業の雇用者比率ベスト5に入る、宿泊・外食産業の外食産業では賃金の現金支払いが横行している。外食産業は英語をまともに話せないためオーストラリア人と同等の仕事に就けない移民の受け皿になっている。弱みに付け込まれ現金支払いで、最低賃金より低い賃金で労働をしている人がかなりいる。豪州の最低賃金(時給)は現在18.93ドル(約1,552円)プラス9.5%(Superと呼ばれる積立年金147円)である。レストランで働いているという日本人と話をしたことがあるが、まかない付きで時給15ドルと言っていた。これらのレストランでも当局に一本電話されれば、店は上記の多額の罰金を払い、長期の営業停止を食らう。メディアに非人間的な企業であるとたたかれて評判は地に落ちる。有名な回転寿司チェーンが違反を告発され、直営店方式からフランチャイズ方式にビジネス形態を変えざるをえなかったことがある。多くの店は耐えられずにつぶれる。土曜、日曜、祝日の時給は法律で2倍以上になるため、日曜閉店するレストランも多い。

メルボルンのハンバーガー店の前で不当な低賃金への抗議を行う若い移民の元店員たち。
その後、元オーナーには約2,460万円以上の罰金が科されることに(Junkeeより引用:編集部)

 このように、豪州政府は労働者の権利を守る強い意思で法整備をしている。それでも、リスクを冒しながら違法営業を行う業者は後を絶たず、語学力の低い移民が搾取の対象となっている。日本のように緩々の運営で移民を大量導入したらどうなるか。低賃金奴隷労働が蔓延し、様々な社会問題を引き起こすのは火を見るより明らかである。




豪州の外国人労働ビザと比べると見えてくる与党入管法改正案の狙い


移民法に関するアゴラ投稿記事第2弾です。2019年11月24日掲載。入管法改正の狙いについて簡潔にまとめています。また豪州のTSSと比較して日本の法律の穴について指摘しました。


中国化が進むシドニー北部にあるChatswoodの街並み。(yukit213.blog.fc2.com)
中国系住民が34%を占める。中国系永住権保持者の中で英語があまり喋れない/全く喋れない人は32%にも上る

国会で議論されている政府与党提案の入管難民法改正案の内容と、現行の技能実習制度の惨状を見ると、入管法改正の狙いが見えてくる。さらに私が住む豪州の移民制度の根幹である海外人材活用のためのビジネス・ビザ、TSS(Temporary Skill Shortage)ビザと比較してみれば、日本政府の狙いは一目瞭然である。

結論から述べる。


  1. この法案の目的は技能実習性を、業界の要請に基づき「特定技能1号」にスライドさせ、低賃金で働かせることが目的である。その証拠に、政府は技能実習生として3年以上の経験を積んだ外国人は「特定技能1号」の試験を免除するという“抜け道”を示している。この「特定技能1号」を使えば派遣法における「3年勤務したら正社員に登用しなくてはならない」というルールは骨抜きになり、日本人労働者の仕事は減り、賃金も下がる。特定技能の在留資格は人手不足が前提なので、不足が解消したら在留できない可能性もある。これはいつでも首を切り、母国に送り返せることを意味する。雇用契約の更新拒否が恣意的にされる可能性もあり、外国人労働者は派遣法下の日本人労働者よりも厳しい状況に置かれることになる。
  2. 一方「2号」の対象候補は「建設業」「造船・舶用工業」など5業種にとどまっている。政府は数を絞り、「2号」の要件厳格化に加え、永住権付与の条件は出入国管理法の規定通りとしている。「2号」は永住権につながるため移民法そのものと保守派からも批判されているため、一種の目くらましとして使った後、政府は「2号」案はしばらく保留する可能性がある。政府にとって「技能実習生」を「特定技能1号」という看板への書き換えさえできれば目標を達成したことになる。
  3. 法案の実態はがらんどうで、具体的な内容は省令として発令されるが、所管の官庁と業界団体の協議事項が多く、立法府のチェックを免れることになる。つまり利害関係者のみの談合で仕事に必要な「相当程度の知識または経験」の試験方法と判定基準、仕事と生活に必要な日本語の測定手段と基準が決められる恐れがある。特に日本語のレベル測定には国が認めるテストが使われなければならないが、曖昧なまま運用される可能性が大きい。


次に、豪州における外国人労働者導入目的である短期ビザ(Short Term Stream)と中長期ビザ(Medium Term Stream)について説明し、日本の法案がいかに非人間的で穴だらけであるかを示す。

豪州は48年の歳月を掛けて人口を倍増し、2018年8月7日、2,500万人を突破した。毎分1人のペースで流入している移民は、27年間景気後退なしという世界最長の経済成長に寄与し、豪州を先進国有数の多文化国家にした。年16~19万人の移民受け入れによって豪州の人口増加率は現在1.6パーセントと、世界の人口増加率の1.1パーセントを上回っている。


この豪州の成長を支えた移民制度の大枠

  1. スキルのある外国人を移住させ、産業の振興に貢献させる。オーストラリア人だけでは不足している業種の労働需要を埋める目的も含まれる。
  2. 大金を持ちこんで投資を通じて豪州の国益に寄与する外国人を受け入れる。
  3. 永住権、さらにその先の市民権取得に道を開くことによって国民の数を増加させ、少子高齢化対策とGDP上昇を狙う。(1991年以降、GDPは年平均3.2%のペースで増加、人口の増加がそのほぼ半分に寄与したと言われている)

 
移民制度の基本方針

  1. 市民(オーストラリア人)および永住権保持者とそれ以外のビザ保有者を明確に区別することにより、居住者の権利と責任を明確にする。
  2. 受け入れ労働者の家族帯同を許し、国内消費と国内産業の振興に寄与させる。
  3. 安全保障、国内治安の維持、居住者の管理のため、各分野における居住者のデータを取り、リンクして統合管理を行っている。移住者のトレースは容易でテロもいくつか事前に防止されている。
  4. 外国人の受け入れに伴うサポート体制を整える。特に言語に関するサポート体制(160か国語に対応できる翻訳無料サービス)は高度に整備されている。


TSS(Temporary Skill Shortage)とは?
豪州が提供するビザは、文字通り「一時的に不足している技能(TSS)を埋めるためのビザ」である。

  1. 技能のレベルや国内での労働力不足の度合いに応じて短期ビザ(2年+2年延長可)と長期ビザ(4年+永住権に繋がる可能性あり)に分かれており、職種リストもかなり限定されている。短期と長期で職種リストは異なる。
  2. ビザの発給には、労働市場調査(Labor Market Testing)と呼ばれる、現地人を優先して雇用することを試みた証明が必要。2種類以上のメディアに最低4週間募集広告を出すことが義務。募集は年収53,900ドル(431万円)の最低賃金を上回らなくてはならない。
  3. 英語力はブリティッシュカウンシルが実施するIELTS で、読み書き、リスニング、スピーキング全体で5点以上のスコアが必須。これは簡単ではない。
  4. 年齢制限は無し。(ただし、永住権申請は45歳までの縛りがある)
  5. 帯同出来る家族は配偶者と子供。
  6. 雇用主/スポンサーが年金やプライベートの医療保険料を払う義務がある。保険料は帯同家族分まで。国民健康保険には加入できない。
  7. 低賃金労働と搾取を防ぐ目的で、オーストラリアの現地従業員と同等の労働条件を提供し、賃金を払う義務がある。
  8. 雇用主/スポンサーには、Skilling Australians Fundという、永住者/国籍保持者向けの職業訓練機関の運営に使用されるファンドへの出資が義務付けられる。
  9.  健康診断の必要あり。 
  10. 過去10年間に12ヶ月以上住んだ国からの無犯罪証明書提出義務あり。



次に、日本の現法案に欠けている穴を列記する。

  • 労働者を低賃金労働力としか見ておらず、家族帯同も許さない「特定技能1号」は国際社会から非人道的と見なされる恐れがある。
  • 日本人労働者の給与レベルが下がるのを防ぐ仕組み(同時に「特定技能1号」の給与水準を日本人並みにすることを担保する仕組み)がない。
  • 短期労働者向けの民間個人医療保険を用意し、保険料は労働者と雇用者/スポンサーが支払うべき。国民健康保険加入は国富の蚕食である。
  • 外国人のサポート体制ができていない。
  • 外国人のデータ管理システムができていない。豪州は毎年外国人や二重国籍者を含めた92万人(2017年)余りが登録されている「要注意人物リスト」を作成している。日本もこの種のデータベースの作成と中国の「国防動員法」対策の要となるスパイ防止法などの法的環境の整備が必要。
  • 不法滞在外国人の管理体制ができていない。豪州はパースから北西2650Km沖のクリスマス島に不法滞在者の収容設備を有している。難民用にはパプア・ニューギニアのマヌス島やナウル共和国に収容施設も持っている。日本はこのような不法滞在者や難民、朝鮮半島の有事にも対応できる施設を準備すべきではないか。

クリスマス島の移民収容施設 (BBC 2013年7月)
2015年11月に大規模な騒乱が発生、一人が脱走、死亡した。


このように、豪州の労働者導入計画が「客観的に国内で不足している技能を一時的に補う目的」に徹し、かつ、国内の労働条件と同等であることを義務化しているのに対し、日本の法案は「単純労働向け低賃金労働者の大量獲得」を目的としていることが明らかであり、非人道的であるがゆえに、失踪者の発生と不法滞在、犯罪率の増加などを招くことは明らかである。




豪州の移民政策が日本に示唆する「地獄の釜」


2019年11月6日に言論プラットフォーム「アゴラ」に掲載されたAJCN事務局長の記事です。AJCNは移民の国オーストラリアに依拠したグループでメンバーは長くオーストラリアに住んで、移民国の長所と欠点を知り尽くしています。そんなメンバーたちの意見をまとめて投稿し日本の実質的移民法(入管改正法案)に対する懸念を表明しました。


オーストラリア・ジャパン・コミュニティ・ネットワーク 事務局長 江川純世

オーストラリアは国民の数を増やし、高齢化を防ぐために移民政策を積極的に使い、特定分野の労働力不足を補いながら順調に人口とGDPを増やしてきた。今日本では経済界の要求に基づく自民党の入管法改正案が十分な議論を経ずに推し進められている。この日本政府の移民拡大策推進に戸惑っている日本人の多くは、豪政府の絶え間のない移民政策改善の努力、抜け穴ふさぎのためのあがきを知らない。オーストラリアの移民政策を裏打ちしている社会的な仕組みのいくつかを紹介することにより、やり方次第では国を壊しかねない移民政策にとって何が必要なのか、警鐘を鳴らしたい。



1.移民政策で一旦入れた外国人の数は鼠算的に増える
 海外移民達の目的は母国から抜け出して移住目的国で暮らすことであり、職業の選択は2の次である。仕事は生活の手段であり、滞在ビザが何であれ、家族と共に合法的にそこに住めれば、仕事の種類は眼中にない。  
 外国人就労拡大を旗印とする現法案の問題は主に2号にある。技能が高い就業者には滞在年限を定めず、つまり永住権を付与し、家族の帯同も許すとある。ここオーストラリアでは永住権の審査は年々厳しくなっているが、取れればオーストラリア人と同じ福利厚生を受けられる。当然母国に配偶者や子供がいれば呼び寄せビザ申請を行い、高齢の父母がいれば同様に申請が可能である。ひとり移住すれば100人になると言われる所以であり、抑制するのは困難だ。


2.移民のマジョリティは中国人である。中国人対策を移民政策の中心に
 日豪の累積移民の数で最も多いのは中国からの移民であり、中国人を意識した法制でなければならない。中国人は順法精神が低く、ばれなければ何でもやるという考え方である。安保上の対策としては中国の「国民動員法」対策が中心となるだろう。


3.移民も人間、日本人とは異なる語学・文化教育、福祉政策、離職・再就職を前提とした移民向け就労支援システムに投資が必須。居住エリアの限定政策の検討も
 健康保険、失業手当/生活保護、無料語学教育など広範囲にわたる移民の生活支援ための社会インフラを作る必要がある。オーストラリアの例を説明する。

1)健康保険は永住者でない限り民間保険に各自加入。現在の日本では国民健康保険に加入させているようであるが、オーストラリアの国民健康保険(Medicare)に加入できるの国民と永住者のみである。移民申請の際重要視されるのは、指定病院での健康診断である。シリアスな既往症があったり、患っている場合は不合格、ビザは却下され療養目的に乗り込んで来る人をシャットアウトする。

2)移民の就業に際しては、政府機関Centrelinkに登録した後、就職支援会社で週一回のオフィスでの就活と面談が実施されている。種々の理由で離職し、同じ民族の集団に潜ると移民の存在が把握できなくなる。なかなか就職できない移民が犯罪に走る可能性も大きい。週1回の面談は、失業率を低減させるためであるが、犯罪に走る移民の動きを抑制し、監視する役割も持つ。現在のハローワークで対処できるだろうか。

3)就労に必要な英語力がない場合は英語教育プログラムへの参加、ITに詳しくない場合はPC操作の教育プログラムに参加することができ、メンタルヘルス、DVなどの問題についても専門家が無料でカウンセリングを行っている。これも大きな財政負担となる。

4)英語が話せない移民は政府のービス(TIS:Translation and Interpreting Service)を無料で受けられる。通訳可能な言語は160か国語以上。日本でこの種のサービスが可能とは思えない。


4.移民のビッグ・データ管理、不法滞在者への対応は具体的に
 移民政策設計の基本は性悪説である。2025年までに移民50万人増を目指すとなれば、不法滞在者用の隔離施設と母国への送還予算の計上も必要となろう。

 オーストラリア内務省は外国人や二重国籍者を含めた92万人余(2017年)が登録されている「要注意人物リスト」を作成した。危険区分の中で最も多いのは「国家の安全に対する脅威」。対象者は全体の約45%を占め、次に多いのは「重大・著名事件の犯罪者」で全体の約12%。日本でもこの種のデータベースの作成とそれを実施できる法的環境の整備が必要となろう。豪政府統計では各種ドラッグ使用経験者は国民の1/3に達している。ドラッグの使用に対する禁忌意識の低い国や犯罪発生率の高い国からの移民は日本の犯罪発生率を確実に高める。

 豪州政府のオンライン・サービス・アカウント(MyGov)を作成すると各種のデータ(下記)にアクセスができる。これを見ればCentrelinkに登録した居住者の各種のデータが一元管理されていることがわかる。日本ではマイナンバーの活用もままならないと聞いている。現状では移民のデータ管理など夢のまた夢か。



5.中国には偽造できない証明書はない。移民の申請内容のチェック・システムの整備が必要
 豪州では中国人の各種申請添付書類に偽造が多いことが知られている。そのため豪政府はその書類の真贋を判定するいくつかの仕組みを使っている。


6.家族帯同の許可についての家族の範囲の設定、家族関係の確認システム、離婚/再婚に際しての滞在ビザの発給ルールは厳格に
 移民の受け入れに伴い鼠算的に外国人居住者が増え、社会負担が増える背景には、家族呼び寄せ制度がある。一旦受け入れた配偶者が離婚した場合のビザの扱い、養子で子供が増えた場合の扱い、介護が必要な両親の呼び寄せなどについても細かいルールを設定し抜け穴をふさがなければならない。


日本にこれらができるのだろうか?




サイレント・インベージョン - 中国の属国化が進むオーストラリア


今世界中で注目されている豪州のクライヴ・ハミルトン博士の著作 Silent InvasionをAJCN山岡代表が解説した記事を掲載します。この記事は新潮45 9月号に掲載されました。10月4日にハドソン研究所で講演したペンス副大統領の、中国に対する最後通牒ともいえる講演内容にも大きな影響を与えました。米国でも読まれ始め、年内には日本でも山岡代表監訳で翻訳版が出版されます。全面戦争前の、あらゆる分野での小競り合い、軍事衝突が始まっているとペンス副大統領は述べ、このGrey Warを米国が始めたと宣言しました。この戦争の端緒は米中のTax Warでしたが、南シナ海での小競り合いも本格化しており、ここが主戦場になると豪シンクタンクも見ています。10月10日に行われた日豪2+2の会議もこの線で対中国戦略が話し合われました。日本のメディアが殆ど報道しないため、いまだ日本国内の日本人は安穏としていますが、豪州在の日系人の方々にはこの記事を読んでいただき、世界が大きく動き始めていることを肌で感じてもらいたいと思います。


シドニー市内の書店に平積みされるSilent Invasion



今年の2月26日、オーストラリアで衝撃的な本が出版された。タイトルは“Silent Invasion(サイレント・インベージョン)”。直訳すれば、「静かなる侵略」だ。サブタイトルは「オーストラリアにおける中国の影響」。実は当初は「いかに中国がオーストラリアを属国化しているか」という、もっと率直なものだったが、版を重ねる過程で現在のものに修正された。

人口2500万人程度のオーストラリアで、発売以来2万部以上が売れたベストセラーとなっている。大手書店や空港の書店では現在も平積みされている。

著者はチャールズスタート大学のクライブ・ハミルトン教授(65)。名門メルボルン大学卒で専門は公共倫理。気候変動に造詣が深く、オーストラリア政府の気候変動調査機関の役員でもある。また、自らオーストラリア研究所というシンクタンクも創設している。2009年には社会貢献が評価されて叙勲した他、「緑の党」から連邦選挙に出馬し、次点となった。頻繁にメディアに登場し、政策への影響力を有するご意見番だ。そのようなハミルトン教授が出版した「サイレント・インベージョン」とはいかなる本であろうか。各章の要旨を書き出してみよう。

1. オーストラリアを周辺国と見なし、赤く染める中国の野望
2. 中国共産党の中華帝国再生の夢
3. 海外の中国系移民を動員し利用する政策へシフト
4. ダークマネー:巨額の買収資金
5. 取り込まれる大物政治家
6. 一帯一路に含まれるオーストラリア
7. 経済で誘惑し恫喝する中国
8. 膨大な人数のスパイと工作員、そしてハニートラップ
9. 政府や研究機関の奥深く入り込む中国人スパイ
10. 支配される大学と侵害される学問の自由
11. 文化戦争-移民先文化を破壊する中国人
12. 中国を支援し、肯定するオーストラリア要人
13. 自由主義を守る代償とは

ありとあらゆる分野で中国の浸透工作が進んでいることが書かれている。オーストラリアは中国共産党に「西側諸国における実験台」に選ばれたとハミルトン教授は指摘する。オーストラリア人に対しては経済的インセンティブが想像以上に威力を発揮すると気付いた中国共産党は、経済をテコにオーストラリアのエリート層を親中化し、アメリカから引き離す戦略を強力に推進してきた。それは大成功を収めるかに見えた。が、ハミルトン教授の本が強力なウェイクアップコールとしてオーストラリア社会に鳴り響いたのだ。

この、「静かなる侵略」の中身について、重要なポイントを詳しく見てみよう。


中華帝国復権の夢

福田康夫政権下の2008年に発生した、北京オリンピック長野聖火リレー事件を覚えている方も多いだろう。4月26日、聖火リレーが行われる沿道を4000人以上とされる中国人が埋め尽くした。彼らは巨大な五星紅旗を振りかざし、チベットを支援するグループなどに暴力行為を加えた。その異様な光景は日本人に大きなショックを与えた。

実は、この時同じことが南半球のオーストラリアでも起こっていた。首都キャンベラで行われた聖火リレーに、何千人という中国人、主に留学生が集合したのだ。そこにたまたま居合わせたのが、クライブ・ハミルトン教授だ。

ハミルトン教授は、沿道でチベットの解放を訴えるグループを控えめに支援していた。だが、そこに現れた巨大な「赤い群衆」は、その数の多さもさることながら、暴力的で、異様な攻撃的高揚感に溢れていた。彼らは猛り狂う集団と化し、チベットのグループを暴力的に蹴散らしたが、現地の警察は無力だった。
ハミルトン教授は、民主主義国家オーストラリアの首都で、言論の自由が特定の集団の暴力的な示威行動によってあっさりと否定された現実に大きな衝撃を受けた。そして、「何かが裏で起こっている」と直感した。
それから10年、あるオーストラリアの国会議員が、中国共産党と関係が深い中華系ビジネスマンから多額の献金を受け、中国政府に好意的な発言を繰り返したことが問題となり、辞任に追い込まれる事態が発生した。なんと、労働党と自由党という、オーストラリアの二大政党に対する最大の献金元が複数の裕福な中国人ビジネスマンになっていたのだ。当然ながら、それらの献金者は中国共産党と深く結びついている。
ハミルトン教授は不吉な予感が的中したことを確信し、本格的に調査を開始することを決意した。そして明らかになったのは、あらゆる角度から着実に実行されている中国共産党による浸透工作だった。中共は、オーストラリアの大地を赤く染め上げ、属国化しようと画策していたのだ。人口が少なく、開かれた移民政策と多文化主義を国是とする自由主義国家オーストラリアは格好のターゲット(餌食)だった。

調査を開始して、ハミルトン教授が最初に気付いたことは、90年代初頭における中国共産党の政策大転換だった。ソ連の崩壊と冷戦の終結は、中国共産党にとって、自らの正統性を共産主義の優位性に求められなくなった瞬間でもあった。求心力を維持するために中共が採用した方策はなんだったか。それは民族主義の高揚であった。それは下記の考え方に基づく。

「過去1世紀は、中国が傲慢な西欧諸国と残虐な日本人によって踏みにじられた屈辱の歴史であった。今こそ中国共産党の指導のもとで、偉大な中国を再建し、屈辱を晴らす時が来た」

これで説明がつく、とハミルトン教授は確信した。キャンベラ(および長野)に終結した「赤い軍団」は、まさに中国共産党が推し進める「復讐と民族再興」というストーリーに則った国民教育の成果だったのだ。

さらにハミルトン教授は指摘する。
中国共産党は意図的に、中国イコール中国共産党、という構図を作り上げている。つまり、トランプは嫌いだがアメリカは好き、という、民主主義国家なら当然の発想は許されない。中国を愛することは党を愛することだ。逆に、中国共産党を批判することは、中国人を批判することになる。だから、中共批判は民族としての中国人への攻撃であり、レイシズムだと強弁する。明らかなすり替えである。しかしこれは、人種差別に敏感で贖罪意識のあるオーストラリア人にとっては有効な圧力となりうる。それゆえ、ハミルトン教授は「サイレント・インベージョン」を書くにあたり、嫌中のレイシズムと非難されないように細心の注意を払わざるを得なかった。


歴史改ざん

では中国は具体的に何をしてきたのか。まずはここでも「歴史改ざん」である。尖閣にせよ、南シナ海にせよ、大昔から中国が発見し、占有していたと主張するのは定番になっている。しかし、中国の「世界発見史」は周辺地域に留まらない。2003年に胡錦濤がオーストラリア連邦議会で演説した際、驚くべき歴史観を披露した。

「中国人民は皆、オーストラリアの人々に友好的な感覚を持っています。遡ること、1420年代、当時の明王朝の船団がオーストラリアに辿り着き、以来、数世紀にわたって中国文化をこの土地にもたらし、地元民と融和的に暮らし、オーストラリアの経済、社会、そして多元的な文化に貢献してきました」

なんと、オーストラリアはキャプテン・クックやエイベル・タスマンより先に、中国人によって発見されたと言っているのだ。この論調は一過性のものではない。狙いを定めたら歴史の改ざんから始める。いつものパターンが発揮されている。


海外在住中国人の有効活用

そしてハミルトン教授によれば、中国共産党は、海外在住中国人に対する方針を、2000年から徐々に、2011年からは完全に切り替えたという。以前は国外に出て行った中国人には距離を置いていたが、最近では、海外の中国人を国益の為にフルに活用する。対象は、オーストラリア国内の100万人を含む、世界中に散らばった5千万人の中国人だ。これらの中国人をコントロールするための組織が党中央委員会から出先の国にまで作られている。その統制手法はマルクス・レーニン主義に基づき、毛沢東が開発した組織化手法だ。現地の社会に根付いた中国系移民を中国の国益の為に動員する。前述の学生動員はその一例だ。この手法に距離を置く法輪功やチベット独立支持派のグループは監視と弾圧の対象となる。
ここで留意すべきは以下の点だ。彼ら「赤い軍団」は普段は学生として普通に生活している。しかし、一旦、党からの指令があれば、このように組織化され、攻撃的な民族主義に高揚し、意見が異なる人々を暴力的に弾圧しても「母国の為に正しいことをしている」と信じて疑わない集団と化す。もちろん、巨大な五星紅旗や大型バスの調達は党が全面的に支援し、オーガナイズしている。世界のどこにいても、中国人である限りは、スイッチひとつで機動する装置の一部なのだ。ある中国人学者がハミルトン教授に言った。「中国人は、愛国的であれば何をしても許されると思っている」


冷戦時代のソ連を凌駕する中国共産党のスパイ活動

そもそも中国はスパイを多数活動させている。2005年にオーストラリアに政治亡命した元中国外交官の陳用林は、オーストラリア国内で1000人規模のスパイが活動していると語った。冷戦時代のソ連でさえ、数十人単位のスパイを潜入させることが精一杯だったのに、なぜ中国共産党はそのような膨大な数のスパイを潜伏させることが可能なのか?
それは、全く異なる手法が採用されているからだとハミルトン教授は説明する。伝統的な訓練されたスパイを送り込むだけではなく、前述のように、現地在住の一般人を幅広く活用する。裕福なビジネスマンを使って有力政治家に接近する。大学や研究所をプロパガンダ機関に転換する。学生を使ってデモを行い、反中国の活動家を弾圧し、法輪功のメンバーや、反中的発言をする学者や教師について密告させる。中国人企業家に重要拠点の不動産を買収させ、人民解放軍のフロント企業に軍事的に重要な港を賃借して管理させる。メディアを買収して、世論を親中に誘導する。エリート層には高い報酬や名誉あるポジションをオファーし、無料で中国に招待する。
もちろん、ハニートラップが多用される。豪州当局は数多くのハニートラップの事例を把握しているという。このように、官民一体となってありとあらゆることが行われる。それぞれの個人は日頃特段目立つこともなく、あからさまな違法行為もせず、一般市民として生活している。しかし、遠く糸が伸びた凧のように、北京から操られている。これはまったく新しい手法で、従来型のカウンターインテリジェンスを念頭に置いてきた豪州の関連機関も対応に苦慮している。


中共の手に落ちる大学とパンダハガーとなる著名政治家たち-北京ボブと呼ばれる男

この工作の成果として最も有名なのが「北京ボブ」である。
シドニーの中華街に隣接して、シドニー工科大学(UTS)という大学がある。この大学に、2014年5月、黄向墨という裕福な中国人ビジネスマンがUTSに約1億5千万円(189万豪ドル)の寄付をして、豪中関係研究所(ACRI)というシンクタンクが開設された。その黄の希望で所長に就任したのが引退した大物政治家、ボブ・カーだ。カーは労働党所属で、長くニューサウスウェールズ州の首相を務めたことで記憶されるが、引退前にジュリー・ギラード内閣で外務大臣も務めた。
開所式には現役のビショップ外相まで参加し、中国大使も出席したが、やがて、このACRIが出した報告書が、豪中自由貿易協定を肯定する根拠として、与党自由党によって多用された。協定の労働条項に懸念を示す野党労働党を牽制するツールになったのだ。そして、ボブ・カーは元々労働党に忠実だったはずだが、豪中自由貿易協定を徹底的に支持する立場を明らかにした。そして、中国への依存に懸念を表明する人々を「冷戦メンタリティ」と批判した。

これにはハミルトン教授も驚きを隠せない。なぜなら、1989年の天安門事件直後、ニューサウスウェールズ州の野党党首だったカーは、抗議に集まった1万人を前に、「マルクス・レーニン主義政党の一党支配は馬鹿げた時代錯誤だ。中国における複数政党による民主主義のみが血の惨事を防げるだろう」と発言していたからだ。また、2012年には外務大臣として、オーストラリア内の親中派を批判していた。このような変節甚だしいボブ・カーには、いつしか「北京(ベイジン)ボブ」というあだ名がつけられた。北京ボブは当然のごとく、南シナ海における中国の軍事基地化を強く支持し、ドナルド・トランプを猛烈に批判し、オーストラリアはアメリカと距離を置くべきだと主張した。完全に中国のスポークスマンと化してしまった。

ハミルトン教授は結論する。ACRIはまっとうな研究機関を装った、北京のプロパガンダ機関であり、その究極の目的はオーストラリアの政治と政策を中国共産党に有利に導くことだ、と。本来、学問の自由を本望とする大学の研究機関が金に幻惑され、存在感の喪失に悩む元政治家が、自分が完全に北京の手先になっていることも自覚せずに主導した。
北京ボブはその後、多くの批判と嘲笑を浴び、長年政治家として培った信用のほとんどを失った。


オーストラリアの反撃 - 遅い目覚め

このように中国は、武力ではなく、まさに孫子の兵法のように、戦わずして「静か」に社会を侵食してオーストラリアを属国化する作戦を着実に実行している。
オーストラリアは慌てて、1970年代以来、40年以上ぶりに、国会でスパイ対策関連法を見直し、強化するという議論を始めた。そして平成30年6月末、外国による不当な内政干渉を受けにくくするための法案が上下両院で可決された。法案では、外国の利益を代弁してオーストラリア国内で政治活動をするすべての人間に、その国との関係や活動内容などを事前に届け出ることを義務付けている。
さらに、外国政府に代わって企業機密を盗む行為を新たにスパイ行為として罰則の対象とする法案も合わせて可決した。これを受けて、ポーター司法長官は「オーストラリアの安全保障を脅かす行為を阻止するため、われわれが必要な手段をとり続けるという強いメッセージを送るものだ」とする声明を発表した。オーストラリア政府は、外国人からの政治献金を禁止する法案も年内の成立を目指すなど、今後も外国からの内政干渉には断固たる措置をとる構えだという。(NHK NEWS WEB オーストラリア議会 内政干渉を防ぐための法案可決 2018年6月29日)

しかし、中国の浸透工作はすでにかなり深く進行している。中国が簡単に諦めるとはとても思えない。ジ・オーストラリアン紙によると、去る6月、2015年に要衝ダーウィン港の99年間リース権を5億600万豪ドル(約410億円)で落札した、中国山東省のエネルギー・インフラ企業の嵐橋集団(ランドブリッジ)傘下のランドブリッジオーストラリアが、今後3-5年で数億豪ドルを投資して同港の拡張を計画していると発表した。中国人にとって99年は永遠を意味する。

また、教育分野でも浸食が進んでいる。世界各地の大学に孔子学院という教育機関を装うプロパガンダ機関が設置されていることは知られているが、シドニーがあるニューサウスウェールズ州では公立の小中学校に「孔子学級」なる機関が置かれ始めている。大学同様、資金難の学校にアプローチし、中国語や中国文化を教える孔子学級を設置する条件で資金援助をオファーする。中国政府に都合が悪いことは一切教えず、学校教育から排除させる。親の間では急速に懸念が広がっている。

これからオーストラリアでは共産主義対民主主義の長く苦しい戦いが続くだろう。必然的に、米中対決に巻き込まれていくことは避けられない。

ハミルトン教授が指摘するように、中国共産党が掲げる「中華帝国再生の夢」には、「復讐」という苛烈な概念が含まれている。常に、復讐という名の下に敵を外部に設定し、そこに国民の意識を向かわせるのだ。
評論家の石平氏によれば、日本はとことん憎むべき敵として利用し、幼少期から徹底した反日教育を行う、だから中国のエリートは、いつか日本を支配し、日本人を虐殺したいと考えているという。
日本にその自覚はあるだろうか?そしてオーストラリアに学ぶことができるだろうか?




性行為を強いられた慰安婦。誰が強要したのか?朝日新聞は行為者を明示せよ!


AJCNは継続して朝日新聞の慰安婦報道の嘘を追及してきました。2014年8月、同社が日本国内で虚報を認めた後も、英語記事で印象操作に基づく慰安婦強制ストーリーを拡散し続けている同社の姿勢を批判しています。今回の記事は朝日新聞の英語記事の作為的なプロパガンダともいえる表現を改めることをAJCN山岡代表がケント・ギルバート氏と共に同社本社を訪問し申し入れをしてから、同社と行った交信をもとに、さらに同社の欺瞞を明らかにしています。その後表現の修正どころか、記事の撤回と挺身隊と慰安婦を混同したという重要記事をメタタグを使って隠すという同社の作為が発覚して、日本中に批判の渦を巻き起こしたことは皆さんご存知のところです。メタタグ事件はまた別の機会に紹介するとして、まずは英語記事の表現に係わるやり取りをお読みください。


朝日新聞本社訪問

平成30年7月6日午前10時。大江戸線築地市場駅を出ると、巨大なレンガ色の建物が降りしきる雨に煙っていた。朝日新聞本社。都心の一等地にそびえる重厚なビルが、この新聞社が長年日本の言論界に支配的な存在として君臨して来た歴史を偲ばせる。雨をよけながら、ケント・ギルバート氏の到着を待つ。報道陣も集まり始めた。

朝日新聞英語版の慰安婦記事に対する訂正などを求める署名と申込書と提出するため、同東京本社に来訪した米国カルフォルニア州弁護士ケント・(左)とAJCN代表の山岡鉄秀氏=7月6日、東京都中央区 (産経新聞8月12日記事から)

 ちょうど2年前から追いかけている朝日新聞英語版における慰安婦強制印象操作問題で、ついに朝日新聞社に直接申し入れる日が来た。一般の国民が気付かないところで連綿と続く英語による印象操作でどれだけ国益を損ねたか、計測不能だ。

80年代と90年代、吉田清治のつくり話が信じられていた頃、朝日新聞が英語版で性奴隷(Sex Slaves)という言葉を躊躇無く使っていたことを私は知っている。国会図書館でフィルム化された記事をリールでくるくると回しながら、当時何が世界に発信されたかを見て暗然とした。11歳の小学生が日本軍の慰安婦にされた、という衝撃的な記事まであった。朝日新聞は吉田の証言が虚偽だと判明した後も、ずっと放置して来た。その間に、慰安婦イコール性奴隷という固定概念が世界中にまき散らされ、浸透した。

2014年8月、やっと吉田清治証言の虚偽を認めた後、朝日新聞は英語版でも性奴隷という言葉を使わなくなった。その代わり使い始めたのが、次の表現だ。

Comfort women, who were forced to provide sex to Japanese soldiers before and during World War II.
第二次大戦前、および大戦中に、日本兵に性行為を強制された慰安婦 
Comfort women is euphemism for women who were forced to provide sex to Imperial Japanese troops before and during the war. Many of the women came from the Korean Peninsula.
慰安婦とは戦前および戦中に日本軍部隊に性行為を強制された女性たちの婉曲表現である。女性たちの多くは朝鮮半島から来ていた。

慰安婦に関する記事であれば、これらのフレーズやセンテンスが文脈にはまったく関係なく機械的に挿入される。たとえ、日本政府が国連で慰安婦の強制連行や性奴隷化を否定したことを伝える記事であってもだ。

今回、朝日新聞側で我々に対応したのは、及川健太郎編集局ゼネラルマネージャー補佐、後田竜衛広報部長、河野修一広報部長代理の3人だった。大西達夫弁護士を加えた我々3人は小さな応接室に通され、向かい合って座った。我々は印象操作中止を求める10,411筆の署名の束を手渡し、努めて穏やかにこちらの論点を説明した。朝日側も紳士的に対応していた。


受動態の陥穽

しかし途中、ギルバート氏の語気がやや荒くなる局面があった。ギルバート氏は、受動態を使用して印象操作を狙う姑息さを指摘していた。

“Were forced”と受動態で書かれているから、強制されたのは明らかである。しかし、”By XXX”という部分がないから、誰が強制したのか明示されていない。性奴隷とか強制連行という言葉もどこにも書いていない。しかし、これまで日本軍による強制連行が散々流布されてきた事実や、日本兵に対して性行為を提供させられた、という文脈から判断して、読者は当然「日本軍が組織的に強制連行して性奴隷にした」と思い込んでしまう。実に姑息な印象操作の手法だとギルバート氏は憤る。ここで肝心なことは、私のような英語を日常使用する日本人だけではなく、アメリカ人で弁護士のギルバート氏がそう断言する、という事実だ。もちろん、他にも多くのネイティブスピーカーが賛同している。この点は議論の余地がないと言っていい。


我々は次の四点を申し入れた。

  1. 今後、前記の表現(forced to provide sex)を使用しないこと
  2. 吉田証言が虚偽であり、記事を撤回した事実を改めて英文で告知すること
  3. もし、前記表現が軍隊による物理的強制連行や性奴隷化を意味しないと主張するなら、具体的に、「性行為を強制された(forced to provide sex)」とは何を意味するのか明確に説明すること。
  4. 今後慰安婦の説明的表現を追加するなら、comfort women who worked in brothels regulated by the military authoritiesなどの表現を使用すること。

我々は、朝日がforced to provide sexという表現が、軍隊による物理的な強制を意味しないと強弁することを想定して、3の質問を入れていた。我々の主張を否定するならば、実際に何を意味しているのか明確に説明すべきだ。後田広報部長の「重く受け止めて真摯に回答する」という言葉を受けて、我々は朝日新聞本社を後にした。


さらなる受動態で答える朝日新聞

回答期限の7月23日、夕方になって受け取った後田広報部長名の朝日の回答全文はウェブサイト(https://stop-asahi-propaganda.jimdo.com/)を見て頂くとして、私は上記3の質問への回答を見て唖然とした。

また、「forced to provide sex」という表現について、英語ネイティブスピーカーが読めば、「軍隊による物理的な強制で性行為を強いられた」という印象を受けると指摘されていますが、当該表現は「意に反して性行為をさせられた」という意味です。

受動態で行為者を曖昧にするのは公正ではないという指摘に対し、「意に反して性行為をさせられた」と受動態で答えている。これではまったく答えになっていない。”forced”と書いているのだから、意に反しているのは当たり前である。強制性を前提としながら、行為者を明示しないという無責任な行為を止めようとしない強い意思を感じる。

おそらく朝日は、理由がなんであれ、本人の意に反していたらそれはすなわち強制であり、性奴隷である、と言いたいのだろう。いわゆる広義の強制というわけだ。しかし、広義の強制という捉え方なら、強制した行為者も様々だ。昔は、前金をもらって子供を奉公に出す習慣があった。売春などの醜業もこれに含まれた。その場合は貧困に強いられたとも言える。また、朝鮮ではそのような契約を結ぶ権利は親にしかなかったから、親に強いられたとも言える。娘が嫌がっても、女衒が強引に連れ去ったケースもあったそうだから、朝鮮人女衒も強制の行為者だ。

朝日新聞の回答があまりにも曖昧であったため、我々は7月26日付で追加質問をすることにした。この、「forced to provide sex」の意味を巡る問題に関しては次のように質問した。

Forced to provide sexという表現の意味は「意に反して性行為をさせられた」という意味だとのことですが、forcedと書けば、意に反していたのは当然で、この表現の読み手、取り分け英語を母語とする読者の通常の言語感覚からすれば、たとえby XXXという受動態の構文における行為者の明示がなくとも、私どもが指摘している「軍隊による物理的な強制で性行為を強いられた」という印象と何ら変わりがありません。そこで改めてご質問いたします。御社が使用するforced to provide sexというフレーズにおいて、「女性の意に反して性行為をさせた」のは誰なのでしょうか?明確にお答え願います。


63年前の朝日新聞記事

私の手元に国会図書館で見つけた一枚の記事がある。昭和30年8月15日発刊の朝日新聞朝刊だ。終戦10周年特集として東京本社で開催された座談会の記録である。タイトルは「終戦直後の苦心」「調達命令乱れ飛ぶ」とある。占領下でGHQの命令を受け、東奔西走した人々の苦労話披露会という趣だ。

参加者は以下の通り。
田中栄一 内閣官房副長官
与謝野光 東京都衛生局長
福田赳夫 民主党衆議院議員
曽禰 益 右社参議院議員
大池 真 衆議院事務総長

与謝野光は与謝野晶子の長男で、終戦時は東京都防疫課長だった。座談会で与謝野は次のように語った。

「9月の14,15日だったか、マックアーサー司令部から呼び出しがかかったので、行ってみると実は君を呼んだのはこういうわけだといって大きな東京の航空写真を出して、実は折いって頼むのだけれど兵隊のために女の人を世話してくれという。(笑)よく調べたものでそういう場所は地図にちゃんと点が打ってある。将校にはどこ、白人兵にはどこ、黒人兵にはどこがいいだろうか相談に乗ってくれという。将校はいいけれども、黒人兵には僕も弱った。後で恨まれるだろうと思って。(笑)仕方なしにある場所を考えたんだが……。そのとき性病でもうつされては困るから予防措置をやれといわれたが薬がないから責任が持ち切れないというと、よろしい、薬は必要なだけやろうといってダイヤジン、ペニシリンなどを幾らでも無料でくれて、こういう方式で検診治療をやれ、責任は都知事が持てといったから仕方なしに花柳界に診療所をつくって都の職員の手で検診治療をやった」

与謝野の別の手記によれば、この時、与謝野に依頼したのはGHQ軍医総監ウエブスター少将で、慰安用に指定された場所は、将校用が向島、芳町、白山、白人兵士用が吉原、新宿、千住、黒人兵士用が亀戸、新小岩、玉の井だったという。(新潮45 1990年5月1日号 敗戦秘話・「占領軍慰安」防備録)

この与謝野の発言を裏付ける公文書までは見つけられなかったが、当然、当時の朝日新聞は裏取りをしたことだろう。この場合、ほとんどの女性が意に反して米軍兵士の相手をさせられたと考えられるが、強いたのはGHQではないのか?

このように、広義の強制などという曖昧な定義をすれば、強制の行為者もまた多様なのである。それにも拘らず、「forced to provide sex」とだけ書けば、読者は日本軍による強制連行(狭義の強制)を連想する。広義の強制などと言いながら、わざと行為者を曖昧にし、狭義の強制としか受け取れない表現を繰り返し使うことは、まことに欺瞞的と言わざるを得ない。


8月3日、我々の追加質問に対する朝日新聞からの回答が届いた。

冠省
 今回いただいたご質問については、基本的には前回お送りした回答で意を尽くしていると考えております。
 今後も、記事でどのような表現を使うかについては、国内外のさまざまな立場の意見や歴史研究の蓄積なども考慮しながら、個々の状況や文脈に応じてその都度、判断してまいりたいと考えています。
草々

結局、朝日新聞は、強制の行為者を明示することを拒否した。

朝日新聞などの左翼メディアや、中国や韓国の反日活動家たちが慰安婦問題を「女性の人権の問題」とすり替えるのは欺瞞も甚だしい。

もし、当時の女性たちが、仕方なく売春業に従事したことが「広義の強制」だというのであれば、彼女たちに強制した主体は「貧困、娘を業者に売った親、親から娘を買って儲けた女衒」など、多岐にわたる。駐留した日本軍に需要を作り出した責任があるとすれば、日本軍に自主的に参加し、慰安所を利用していた大勢の朝鮮人兵士たちも同様だ。だから、朝日新聞は「日本軍が物理的に女性を強制連行した」ように読める印象操作を繰り返しながらも、具体的に強制の主体を聞かれると答えることができない。

弱い立場に立たされた女性達への同情と反省は必要だ。しかし、弱者の政治利用ほど醜いものはない。そういうことをする人々こそ現在においてもひどい搾取をしているものだ。活動家たちはなぜ今現在膨大な借金を負わされ、パスポートを取り上げられ、安物の着物を着て日本人を装って中国人顧客を相手に売春をしている韓国人女性たちを救出しないのだろうか。




植村さん、「慰安婦」名誉棄損裁判を続けるのは無意味ですよ!


JAPAN Forward記事リンク
Uemura, It’s Pointless to Pursue Your ‘Comfort Women’ Defamation Case



<日本語訳>

元朝日新聞記者である植村隆氏は、日本外国特派員協会で以下のように述べた:私は、慰安婦記事に関する「論争には勝った」。しかし、私の報道に誤りがあると言って来た者に対して起こした訴訟には負けたのは遺憾だ。

植村氏が挑戦的なコメントを発したのは、金学順氏について彼が書いた朝日新聞の記事に関連して、櫻井よしこ氏から名誉棄損を受けたという彼の訴えを、札幌地裁が2018年11月9日に退けた後のことだ。

金氏は1991年に元慰安婦だと名乗り出た韓国人女性。櫻井氏は日本の著名な保守系ジャーナリストであり、国家基本問題研究所の所長だ。

1991年8月11日に、植村氏は朝日新聞大阪版の記事に、金学順氏に関してこのように書いた:「女子挺身隊」の名目で戦場に連れて行かれ、日本軍兵士に対して強制的に売春させられた「韓国人慰安婦」の一人が、ソウルで存命中だ。

植村氏の記事は、事実に反し、誤解を招き、作り話に等しいと批判した者は多いが、櫻井氏もその一人だ。2015年、植村氏は櫻井氏に対して論争を挑むのではなく、名誉棄損で訴えた。

しかし、法廷で明らかになったのは、植村氏が1991年の記事中で、金氏の言ったことを書かずに、言わなかったことを書いたことだった。

3回の別々の機会に、金氏は自分の体験について話している。

最初は、1991年8月14日、植村氏の記事が出たほんの数日後だ。金氏はソウルで開かれた記者会見に出席した。韓国のハンギョレ新聞の記事によれば、金氏は14歳の時に、母親によって平壌のキーセン(朝鮮半島の伝統的売春宿)のオーナーに売られた。17歳の時に、義父となっていたオーナーが彼女を中国にいた日本軍のところに連れて行き、そこで慰安婦となった。

2度目は、1991年12月に彼女が他の韓国人男女と一緒に日本政府を訴えた時の申し立ての中だ。彼女は以下のように述べた:彼女は金泰元という人物の養女となり、14歳から3年間、キーセン学校に入った。17歳になった時、彼女は養父である金泰元氏から、中国へ行けばお金を稼げると言われ、中国に連れて行かれた。

3度目は、臼杵という名の日本人による金氏へのインタビューの中だ。これは月刊誌「宝石」に寄稿された。金氏はハンギョレ新聞と同じ話を繰り返したが、母親が彼女をキーセンに40円で売ったことを付け加えた。

植村氏が櫻井氏を訴えた裁判の中で、札幌地裁は、金氏の3つの別々な証言には十分な一貫性があり、金氏の経験を正確に述べていると推測できるとした。

3つの証言によれば、金氏の体験は、以下のようにまとめられる。

金氏は満洲の吉林省で1924年に生まれた。彼女の父親は彼女が生まれて100日後に亡くなった。貧困に苦しんだ彼女の母親は、彼女を平壌にあるキーセン宿(朝鮮半島の伝統的な売春宿)に40円で売った。彼女はそこで3年間教育を受け、17歳の時に、彼女を育てたキーセン宿のオーナーに、中国へ行けばお金を稼げると言われ、中国に連れて行かれた。中国で彼女は、そこに駐留していた日本軍の慰安婦になった。

しかし、金氏の証言が彼女の体験の主要な部分構成しているにもかかわらず、植村氏は朝日新聞の記事の中で、金氏の複数の証言について全く書かなかった。

その代わりに、植村氏は、金氏が全く言わなかったことを書いた。上記の3つの証言の中で、金氏は女子挺身隊に入隊させられたとは全く言っていない。女子挺身隊は戦時中の動員法に基づいて組織されたもので、慰安婦とは何の関係もない。

慰安婦の存在は全く秘密ではなかった。それは広く知られていて、映画の中にさえ登場することがあった。日本人に衝撃を与えたのは、植村氏の、金氏が生き証人だとして語ったという、以下のような話だ。「純粋に工場労働者となるべく女子挺身隊に入隊した一人の若い女性が、慰安婦になるよう強制された。」日本の人々は植村氏の朝日新聞の記事に衝撃を受け、金氏に深く同情した。

植村氏は金氏に自分で直接インタビューしたことは一度もないと認めた。彼は、インタビューの録音テープを聞いただけで1991年8月11日の記事を書いた。その録音テープは、彼が言うには、この件に関して運動をしている韓国の活動家グループである挺対協が所有していたものだった。挺対協は金氏にインタビューしたと主張しているが、植村氏は札幌地裁で、そのテープも、当時取ったであろうメモも、既に持っていないと証言した。

植村氏はまた、慰安婦と女子挺身隊は全く別物だということを十分に知っていたと認めた。植村氏はさらに、金氏が女子挺身隊に入れられていないということも知っていたと認めた。

それでもなお、植村氏は金氏が女子挺身隊に入れられた後に強制的に売春をさせられたと書いた。植村氏は、慰安婦と女子挺身隊は当時の韓国では混同されていて同義語であったという、それを唯一の理由としてそのように書いたのだと証言した。

植村氏の主張は、さらに、以下の事実とも矛盾する。すなわち、朝日新聞は、彼の1991年の記事を、慰安婦と女子挺身隊という全く別のものを混同してしまったという理由で取り消した。その記事が出た当時、資料不足だったとも述べた。

最終的に、札幌地裁は、櫻井氏が植村氏の記事を、誤解を招くものであり、また、ねつ造に等しい、と批判することは、全く妥当であると結論づけた。

櫻井氏の批判は、確かに、植村氏のジャーナリストとしての評判を傷つけた。しかし、朝日新聞による大規模で組織的な誤誘導によって、慰安婦問題が国際問題にまで大きくなってゆく背景で、彼女の行為は明らかに公益にかなっている。よって、櫻井氏の批判は名誉棄損にはあたらない。

札幌地裁はまた、植村氏の韓国人義母が、慰安婦問題に関して日本政府に対して訴訟を起こしているグループの役員であったことを認定した。彼女は後に、詐欺行為のために逮捕されている。ジャーナリズム倫理の観点からすると、そもそも、植村氏は彼の義母の活動を支援する記事を書くべきではなかった。

札幌地裁での敗北を不服として、植村氏は既に控訴した。

櫻井氏は植村氏に、ジャーナリストは、意見が異なる場合に、法廷で争うのではなく、論争すべきだという明確なメッセージを送った。

植村氏によれば、彼は慰安婦をめぐる論争に勝ったそうだ。本当に勝ったのだろうか。いや、決して勝ってはいない。彼は事実から逃げ続けている。

Written by 山岡鉄秀
Translated by 清水政明(予備校講師)